スマート forfour ターボに試乗|smart
CAR / IMPRESSION
2016年10月25日

スマート forfour ターボに試乗|smart

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

1台でなんでもできるオールマイティさが身上

2015年10月に日本でも発売された第3世代のスマート「forfour」に、今年8月、3気筒ターボを搭載したグレードが追加された。加給によって最高出力、最大トルクともに向上したターボモデルは、どのような違いをもたらすのか。小川フミオ氏がリポート。

Text by OGAWA FumioPhotographs by KAWANO Atsuki

RRのネガを感じさせない操縦性

スマートが手がけるコンパクトなボディの4ドアハッチバック「forfour」にパワフルな「スマートforfour(フォーフォー)ターボ」が追加され、2016年8月3日に発売された。「スポーティさを高めるとともに、高速道路での走行もさらに快適に」なったと輸入元のメルセデス・ベンツ日本では謳う。

スマート forfourターボ(256万円)は、同時発売された2人乗りのよりコンパクトな「fortwo(フォーツー)」同様、エンジンを後車軸の後ろに搭載して後輪を駆動する。ポルシェ「911」でおなじみとはいえ、現代ではめずらしいメカニカルレイアウトを採用する。

リアエンジンを選んだ理由として、小回りのよさがあげられている。エンジンに邪魔されないため、舵角が大きくとれるのだ。実際forfourの最小回転半径は「4ドアハッチバック トップクラス」(輸入元)の4.1メートルとだいぶ小さい(ポルシェ911は大きいがそれはスポーツドライビングに十分な接地性を確保するため)。

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

ホイールベースは2,495mmとかなり長め

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

全幅1,665mmと意外に余裕がある

1960年代までリアエンジンは、フィアット「600」や「ヌオーバ500」といったイタリア車、ルノー「8」をはじめアルピーヌ「A110」や「A310」といったフランス車など、日本でもそれなりに知られているクルマで採用されているレイアウトだ。しかし性能向上にともない高速での接地性の確保などの問題ですたれていった経緯がある。初代スマートでも高速だとフロントが浮きぎみになったものだ。

それはすべて過去の話になったといえるのが、いまのスマートである。

スマートforfourターボに乗ると、どこにエンジンがあってどの車輪が駆動されているか、すぐにはわからないだろう。それほど感覚はナチュラルだ。エンジン単体の軽量化をはじめ、サスペンション性能と電子制御技術の発達が効を奏している。フロントの接地感は確保され、カーブでの操縦安定性もかなり高いレベルにある。

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

1台でなんでもできるオールマイティさが身上 (2)

印象的な力強い加速感

スマートforfourターボが後車軸の後ろに搭載するエンジンは897ccの3気筒。ターボ化により最高出力66kW(90ps)、最大トルク135Nmを発生する。先に発売されたforfour(自然吸気エンジン)に対して、最高出力で14kW(19ps)、最大トルクで44Nmアップしている。

乗ると期待以上の速さだった。足まわりはしっかりしているし、6段ツインクラッチ式変速機との相性もいい。アクセルペダルを軽く踏み込んだだけでぐいぐいという感じで加速する力強さが印象的である。最大トルクが2,500rpmで発生するうえ、ターボの設定もうまく、不自然さのない気持ちよいダッシュ力なのだ。

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

897ccの3気筒ターボエンジンをリアに搭載して後輪を駆動する

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

ターボはリム径16インチのホイール装着

ターボ搭載による影響は、ほかの面でも感じられる。おそらくパワーが上がったことで足まわりは少々硬くなったようだ。とくにリアサスペンションにそれが顕著だ。路面の段差によってはやや大きなショックが伝わってくることもある。コンパクトなボディであると同時に、エンジンとの関係でレイアウトが制約を受けているのだろうか。サスペンションアームの長さなど設計に多少の影響があるように感じられた。

fortwoターボとも共通した感覚だけれど、もし、よりしっとりした乗り心地が好みなら自然吸気エンジンのforfourも同時に試してみるといいと僕は思う。ターボ版は先に触れたとおりで、パワーアップの代償といっていいのか、操縦性の面からとくにリアサスペンションは硬めの設定である。

ステアリングホイールの軽さはフロントにエンジンを持たないスマートの特徴なのだけれど、これにより逆に加速のいいターボでは高い速度でコーナーに入る時、最初はやや頼りない感じがするのも事実だ。といっても感覚的な慣れの問題だろう。オーナーになれば特有のキャラクターとうまくやっていくコツをすぐつかめるはずだ。

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1台でなんでもできるオールマイティさが身上 (3)

ルノー・トゥインゴとの違いとは

スマートforfourターボは1台でなんでもできるオールマイティさが身上だろう。全長3.5メートルとコンパクトなボディだが、ドアを4枚備えていて、後席もそれなりの空間が確保されているため大人4人が乗れる。荷室容量も185リッターが確保されている。機能主義と快適性とそれにけっこうキュートな内外装という魅力を特徴としていた。forfourに加えてパワー。forfourターボにはわかりやすい特徴がたくさんある。

高速でも意外なほど静かで、シートの座り心地もいいし、片道200kmぐらいの遠出ならなんなくこなせるはずだ。床が高くて、なんだかジャガー「XJ」のように足を前のほうに投げ出すスポーティなドライビングポジションがおもしろい。といっても着座位置は比較的高く、わりと遠くのほうまで見通しがきく様子は安心感につながる。

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

ターボはパノラミックルーフ標準装備

smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ

荷室容量は135リッターで後席を倒すと975リッターにまで拡大する

基本的に同じシャシーに同じターボエンジンを搭載するルノー「トゥインゴ」はどちらかというと快適性志向だが、forfourターボは自然吸気エンジンモデルとの差異化もあるのだろう、硬めの足回りなどスポーツ性をより強調している感が強い。ボディの塗り分けもブラックとレッドなど、やはりスポーティな印象だ。

安全性については開発を担当したメルセデス・ベンツのお墨付きだ。トリディオンボディセルと呼ばれる高強度スチール製“骨格”は衝突安全性の高さを謳う。コンパクトなボディだが燃料タンクは後車軸の前に配置するなど後方からの追突の際のより高い安全性確保などにも気が配られている。コンパティビリティ(この場合は衝突適合性と訳す)といってサイズが大きかったり重量の重い車両と衝突した場合も安全性確保を追求した結果だという。

レーダーセンサーで先行車との車間距離をモニターし衝突の危険性を警告音で伝える衝突警告音機能や、突然の横風を受けてもブレーキ制御で直進をサポートするクロスウィンドアシストなど日常生活でありがたい装備がそなわっている。

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Smart forfour turbo|スマート フォーフォー ターボ
ボディサイズ|全長 3,550 × 全幅 1,665 × 全高 1,545 mm
ホイールベース|2,495 mm
トレッド前/後|1,445 / 1,435 mm
最小回転半径|4.1 メートル
エンジン|897 cc DOHC直列3気筒ターボ
最高出力|66 kW(90 ps)/5,000 rpm
最大トルク|135 Nm(13.8 kgm)/2,500 rpm
トランスミッション|6段DCT
駆動方式|RR
ブレーキ前|ディスク
ブレーキ後|ドラム
タイヤ前/後|185/50R16 / 205/45R16
JC08モード燃費|23.1 km/ℓ
乗車定員|4名
ステアリング|右
価格|256万円

問い合わせ先

smart

0120-610-910(メルセデスコール)

http://www.smart-j.com/

           
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