CIVILIZED|ブランドの真髄をみる、ふたつのハイスペックアウター登場
CIVILIZED|シヴィライズド
2011-12秋冬コレクション“MOBILITY”
ブランドの真髄をみる、ふたつの新作アウター(1)
余分なものをそぎ落としたシャープで都会的なデザインはそのままに、スポーツウェアやワークウェアにも劣らぬ機能性を備えた斬新なコレクションを提案するメンズウェアブランド「CIVILIZED(シヴィライズド)」。あくまで洗練されたスタイルは崩さず、使いやすさや着心地のよさを追求したデザインは、見た目にはまったくわからないようほどこされているため、 その真価を知るとき、誰もが驚くことだろう。そんなブランドの真髄を見る、新作アウターがショッピングサイト「rumors(ルモアズ)」に到着。デザイナー 奥川諭志氏に、その魅力について聞いた。
Text by OPENERSPhoto by TAKADA Midzuho
ブランドを象徴するジャケットARTICULATE HOOD JACKET
──シルエットがしっかりとキープされていますが、生地の素材は?
たしかにシルエットは美しく保たれますが、生地自体はとにかく固くて伸びません。しかし手に持ってもらうと、見た目には意外なほど軽い。これはバッグやシューズの素材に使われることの多いコーデュラナイロンという素材で、ナイロンの7倍強度があると言われています。かなり密に織られているため、撥水性と耐久性、摩擦に対する強度が高く、頑丈。高度な機能が必要とされる過酷な状況下にも採用される高機能素材です。中には綿を薄く入れてあるだけなのですが、生地自体が密に織られているため風をとおさず、熱も逃げにくいので、真冬のアウターとして着ていただけます。
──デザインディテールのこだわりとは?
取りはずしのできるフードは、はずしたさいにスタンドカラーのジャケットとして完成するよう、スナップボタンが隠れるようになっています。スナップボタンが見えていても機能として問題はありませんが、シャープなデザインが損なわれてしまうので、しっかり隠すようにしています。スタンドカラーとフーディッド、しっかりと使い分けができるので、ふたつのジャケットを同時に手に入れたようでうれしいですよね。
スタンドカラーとフーディッドに使い分けができるダウンジャケットって、通常フードの端にフラップがついていて、あごの下で留められるようになっていますよね。しかし前を開けて着る場合はフードのフラップを留められません。そうするとフラップ部分がだらっと開いてしまい、バックパックやメッセンジャーバッグを背負うさいにベルトがひっかかったり、見た目にもだらしないですよね。ARTICULATE HOOD JACKETでは、左右のフラップ同士を留めるのでなく、スタンドカラーの内側にスナップボタンをほどこしてあります。
そうすることでフラップが開いてしまうこともありませんし、フードとボディが一体感を増し、よりシャープなシルエットが生まれます。
見た目の“シャープさ”については、ポケットも生地の上に貼りつけるのではなく、生地をくり抜いてつけています。ポケットはハンドウォーマーとしてのポケットのなかに、モノを入れるためのファスナー付きのポケットがほどこされており、全部で4つになっているんです。見た目はよりシャープに、反対に容量は増やしています。
独自のパターンで腕を上げるさいのストレスを軽減
──今季のテーマ“MOBILITY=可動性”はどういった部分に反映されていますか?
とにかく固い生地で伸びないうえに、細身なシルエットになっていますから、普通に作ったのでは動きがかなり制限されてしまいます。ですから通常こうした固い生地を使ったアウターでは、腕が上がるようにするために、身幅を広げることが多いです。腕を上げるさいにストレスを感じるのは、二の腕部分が引っ張られてスムーズに上がらないから。だから身幅に余裕を作り、腕の動きに合わせて服全体を斜めに上げるんです。当然シャープなシルエットは損なわれますよね。こうしたストレスを軽減すべく、脇の下の縫製を工夫しました。
作りについては普通のTシャツなどと見比べていただくとわかりやすいのですが、わきの下のパターンがアーチ型になっています。動きの起点をアーチのトップまで広げたことで、マチの機能を果たしてくれるのです。これにより腕が肩から上がるので、二の腕にストレスを感じさせません。また、ヒジにもマチを作ることで曲げ伸ばしにかかるストレスを解消しています。ポケット同様、生地のうえに貼りつけるのではなく、ヒジの部分をくり抜いて下から生地をあてていますので、マチが悪目立ちすることなく、一体化してスッキリして見えます。
──完成までに苦労された点は?
まず腕のパーツを取りつけるさいのアーチの角度ですね。パターンをひき、「トワル」と呼ばれる白い布でできたサンプルを作り、実際に自分で着てみて、またパターンをひく。それを何度も地道に繰り返し、最適な角度を追求しました。
また、生地が固いうえに、ポケットやヒジをくり抜いたり、わきの部分はかなり特殊な縫製をお願いしたりと、工場の方々にはかなり苦労をかけました(笑)。ミシンの針も何本もだめにしてしまったそうで……。どこの工場に持っていっても「オートクチュール」と言われるんです。最初は大変だから大げさに言っているんだろうと思っていたのですが、あまりに特殊な縫製になるため、腕は腕、胴体は胴体だけ作って、最後にくっつける、という通常の方法ではできないんだそうです。ひとりで1から10まで手がけなくてはならないんですね。そんな工場の方々の苦労もあって、ディテールのひとつひとつに意味と価値をもった一枚を作り上げることができました。
CIVILIZED|シヴィライズド
2011-12秋冬コレクション“MOBILITY”
ブランドの真髄をみる、ふたつの新作アウター(2)
シヴィライズドが提案するジャケットスタイルCLEARED JACKET
──カジュアルなアイテムが多いイメージでしたが、ジャケットとは新鮮ですね。
メンズファッションにとって、ジャケットスタイルは絶対に必要だと思うんです。特別な存在といいますか、単純に見た目にかっこいいですし、着ると背筋が伸びる想いがしますよね。しかしいまジャケット離れが起きていて、着用時のストレスや、素材についても気を使わなくてすむナイロンのブルゾンなどが選ばれている。そこでシヴィライズドが提案するジャケットスタイルについて考えました。
──素材は?
通常ウールなどで作られることの多いアイテムですが、CLEARED JACKETでは「スリーレイヤー」という、水をはじき、内部に滞留した湿気を外部に放出する透湿防水加工をした高機能ナイロンを使用しています。一般的にはマウンテンパーカーに用いられたりする素材です。摩擦や水分に対する耐久性について気にかける必要がないので、ブルゾンのようにラフに着てもらえます。突然雨が降ってきたとき、素材がウールかスリーレイヤーかでは気分もちがいますよね。
──シヴィライズドらしいディテールとは?
袖口の本切羽やセンターベンツなどの仕様は従来のテーラードジャケットどおりに仕立てています。フーディット、スタンドカラー、テーラードとして着られる3ウェイ仕様となっており、ARTICULATE HOOD JACKET同様、フードは取り外し可能で、スナップボタンはすべて隠れるようになっています。フードを外せばスタンドカラーのジャケットに。フロントジップを開けて内側からラペルを出せばテーラードジャケットになります。最近ですと、身幅も細く、肩もシャープなシルエットのものが主流だと思いますが、構造的に、肩のラインをシャープにしようとすればするほど腕は上がらなくなります。
そこでシャープなラインは残しつつ、着用時のストレスを解消するために、ここでもARTICULATE HOOD JACKET同様に脇の下にマチを設けています。
素材や着心地のほかに、ジャケットの容量の少なさもウィークポイントのひとつだと思うんです。胸のポケットはモノを入れるというより、チーフをさしたり、アクセサリー感覚に近い。また内ポケットやフロントのフラップポケットも、モノを入れると膨らんでシルエットが崩れてしまいます。
テーラードジャケットのウィークポイント、要領の少なさを解消
シルエットは崩さず、容量だけを増やすにはどうするか。そこで前身頃にファスナーをほどこし、開けると大きなポケットになるようにしました。ウェストシェイプの一番ゆとりが生まれる部分なので、モノを入れてもシルエットには響きません。また、中に小さなパッチポケットがついているので、携帯など頻繁に出し入れするものはここに入れると大きなポケットのなかを探らずにすみます。この小さなパッチポケットはスムーズにモノの出し入れができるよう、ひじを曲げたときに手がちょうどパッチポケットに入るよう、設置位置と角度にこだわりました。
また、ジャケットって肌寒いころに上着として着ると思うんです。でもフロントのフラップポケットは上から垂直に手を入れるしかなく、ハンドウォーマーとして使うには手が不自然な格好になってしまいます。そこでフラップポケット上のカット部分にもうひとつ、ブルゾンのように横から手を入れられるハンドウォーマーとしてのポケットをつけました。このカットは従来のテーラードジャケットのデザインとしてあるものですし、ファスナーは締めればつまみ部分がフラップに隠れますので見た目に違和感はありません。
──着心地や素材だけでなく、機能面もかなり重視されたアイテムですね。
高機能素材の使用や、身体の動きを制限しない作りにこだわっていますが、決してスポーツウェアやアウトドアウェアを作っているわけではありません。僕らが提案しているのはあくまでファッションとしての洋服です。そもそもスポーツウェアやアウトドアウェアのような機能的な要素、便利さって、普段着にこそあっていいと思うんです。理由は単純で、普段着を着ている時間が一番長いからです。見た目はあくまでファッションアイテム、それさえキープすれば、使わない機能は使わなければいいだけであって、便利な機能はあって困ることはないと思うんです。
今日は雨が降りそうだけど、ひとに会う用があるからジャケットを着ていきたい……とか、移動は自転車だけどひとにあうときはジャケットを着ていたい……というときなど、僕ならこのジャケットを選びます。そのひとの生活スタイルって、絶対に洋服にあらわれると思うんです。だからデザインやスタイル、素材や着心地など、あらゆるニーズをカバーできる一枚があれば便利ですよね。使い勝手はブルゾンのテーラードジャケット、そんなジャケットスタイルをシヴィライズドでは提案します。
──ありがとうございました。