GIORGIO ARMANI|建築家 石上純也が語る、ジョルジオ アルマーニのミニマルな美学と現代性
GIORGIO ARMANI|ジョルジオ アルマーニ
建築家 石上純也が語る、
ジョルジオ アルマーニのミニマルな美学と現代性(1)
「日本を代表する若き建築家」というと、まず筆頭に挙がってくるうちのひとりが石上純也さんだろう。その石上さんが、自身の作り出す建築について、またジョルジオ アルマーニの生み出す世界観について、ここで語ってくれた。
Photographs by TSUNODA MidoriStyling by IKEDA NaokiEdit by NAKAMURA Akiko (OPENERS)
自身と、アルマーニのクリエイションとについて
思想とリアリティが融合することによって、バランスは強度を増す――既存の固定観念を打ち壊すような視点をもち、空間を定義し直し、建築のあたらしい捉え方を提案する。建築と哲学と自然とアートを自由に行き来するような、ワークスの数々。いま日本を代表する若手建築家、というと必ず名前が挙がるのが石上純也さんだろう。
2000年に妹島和世建築設計事務所勤務からそのキャリアをスタートさせ、04年には自身の事務所である石上純也建築設計事務所を設立。代表作には「テーブル」「四角いふうせん」「神奈川工科大学KAIT工房」などがあり、いずれもプロダクトと建築と空間とひととが、自然体でいながらにして共鳴しあうような、シンプルかつユニークなものである。
石上さんはいま現在も、パリの集合住宅プロジェクト、オランダのビジターセンター、ロシアの科学技術博物館の建築を手掛けていたりと、ワールドワイドに目覚ましく活躍中だ。
今回はそんな石上さんが、ジョルジオ アルマーニを着こなしてくれた。そして“建築”や“プロダクト”のつながりもあることから、アルマーニ / 銀座タワーにあるアルマーニ / カーザフロアにて、撮影・インタビュー。自身の作品のことやジョルジオ アルマーニの世界観について語ってくれた。
「いま、ぼくはイタリアの家具メーカーと一緒に仕事をしているのですが、向こうのひとたちってみんな家族ぐるみですよね。ファミリービジネスも多い。そういうことと関係しているのかもしれませんが、イタリアンデザインはとてもおおらかであたたかいイメージがあります。どんなに尖ったひとでも、どこかしらにキュートな印象を感じる方が多い」
デザイナーであるジョルジオ・アルマーニが、親から大きな影響を受けていて、それがデザインに活かされていること、親戚一同がビジネスにかかわっていることなどにも触れながら、そう語る。
“いかに心地よく過ごすか、そのひと自身をいかに美しく見せられるか”という信念をもとに、アパレルからインテリア、食、旅、ビューティに至るまで、ライフスタイルにおけるさまざまな分野で、生活全般をデザインするジョルジオ アルマーニ。石上さんの自身のクリエイションとはシンクロするのだろうか。
「僕自身は、ファッションとライフスタイルに、じつは特別な関係を意識してはいないのです。というのは、そもそも、日常的に生活していれば、服は着るし食べ物も口にするし、ソファにもたれたりもします。人間として、当然です。そういうなかで、それらの関係性を意識的に考えるということは、したくないのです。それよりは、なすがままというか、なるべく自然な状態で、僕が手をくわえたものとそうではないものと、境界線がないくらいがいいと思っています。無意識のなかで感じる心地よさにも通ずる“自然さ”のほうが重要ですね」
GIORGIO ARMANI|ジョルジオ アルマーニ
建築家 石上純也が語る、
ジョルジオ アルマーニのミニマルな美学と現代性(2)
今回はじめて、アルマーニ / 銀座タワーのカーザフロアを訪れたという石上さん。その印象を聞いてみた。
「とにかくスタイリッシュ。家具というものは、建築家が作るときもあるし、家具職人が作るときもあるし、ファッションデザイナーが作るときもある。あるいは、趣味の日曜大工で作るひともいる。実際にできたものを見てみると、やはり作ったそのひとのバックグラウンドが、プロダクトにはちゃんと表れているのですよね。僕は建築とおなじように家具を考えてしまいます。ジョルジオ アルマーニも、きっと、家具やインテリアを考えることと、服のことを考えることでは、違いはないんじゃないですかね」という。
無駄なものを省きながらも、上質な素材づかいと質感、スタイリッシュなデザイン性とで、ラグジュアリーな空間を実現しているアルマーニ カーザ。例えばそこにある“家具がレフ板のような役割を果たして、そこにいるひとを美しく見せる”といった工夫は、確かにファッションデザイナーの感性ならではであり、“レザーを使わず最上級のファブリックづかいで、実際肌に触れたときの質感を大事にする”ということが実現できるのは、モードの世界にいるブランドだからこそできるのかもしれない。
「建築家の仕事というものは、建物にしても展覧会にしても、まず条件があってはじまります。あるひとは“この敷地にビルを建ててください”というし、またあるひとは“このハコで何か展示してください”という。依頼者が何を望んでいるかがはっきり見えるのです。ですからその条件のなかで最大限のアプローチをするし、またその条件があってはじめてアイデアが出たりもするのですよね。さらに、ひとつのプロジェクトを完成させるのに何年もかかかることを考えると、中途半端なものは手がけたくない(笑)」。その仕事への熱意は、ジョルジオ アルマーニ氏と共通する部分だろう。
最後に、“もしアルマーニとコラボレーションするとしたら、どんなことをやりたい?”と聞いてみた。
「なんだろう。きっと彼は何でもできるひとだから、コラボレーションするとしたら、楽しいことの方がいいかな。難しいけれど、食べ物とか。レストランのメニューでもいいけれど、いちばんやりたいのはお菓子。お菓子って箱もかわいいし、お皿にこだわるのもおもしろそう。きれいなのだけれど、みんなで楽しめて、一瞬で消えていくようなものがいいかもしれません」
石上純也|ISHIGAMI Junya
1974年 神奈川県生まれ。2000年に東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻 修士課程修了後、00~04年まで妹島和世建築設計事務所に勤務。04年石上純也建築設計事務所設立。09~11年 東京理科大学 非常勤講師、10年より東北大学大学院 特任准教授を務める。主な作品に、「テーブル」(05年「キリンアートプロジェクト2005」キリン賞受賞)、「四角いふうせん」(07年)、「神奈川工科大学KAIT工房」(09年「2009年 日本建築学会賞」受賞)がある。10年には「第12回 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」にて金獅子賞受賞、12年「文化庁長官表彰 国際芸術部門」受賞。http://jnyi.jp