フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 第4回|Ford
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 第4回|Ford

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける

首都圏の日帰りロングツーリングはお手のものだが、これまでの最長距離はせいぜい往復300kmといったところ。欧州生まれのOPENERS編集部長期レポート第5号車であるフォード「フォーカス」であれば、インターコンチネンタルよろしく400kmぐらいは余裕で片道程度の距離……なはず。コンパクトカーであっても、快適なロングドライブは成立するのか。フォーカスのステアリングを一路、冬の金沢に向けた。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko

5号車
Ford Focus Sport
フォード フォーカス・スポーツ

導入時期 2013年8月
購入価格 293万円
総走行距離 13,155km
今回の燃費 12.8km/ℓ
総平均燃費 12.3km/ℓ

古都とフォーカス

編集部員Aに、「あれ? 金沢って行ったことあります?」と唐突に尋ねられた。彼の質問は、いつも何の前触れもなくいきなりであり、しかも「あれ?」という台詞からはじまる。

冬の日本海は……、とか、古都の歴史ある街並みに「フォーカス」は……などという枕は一切なし。そしていつも気になるその口癖は、本題にまったく関係ないので説明は省略するが、要約すると「冬の金沢なんてオツですよね。一度フォーカスで本格的なロングドライブをしてみたかったので、古都金沢に行きませんか?」ということらしいのだ。

もちろん断る理由もないし、実は古都金沢でモダンなデザインのフォーカスに乗るというのは、なんだかとてもミスマッチなようにもおもえ、反対にそれがとても絵になりそうで、かなり興味を引かれた。古都とフォーカス。きっと良い化学反応がおきるのではないか。京都ではなく金沢。なかなかのセンスではないか、編集部A。

ということでとんとん拍子にプランはまとまり、金沢での撮影経験も豊富な望月カメラマンとともに、フォーカスは一路金沢の街を目指した。残念ながら、金沢とフォーカスに似合いそうな和風の女性同行者はいないが、ボディサイズから想像するより広い車内ゆえに、高速道路でのドライブは快適。ロードノイズや風切り音も見事にシャットダウンされており、フォーカスの中での会話は編集部Aのリードで弾む。

首都高で都内を抜け、朝のラッシュに巻き込まれることもなく東京外環道に入り、大泉から順調に関越道に。そのまま北上を続け、藤岡ジャンクションから上信越道にアプローチ。妙義山を迂回する山岳セクションで続く勾配のある道を、フォーカスは力強く登っていく。2リッターのNAエンジンは、クルージングよりもわずかに回転を上げながら、十分な加速力を披露。さすがはコンパクトなボディに170psを発揮するエンジンだけあって、余裕がある。

こうした登りの高速コーナーが続くセクションでは、確実に路面をトレースするハンドリングがドライバーに安心感をもたらす。アクセルへの忠実な反応と、リズミカルなステアリングワークが、ドライバーの意のままになる感じとでも言おうか。そこに滑らかな乗り心地がくわわるので、直線だけの退屈な道とはちがい、ドライバーとの一体感をより増してくれるような印象である。

フォーカスには、コーナリング性能を向上させるために、アンダーステアなどでフロント左右輪のどちらかがスリップを始めた時に絶妙な力加減でブレーキをかけ、空転を防止しグリップ力を改善させるトルクベクタリング・コントロールを標準装備しているが、高速走行ではそのお世話にならずとも、路面に吸い付くような安定したコーナリング走行がおこなえる。

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第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける (2)

実用十分なトルクを提供してくれる

都内から引きつづきステアリングを握るのは、最近雪道での運転にも自信を持ちはじめた編集部A。路面をトレースするわずかな揺れと適度なGが心地よく、気づくと座り心地の良いシートにもたれながら、寝てしまいそうになる。言い訳するつもりはないが、片道約500kmの道のりである。朝6時集合・出発は、睡眠不足の体にはちょっときつい。

交通量は少なく、ここまでは流れに乗っていたってスムーズに走れた。登坂車線があるような坂道では、前をゆく大型トラックをパスするシーンが何度もあったが、加速しながら右側に車線を替え、余裕を持って前車を追い越し、そして走行車線に戻るという一連の作業が、編集部Aの運転でも実にスムーズにおこなえた。

見せかけだけパワーがあるクルマにありがちな、必要以上にキックダウンしエンジン回転の上昇とともに不必要なノイズがキャビンを満たす……というようなことが、フォーカスではほとんどない。上手くアクセルをコントロールすれば、自慢のDCTが1段ギアを下げるだけで、実用十分なトルクを提供してくれるからだ。

勾配が予想以上にきつくもっとパワーが欲しい時は、あらかじめSレンジを選択し、シフトノブ横のセレクトスイッチで任意のギアを選べば良い。ほとんどシフトショックがないギアダウンがタイムラグなしで実行され、すぐさま加速態勢が整う。

ふたたびオートマチックモードに戻すためにはDレンジに入れ直す必要はあるが、ワインディングセクションがつづくようであれば、Sレンジをキープしマニュアル操作しながら上るのも楽しい。

小諸、長野、信濃町を過ぎ、フォーカスはいよいよ上越ジャンクションを経由し北陸自動車に入る。途中で休憩を挟み、ここまで約3時間。スムーズすぎるほどスムーズである。上信越道に入ってほどなくすると、右手に海が見えてきた。冬の日本海である。

「あれ、初めて冬の日本海を見ましたよ。波が凄いですね。演歌ですね、男の海ですね」と編集部Aは興奮気味だ。確かに海は豪快に荒れている。それを見てふと悪い予感はよぎるが、感動屋の編集部Aには現場に行ってから話せば良いことなので、しばし放置することにした。

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第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける (3)

スペックには現れないフォーカスの実力

新潟を過ぎ、富山に入ってからも北陸自動車道は、右に日本海を臨むほぼ海岸線を走るルートになっている。横風が強く、真っ直ぐ走るのが大変そうなトラックやミニバンを尻目に、フォーカスは、順調に金沢に向けマイルを重ねることができた。時折海から強く吹く風の影響を受け、さすがにステアリングを取られそうになるが、それ以外の多少の風では、走りに大きな影響を受けずに済んでいる。

「あれ? 結構風が強いのに、意外と高速(で走るの)が楽ですね」とは編集部A。横風の影響を最小限に抑えられる空力デザインとグリップ力の高いサスペンションのおかげで、「フォーカス」は直進安定性がとても高いのである。

ステアリングフィールが必要以上にナーバスにならないということは、ロングドライブで疲労を低減してくれる大切な要素。これもフォーカスの美点である。実際に走ってこそ分かる、スペックには現れないフォーカスの実力を示す一例であろう。

北陸自動車道を金沢森本ICで降り、能登方面にノーズを向ける。目指すのは、石川県羽咋市にある千里浜なぎさドライブウェイ。ここは日本で唯一、クルマで砂浜を走ることのできるルートとして有名だ。全長は約8km、特に日本海に沈む夕日を見ながらのドライブは最高だろう。

「一度潮風を受けながら、砂浜をクルマで走ってみたかったんですよね」とワクワク気分の編集部Aだったが、悪い予感は当たった。強風により波が高く、「本日は通行止め」との表示である。東京から走り続けること4時間以上。その結果が「通行止め」である。つくづく引きが良いぞ、編集部A。

「あれ? えー、マジですか。何で?」ってそりゃ風が強いからに決まっている。しかし、いまの「あれ?」の使い方は正しい。でも、北陸自動車道を強風にあおられながら走っているときに、我々は気づいていたぞ。少しは予想しなかったのか、というツッコミはさておき、せめてもの気持ちということで撮影したのが、この写真である。

ちなみに、編集部Aのような不幸な観光客を増やさないためにご確認頂きたいのが、千里浜なぎさドライブウェイ通行情報を流している「石川みち情報ネット」と「千里浜ライブカメラ」。

特に「千里浜ライブカメラ」の映像は、リアルタイムで千里浜の状況が分かるので、到着前にぜひ一度覗いてみて欲しい。そんないささか残念な展開もあったが、この日は日本海の海の幸に舌鼓を打ち、長旅の疲れもあってそれぞれ早々と就寝することになった。

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第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける (4)

水滴をはじくキャンディレッドのボディ

翌日、気を取り直してドライブをづづけたいところだったが、金沢の街は朝からあいにくの雨。しかしせっかくなので、早朝からひがし茶屋街に出かけ金沢の伝統ある街並みに出かけ散策することにした。

卯辰山のふもとを流れる浅野川の川岸に、金沢百万石の城下町の風情を残す、キムスコ(木虫籠)と呼ばれる美しい出格子が特徴的な旧い街並みが残っている。このエリアだけ、まるで明治時代にでもタイムスリップしたような、昔の面影を感じることができるのだ。

五木寛之の作品、「朱鷺の墓」の舞台としても知られている……とは、市内の観光情報からの受け売りだが、「街並みの文化財」として保存が進められているそうで、平成13年に国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。

そんな歴史ある雨の古都と、モダンなフォーカスのコラボレーションは、ため息が出るようなマッチングだった。キネティックデザインのエモーショナルなフォルムは、都会的な雰囲気が似合うと思っていたのだが、しっとりした美しさの中でも映える。

編集部Aは、その風景に感動したのか、フォーカスのある街並みを、玄人好みと自慢するデジカメに収めることに余念がない。しかし、そうした気持ちが分かるほど、フォーカスはひがし茶屋街の中で絵になっていた。

雨で濡れた古都の風情と、水滴をはじくキャンディレッドのボディが、なんともいえず艶っぽく良い感じだ。この風景とフォーカスを見られただけでも、金沢に来た甲斐はあったと言えそうだ。

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第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける (5)

モダンな建築とも、フォーカスは相性がいい

早朝のひがし茶屋街を後にし、次に向かったのは、そのひがし茶屋街と180度違った近代的な建築で有名な金沢21世紀美術館である。三方が道路に囲まれた円形の建物を持つこの美術館は、かの有名な兼六園の近くにあり、地上2階、地下2階のコンクリート造りで、2004年にオープンした。

2005年のグッドデザイン賞や、2006年の日本建築学会賞作品賞を受賞したほか、設計者である妹島和世と西沢立衛の建築家ユニットSANAAは、この建物で、ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の最高賞である金獅子賞を受賞している。

いうまでもないが、こうしたモダンな建築とも、フォーカスは相性がいい。日本を代表する、世界のいまを伝え、これからの歴史を作っていく美術館に負けず劣らずのデザインである。「せっかくなのでなかを覗いていきましょう」という編集部Aの提案を断る理由はない。

訪れたときには、柿沼康二の書の道「ぱーっ」や「ボーダーライン コレクション展II」などの展示がおこなわれていた。しかし、編集部Aは「いろいろあって楽しいですね」と言うのがどうやら精一杯の様子。一度「とめはねっ!鈴里高校書道部」でも読んで書の勉強した方がいいぞ、編集部A。

金沢城公園、兼六園とまわった金沢からの帰り際、北陸新幹線のテスト走行を偶然目にすることが出来た。鉄道も好きな編集部Aはテンションが上がり「スゴイ、スゴイ! 初めて見ました!」を連呼。「いやーすげー、金沢すげー」と喜ぶ姿もまたロングドライブならではの一期一会と理解することにして、さっきの美術館でもそれぐらい感動して欲しかったという台詞は飲み込むことにした。

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第4回 フォーカスでロングドライブに出掛ける (6)

静粛性が高いフォーカスの車内

遅い昼食の後、北陸道を上り東京へと向かう。ステアリングを握っていたのはほとんど編集部Aだったが、都内に戻るまで疲れたとは、ほとんど口にしなかった。本革とファブリックのコンビネーションデザインのシートは、体が滑りにくくホールド感が抜群にいい。きっちり腰や背中をサポートしてくれる長距離も苦にならない出来の良いシートが、ドライバーをしっかり包み込んでくれたから疲れも少ないのだろう。

さらに言えば、このクラスではこれまでにないほどに、フォーカスの車内における静粛性は高いので、ロングドライブになればなるほど、そうしたファクターが疲労削減に効果をもたらすともいえる。飛行機での移動で疲れる原因のひとつが、常に聞こえてくる耳障りな騒音に起因するものなのは有名だが、機内食を味気ないと思ってしまう原因も、その騒音にあるのだという事実はあまり知られていない。

人間の味覚は、うるさい場所では普段よりもずっと鈍感になるのだという研究結果がある。それほど、騒音は人にストレスを与えるのだ。助手席やリアシートにいても、おなじように肉体的な疲れが少ないと感じられたのは、まさにそこに理由がある。

伝統ある旧い日本の街並みと、あたらしく未来に続く日本を代表する建築物とともに見たフォーカスのデザイン。古都金沢の凜とした静的な美しさのなかにたたずむ、ダイナミックなフォーカスのフォルムは秀逸だった。あたらしい建築物だけでなく、日本の歴史ある風景にフォーカスは見事にマッチしていたのだ。これは、想像以上の発見だった。

帰りの車中で、編集部Aは、何の前触れもなく「あれ? 今回のツーリングで、フォーカスが旧い日本(ひがし茶屋街)にも、あたらしい日本(金沢21世紀美術館)にも合うことが分かったので、今度はE7系(北陸新幹線)との2ショットを撮りに行きましょう。E7系、超カッコ良くなかったですか?」と言い出した。

「あれ? もう1回(E7系を)見に戻ってもイイぐらいですよね? 全然疲れていないんで」と、帰路の車中も無駄にテンションの高い編集部A。往復、実に約800kmだぞ。いい加減少しは疲れてくれよ編集部A。

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Ford Focus Sport|フォード・フォーカス・スポーツ
ボディサイズ|全長4,370×全幅1,810×全高1,480 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,545 mm
最低地上高|130 mm
重量|1,380 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 直噴DOHC
ボア×ストローク|87.5×83.1 mm
最高出力| 125kW(170ps)/ 6,600 rpm
最大トルク|202Nm(20.6kgm)/ 4,450 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(デュアルクラッチ)
ギア比|1速 3.917
    2速 2.429
    3速 1.436
    4速 1.021
    5速 0.867
    6速 0.702
減速比|3.850(1,2,5,6速)/4.278(3,4速,後退)
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|215/50R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃料タンク容量|55 ℓ
最小回転半径|6 m
価格|293万円

フォードお客様相談室
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