Peugeot|プジョー RCZ 試乗インプレッション
CAR / IMPRESSION
2015年2月24日

Peugeot|プジョー RCZ 試乗インプレッション

Peugeot|プジョー RCZ

快適性、スポーティさ。それぞれの顔をもつ2つのプジョーRCZ(1)

プジョー初のコンパクトスポーツクーペを名乗る「RCZ」が、プジョー シトロエン ジャポンの手により、日本市場に導入された。スタイリッシュな2ドアクーペで、実際に運転してみても、決して見かけ倒しではない楽しみをもったモデルである。

文=小川フミオ写真=荒川正幸

はじめてアルファベットの車名を用いたプジョー

プジョー RCZは308のシャシーを一部共有して開発されたモデル。2612mmのホイールベースは2mmだけこちらが長く、4287mmの全長は3mmだけ短い。つまりほぼ同寸。ただし全高は308ハッチバックの1515mmから1359mmへとだいぶ低められている。同種のスタイリングコンセプトをもったアウディTTと比較すると、プジョーRCZのほうが31mmも低い。既発のカブリオレ、308CCと比較しても着座位置は45mm低くなる。

日本において販売されているRCZは2つのグレードをもつ。そして各々のもつキャラクターがあきらかにちがっているのだ。一方では快適性、一方ではスポーティさが重視され、前者は156ps、1.6リッターターボエンジンに6段ATを組み合わせ、価格は399万円(右ハンドル)。後者も同様に1.6リッターターボチャージャーながら、今回308シリーズ初の搭載となるバルブトロニック機構の装備により200psを発生させることができる。そのエンジンに6段MTを組みあわせ、価格423万円で用意されている(左ハンドル)。

「プジョーはあたらしいロゴを採用するなど、つぎなる時代にむけて舵を取りはじめている。そのなかで今もっとも力を入れているといえる、308に代表される欧州でいうところのM1セグメントの強化策の一つとして、今回のRCZが市場投入された。伝統的に数字を車名につかってきたプジョーとしてはじめてアルファベットを使用した点に注目してほしい。オーストリアのマグナ社で生産されるRCZは強烈なパーソナリティを売りものに、日本では年間600台程度販売していきたい」とプジョー広報担当者は語った。

2つのコブによって特異性の増したデザイン

RCZの特徴を、まずスタイリングの面から書くと、以下の2点が挙げられる。

・ダブルバブルルーフ
・アルミナムアーチ

ダブルバブルルーフとはルーフに2つのコブのようなものをもたせたデザインのこと。かつて60年代のアバルトのようなちいさなスポーツカーが採用していた手法で、レース中の乗員がかぶるヘルメットの高さ分空間を確保するという設計方法だ。そういった過去の手法が用いられたRCZがモダンである要因は、リアウィンドウにまで大胆に曲率をもたせるという、凝ったデザインをほどこしている点にある。

さらに、AピラーからCピラーにつながる線をひとつのカーブのようにデザインし、そこにアルミニウムのカバーをかけたスタイリングの手法も、RCZの特質を彩るのために一役買っている。

メカニズム上では、車速におうじてリアスポイラーの角度がかわる「アクティブリアスポイラー」は2モデルとも標準装備。85km/hでは19度に、155km/hを超えると34度となる。それによってダウンフォースを生みだし走行安定性が確保できるようになっている。

Peugeot|プジョー RCZ

快適性、スポーティさ。それぞれの顔をもつ2つのプジョーRCZ(2)

クルマに乗るよろこびを感じられるMTモデル

運転した印象では、200psのマニュアル車が素晴らしかった。バブルトロニックをそろえたエンジンはあっというまにレブリミットまで吹きあがるし、そもそも1700rpmで最大トルクが出る設定なので安逸に走らせるのも可という、うれしい二面性をもっている。2500rpmを超えるあたりから、もりもりと力がでてきて、それが途切れることなくつづくという、スポーティな感覚は、クルマに乗るよろこびを強く感じさせてくれる。

200psのRCZのよさは、エンジンにとどまらない。ハンドリングとサスペンションの連携もたいへんよい。足まわりがガチガチなレーシングカー的なものでなく、しなやかで、かつ路面をしっかりとらえる。ステアリングも神経質でなく、さまざまな運転スタイルを許容する。各ギア間のストロークは短く、かつ確実。気持ちよく変速ができる。クルマの運転が好きなひとなら、老若男女とわず楽しい体験が約束されているモデルだ。

最近のルーテシアRSやトゥインゴRSといったルノースポールの各モデルとどこかつうじる、フランスうまれのスポーツカーとしての突き抜けた楽しさがある。またその一方で快適性とのバランスはアウディTTにも匹敵していると感じられた。1.8リッターエンジンに前輪駆動システムを組みあわせたアウディTTクーペが440万円なので、この点ではいいライバル関係になりそうだ。

いっぽう、308ハッチバックやSWなどと共通する156psのエンジンを搭載した、ATモデルはというと、こちらはふだん街乗りが多くて、スタイリッシュなクルマがほしいというひとにはいいかもしれない。ダブルバブルルーフといい、大きく張りだしたフェンダーといい、迫力もあれば、それなりにお金もかかっているデザインは魅力だ。高速でもよく走るし、快適性は高い。

オプションでは観た目がカッコいい19インチホイールも用意されているが、快適性を重視するならスタンダードの18インチをオススメする。

Peugeot|プジョー RCZ
ボディ|全長4,287×全幅1,845×全高1,359mm
エンジン|1.6リッター直列4気筒DOHC+ターボチャージャー
最高出力|147kW[200ps]/5,800rpm
最大トルク|275Nm/1,700rpm
駆動方式|前輪駆動
トランスミッション|6段MT
価格:|423万円

           
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