ランボルギーニ アヴェンタドールに試乗|Lamborghini
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2015年7月10日

ランボルギーニ アヴェンタドールに試乗|Lamborghini

Lamborghini Aventador LP700-4|

ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4

ランボルギーニの最新フラッグシップに試乗

ランボルギーニの最新フラッグシップモデルとして昨年3月のジュネーブモーターショーでデビューし、昨年末、日本上陸を果たしたアヴェンタドール。21世紀の“キング・オブ・スーパーカー”ともいえる同車の真価を探るべく、モータージャーナリスト、西川 淳氏が試乗した。

Text by NISHIKAWA Jun
Photo by ARAKAWA Masayuki

カウンタックの子孫

日本において、「スーパーカー」というカテゴリーを確立したクルマは何か……。ランボルギーニ カウンタック(本当はクゥンタッチと発音する。カウンタックと海外で言ってもまったくもって通じない)だったとみて、まちがいない。

大きなV12エンジンをドライバーの背後に縦置きにしたミドシップカー。おどろくほど平べったいスタイリングと、上方に跳ね上がるスィングアップ“シザー”ドアが、正に、クルマの常識を超えていた。今でも、そのカタチは奇跡的であるし、40年前に登場したときには、それこそ超未来的なトランスポーターにみえたことだろう。

最高時速300キロ(出る出ないは別にして)を競ったライバル、フェラーリ365GT4BB(ベルリネッタ・ボクサー)と並べてみても、カウンタックの“異様”さばかりが目立って、BBなど美しいただのクーペ(=ベルリネッタ)にしか見えないほどである。



エンブレム以外はオールニュー

ムルシエラゴの最終車両(4099台目)がラインオフしたのは2010年末のこと。翌2011年の2月には、新フラッグシップのアヴェンタドールLP700-4の生産がはじまった。ランボルギーニにおける最近のモデル命名法にのっとった車名の意味をよみ解けば、エンジン縦置き(LP)、700馬力の4WDモデル、となる。もちろん、アヴェンタドールという名前もまた、ディアブロやムルシエラゴ、ガヤルドと同様に、“闘牛”由来のネーミングだ。

ファイティングブルのフラッグシップは、ほぼ10年に1度、フルモデルチェンジする。今回、特筆すべきは、100パーセント新開発、新設計という点である。ムルシエラゴはディアブロをベースとして開発された、言わば“ビッグマイナーチェンジ”モデルだったし、ディアブロにはミウラ&カウンタック由来のエンジンが積まれていたわけだから、エンブレム以外に一切の流用パーツがなく、何から何まで完全にあらためられたというのは、大げさに言うと、創業以来、今回がはじめてだった、と言っていい。99年にアウディ傘下となってからでは、ガヤルドにつぐ完全オールニューモデルで、それゆえ親会社以下入魂の一作、というわけだ。

Lamborghini Aventador LP700-4|

ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4

ランボルギーニの最新フラッグシップに試乗(2)

CFRP製モノコックボディ&キャビンに注目

2011年末に日本デビューを果たし、いよいよユーザーへの納車もはじまったアヴェンタドール。ランボルギーニファンからの注目も高く、2012年から13年にかけて、70台前後のLP700-4が日本上陸を果たす予定だという。全刷新となったわけだから、アヴェンタドールの特徴を列挙しだすと解説ばかりがむやみに長くなってしまう。ここではとくに、5つの注目点を挙げておこう。

  1. 1.エンジン|完全新設計となる、軽量かつコンパクトな60度6.5リッターV12自然吸気タイプ。700馬力。
  2. 2.トランスミッション|ISRと呼ばれる最新世代の2ペダルシングルクラッチシステムで、7段タイプ。
  3. 3.4WDシステム|軽量かつ精密制御のハルデックスIVタイプ電子制御式。
  4. 4.ボディストラクチャー|軽量で強固なCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)製のモノコックボディ&キャビン。
  5. 5.シャシー|レーシングカーさながらのプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンサスペンション。



なかでも注目すべきは、CFRPでできたモノコックボディ&キャビンだ。これまでなら台数限定もしは超高額(五千万円以上)の少量生産スーパーカーにおいてのみ採用されていたボディ構造である。近年では、レクサスLFAが採用して話題となった。

目指したのは、さらなる高性能化と、そして、はやりの“エコテクノロジー”(直噴やダウンサイジング、ハイブリッドなど)に頼ることのない猛牛らしい効率化を、ダブルで達成すること。そのためにも、徹底的な軽量化は必須だった、というわけで、CFRPなど複合素材の積極的な活用は大前提だったし、ライトウェイト構造を得意とするアウディグループの面目躍如、というか、軽量化見本市のようなモデルでもある。

Lamborghini Aventador LP700-4|

ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4

ランボルギーニの最新フラッグシップに試乗(3)

歴代ランボルギーニ最高のサーキットパフォーマンス

最初のアヴェンタドール体験は、イタリアはローマ郊外のバレルンガサーキットだった。その時点での感想をひとことで言えば、“大絶讃”。こんなによくできたランボルギーニは、ひょっとして、ランボルギーニじゃないんじゃないか、と思わず皮肉らずにはいられないほどの完成度の高さ、すばらしい出来映え、だと思った。

ことに、サーキットではクルマがとても小さく感じた。ムルシエラゴ以前では、クルマの大きさをしっかり意識したものだし、タイヤのあたりにちゃんとボディ外皮の存在を感じて乗っていたが、アヴェンタドールではしっかりとしたボディとシャシー、タイヤがドライバーを中心に“密集”しているようで、塊感に満ちている。だから、ムルシエラゴとほとんどおなじ大きさだというのに、より小さいクルマをドライブしているように思えるのだ。



サーキットパフォーマンスも、歴代ランボルギーニで最高である。優秀なエアロダイナミクスのおかげで、時速200キロの高速コーナー、なんて場面も姿勢よく、安定して駆けぬける。もちろん、フルスロットル時の、蹴飛ばされて引っ張られるような加速性能は、何ともほかにたとえようのないもので……。

とまあ、非日常的なインプレッションはここまでにして、日本にやってきた猛牛のフラッグシップの印象をあらためてリポートしてみよう。

Lamborghini Aventador LP700-4|

ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4

ランボルギーニの最新フラッグシップに試乗(4)

“らしくない”扱いやすさに感心

ローマでの初試乗以来、もうなんども座ってきたはずのドライバーズシート。それでも緊張するのは、相手がスーパーカーキングであるからだ。センターコンソール中央の赤いフタを上げて、エンジンスタートボタンを押した。

轟音とともに目覚めるV12エンジン。そのサウンドボリュウムは、市販車史上、最強だ。住宅街での早朝スタートなど、もってのほか。はっきり言って迷惑だろう。けれども、すぐにその態度は落ち着いて、室内にいるかぎり、快適さを保っていられる。以前のモデルのように、車体が震えつづける、なんてこともない。

エンジンも洗練されたのなら、受け止めるボディも強固。精密に動きそうな気配が濃厚に漂っていて、これからのドライブを“イージー”にさえ思わせる。

走り出して、やはり、感心してしまうのは、“らしくない”扱いやすさだ。運転歴の長い方なら、すぐに“乗りやすいクルマ”だと喝破されることだろう。商店街の路地などもためらうことなく入っていけるし、こまめな車線変更を強いられてもまったくもって気にならない。クルマとの一体感があるから、まるで、ふたまわりも小さいクルマをドライブしているような気分。これまでのスーパーカーなら躊躇したような隙間、トラックとバスのあいだとかでも、すいすいと入っていける。相手がこちらに気づいてくれているかどうかが、不安だけれど。



21世紀のスーパーカーとは

高速道路に入って、前が少し空いた。試しに700馬力を踏んでみる。その峻烈な加速フィーリングは、広いサーキットでの体験をさらに“倍”にしたかのような勢いだ。ジュワッと手のひらに汗が滲んでくるのだけれども、クルマがよくドライバーの手のうちにあって、まったくもって不安にならない。フルスロットル時のサウンドも、サーキット上で聞くよりもあきらかに豪快だ。

4,000回転をこえてから、なかでも6,000回転あたりの音とフィールがとくにすばらしい。サウンドとトルクが足の裏へと収束するようで、その感覚がドライバーを大いに震い立たせる。余計なノイズや振動はきっちり取り除かれていて、純粋にパワートレインだけを楽しむことができる。真空の中で、エンジンだけが回っているような、そんな錯覚にも襲われた。たまにはCO2を思い切り排出させてくれ、と世間に懇願したい気持ちになる。

ちなみに、外で聞いていると、“猛牛らしい爆音”をまき散らしている。じつを言うと、中で聞いているぶんにはそれほど大きな音に聞こえてこない。くわえて、乗り心地がスーパーカーにしては優秀で、すべてに洗練されている。スーパーカーは音が命、という方や、ランボルギーニはワイルドがイチバン、という方には、ちょいと物足りないクルマになったのかも知れない。しかし、それが21世紀のスーパーカーというものだったりする。

spec

Lamborghini Aventador LP700-4|
ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4

ボディサイズ|全長4,780×全幅2,030×全高1,136mm
エンジン|6.5リッターV型12気筒DOHC
最高出力|515kW(700ps)/8,250rpm
最大トルク|690Nm(70.4kgn)/5,500rpm
車両重量|1,790kg
駆動方式|4輪駆動
欧州NEDC複合サイクルモード燃費|17.2ℓ/100km
CO2排出量|398g/km
乗車定員|2人
車両価格|4100万2500円

           
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