ART|金沢21世紀美術館で映像作家フィオナ・タンの作品を展示
ART│ 不連続な時間軸上を横断し生み出される詩的で静謐な時間
映像作家フィオナ・タン『エリプシス』が金沢21世紀美術館で開催
インドネシア出身で、現在アムステルダムを拠点に活躍している映像作家フィオナ・タンによる現代アート展『フィオナタン│エリプシス』が、11月10日(日)まで金沢21世紀美術館で開かれている。
Text by YANAKA Tomomi
初期から近作までの映像やインスタレーション作品など
フィオナ・タンは1966年インドネシアのスマトラ島生まれ。中国系の父とオーストラリア人の母をもち、少女時代をオーストラリアで過ごした後にヨーロッパに移り住んだという経歴をもつ。このように多様な文化圏を往来しながら、その複雑さや多層性を消化しながら、作品を生み出してきた。
そして、1997年にはインドネシアでの反中国人暴動によって離散した自身の家族を追うドキュメンタリー・フィルム、『May You Live in Interesting Times(興味深い時代を生きますように)』を発表。彼女の文化的多様性を象徴する作品となった。写真やビデオに写ったゆるぎないイメージに、事実とフィクションの間を行き来する物語。見る者にさまざまな憶測を要求してくる作品をつぎつぎと発表した。彼女の作品はロンドンのテート・モダンなどにも収蔵されている。
本展では、生後5カ月の女の子や12歳の男の子、40歳の男性から77歳の女性ら、7人のひとびとの肖像を写した、全7時間にわたる長大なインスタレーション作品『Seven(セブン)』や、ナイアガラの滝から水が流れるさまとともに、年齢の異なるふたりの女性の生活の断片を2面のスクリーンから流し、時間や人生の記憶を思い起こさせるインスタレーション『Rise and Fall(ライズ・アンド・フォール)』などを紹介。
このほかにもノルウェー、シドニー、東京、スイス、ロンドンという異なる5つの国でアマチュアにより撮影された家族写真を集めた『Vox Populi(人々の声)』など、初期の代表作から近作まで映像、写真、インスタレーション作品を展示する。
不連続な時間軸上を横断し、フィオナが生み出す詩的で静謐な空間。作品との問答を楽しみながらじっくりと堪能してみたい。
『フィオナ・タン│エリプシス』
会期│8月3日(土)~11月10日(日)
※月曜休み(祝日の場合は、翌平日休)
時間│10:00~18:00(金、土曜日は20:00まで)
会場│金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1-2-1
Tel.076-220-2800
料金│本展『イザベル&アルフレド・アキリザン展』との共通券
一般1000円、大学生・65歳以上800円、小中高生400円