MOVIE|短い人生を駆け抜けた身長1メートルの天才ジャズピアニスト
MOVIE|短い人生を駆け抜けた身長1メートルの天才ジャズピアニスト
ミシェル・ペトルチアーニの人生に迫るドキュメンタリー『情熱のピアニズム』
フランスを代表する天才ジャズピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ。生まれながらの障害のため、1メートルの身長しかなった彼の激動の人生と至福の音楽にスポットを当てたドキュメンタリー映画『情熱のピアニズム』が10月13日(土)、渋谷のシアター・イメージフォーラムほかでロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
良質なドキュメンタリーの数々を世に放ってきたマイケル・ラフォード監督
先天性の骨形成不全症を抱えながらも人生を謳歌することに貪欲だったミシェル・ペトルチアーニが誕生して今年で50年。彼の音楽と人生に迫る『情熱のピアニズム』が公開される。酒を愛し、旅を愛し、そして女性たちから愛されたペトルチアーニ。「寿命は20歳程度まで」といわれる病気を抱えた身長1メートルの彼に、天から与えられた二つのすばらしい贈り物。それは、桁外れの音楽的才能と、誰にでも愛されるカリスマ的人格だった。
作中では、幼少のころから亡くなる直前までのミシェル・ペトルチアーニの演奏風景や日常を撮りためた貴重な映像はもちろん、彼を知るそうそうたるミュージシャンやプロデューサー、愛を交わした女性たちが多数登場し、驚きのエピソードなどが披露される。この稀有なドキュメンタリーを手掛けたのは『イル・ポスティーノ』で世界各国の映画賞を席巻したマイケル・ラフォード監督。数々の良質なドキュメンタリーをつくりあげた手腕で、短い人生を駆け抜けた天才ピアニストに独自のアプローチで迫る。
“ピアノの化身”に神が与えたもの、与えなかったもの
1962年、フランスの音楽一家に生まれたミシェル・ペトルチアーニ。1日中レコードをむさぼり聴いて育ち、4歳のときにテレビで見たデューク・エリントンに憧れ、ピアニストになることを決意する。その後、即興演奏の技を身につけ、8歳で初舞台を踏み、13歳でプロデビューし、18歳で渡米。ヨーロッパ出身者としてはじめて名門ブルーノート・レコード契約を交わすなど、世界が注目するアーティストへと成長していく。
世界的名声を得た天才の素顔は、豪快で自信にあふれ、享楽的でユーモラスな愛すべき人物であるが、彼には常に女性問題が付きまとう。孤独でいられないうえに、いつも変化を求め、女性を裏切る行為を繰り返し、何度も結婚と離婚を重ねたのである。そして、公演が年間200本を越すようになった1998年暮れ、生命の炎を極限まで燃え立たせた彼はツアー先で肺炎にかかり、年が明けると36歳という若さで急逝。しかし、その音楽、存在は多くの人たちの中に今なお生きつづけている。
繊細で深く、人生が持つ喜びとユーモアにあふれた音を奏でた“ピアノの化身”。彼に神が与えたものと与えなかったものは何だったのか。音楽と女たちに愛された天才ジャズピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの短くも劇的な人生とその音を、劇場で感じてほしい。