Volkswagen up!|スモールカーファミリーを公開
Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up!
フォルクスワーゲン、スモールカーup!ファミリーを公開(1)
フォルクスワーゲンは、あたらしいスモールカーup!とその派生車種をフランクフルトモーターショーで公開した。
文=松尾 大
23.8km/ℓ、CO2排出量100g/km以下!
コンセプトモデルとしてこれまで何度か公の舞台に立ったフォルクスワーゲンのスモールカー「up!」がついにデビューする。
このup!のボディサイズは、全長3,540×全幅1,640×全高1,480mm、ホイールベース2,420mmとかなり小さいものでありながら、大人4人の乗車が可能だという。日本の軽自動車規格が全長3,400×全幅1,480×全高2,000mm以下、3+1シーターというスタイルを打ち出したトヨタiQが全長2,985×全幅1,680×全高1,500mmであるから、全長が軽自動車程度、そのほかの外寸がiQなみといったところだ。
ブルーモーションテクノロジー搭載によりさらに優れた環境性能に
搭載するエンジンはガソリン2、天然ガス1、そしてディーゼル2の計5種類を用意。ベースモデルに搭載される999cc3気筒ガソリンDOHCユニットは最高出力が44kW(60ps)、最大トルクは3,000-5,000rpmで95Nmを発生するが、最大値の90パーセント以上のトルクが2,000-6,000rpmで得られる。環境性能は、5段MTを採用したベース仕様で22.2km/ℓ、CO2排出量は105g/kmとなった。さらに、ブルーモーションテクノロジー搭載車(アイドリングストップシステム、エネルギー回生機構、低転がり抵抗タイヤなどを採用)では、それぞれが23.8 km/ℓ、CO2排出量は97g/kmに向上する。フォルクスワーゲンによると、燃料タンク容量が35リッターなので計算上の最大航続距離は833kmに達するという。動力性能は0-100km/h加速が14.4秒、最高速度は160km/hと発表されている(ブルーモーションテクノロジー搭載車はそれぞれ14.5秒、161km/h)。
ハイパワー仕様はおなじく999ccで最高出力55kW(75ps)/6,200rpm、最大トルクは同値となる。燃料消費量は、21.3km/ℓ、CO2排出量は108g/km。ブルーモーションテクノロジー搭載車では、23.2 km/ℓ、99g/km。0-100km/h加速が13.2秒、最高速度は171km/hだ(ブルーモーションテクノロジー搭載車はそれぞれ13.3秒、174km/h)。
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フォルクスワーゲン、スモールカーup!ファミリーを公開(2)
天然ガス仕様車は、100km走行あたり260円
天然ガス仕様の「エコフューエル」は、最高出力は50kW(68ps)で、天然ガス1kgで31.25kmの走行が可能だ。CO2排出量は86g/km、ブルーモーションテクノロジー搭載車では、燃料消費量が天然ガス1kgで40kmの走行、CO2排出量は79g/kmにまで削減される。フォルクスワーゲンによるとこのモデルの100km走行あたりの燃料コストは2.5ユーロ(約260円)を下まわり、ヨーロッパでこれ以上、エネルギーコストの安いクルマを見つけるのは困難だという。また、2013年には電気モーター仕様の導入も計画されている。
安全面においては、フロントバンパーに内蔵されたアーリークラッシュセンサー(正面衝突の発生前にシートベルトなどの乗員保護機能を作動させるシステム)と、オプション設定されたシティエマージェンシーブレーキング(都市内緊急ブレーキ)システムに注目したい。
30km/h以下で走行している場合、このブレーキシステムは常時オンの状態になっており、レーザーセンサーを使って車輛の前方10m以内をモニターすることで、衝突の危険を事前に察知する。
今年12月からヨーロッパ全域で販売開始
なお、このup!、ドイツ本国ではモーターショーの開幕にあわせ、9月13日から選考販売が開始された。ヨーロッパ全域においても今年12月からの販売が予定されている。バリエーションはおもに3種類。エントリー仕様の「take up!」、機能を充実させた「move up!」、最上級仕様「high up!」となる。発売時にはそれらにくわえ、「high up!」をベースにした「up! black」と「up! white」も用意される。なお、価格はエントリーモデルで1万ユーロを下まわるという。
そのほか注目すべき点は、軽量かつ堅牢なボディだ。車輛重量は、わずか929kgでありながら、熱間成型鋼板や高張力鋼板、超高張力鋼板の使用により、静的ねじれ剛性は19,800Nm/度を達成している。
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フォルクスワーゲン、スモールカーup!ファミリーを公開(3)
増殖するup!ファミリー
フォルクスワーゲンはup!のワールドプレミアと同時に、派生モデルを世界初公開した。「世界のビーチで楽しむために設計された」というbuggy up!とup! azzurraセーリングチーム。シティユースを前提としたcross up!、ドイツのアウトバーンでの走行を想定したGT up!。天然ガスで走るクリーンなコンセプトカーeco up!、電気モーター駆動のゼロエミッション車e-up!だ。
buggy up!は、ボディに強くて軽いハイテクスチールを採用した 2シーター。アンダーボディ、サスペンション、パワートレインなどは、up!のものがそのまま使われるが、アウターパネルは新設計で、地上高も20ミリメートル下げられている。スタイリングもフラットなボンネットや個性的なバンパーが大きく目立つ。サイズは、全長が44ミリメートル、全幅も31ミリメートル拡大され、全高は190ミリメートル低くなっている。そのほか、ビーチを走るクルマだけにインテリアは完全防水仕様で、フロアのドレン(水抜き)とオープンサイドシルにより、室内が水浸しになるのを防いでる。
up! azzurra セーリングチームは、ジョルジェット・ジウジアーロとワルター・デ・シルヴァにのコラボレーションによる小型オープンモデルだ。ボディはドアもルーフもなく、完全なオープン仕様で、ボートの上にいるような爽やかなサマーブリーズを楽しむことができるとしている。インテリアは防水処理されたスタイリッシュなハイテク素材がふんだんに使われている。シートはホワイトとブルーのレザーを採用し、ダッシュボードはマホガニーをベースにメイプルウッドの象嵌をほどこし、各所にクロームのアクセントを配した。
4 ドア仕様のcross up!は、これまで発売されたフォルクスワーゲンのほかの「クロス」バージョン同様、アクティブなライフスタイルに対応するために特別にカスタマイズされたタフでヘビーデューティーな資質を備えている。このモデルもほかの「クロス」バージョン同様、最低地上高が15mm 高められている。
GT up!は最高出力を100ps程度にまで引き上げたスポーツモデルだ。900kgあまりの軽量ボディとあいまって、初代ゴルフ GTIの復活をイメージさせる。
エクステリアを見ると、フロントバンパーのデザインが一新され、ゴルフ GTIのようにハニカムグリルを備えた大きな冷却用のエアインテークが設けられる。 さらに、ブレーキ冷却用のエアインテークをバンパー左右にも設け、ウイング型のLED デイタイム ランニングライトを装着している。
eco up!は天然ガスエンジンとブルーモーション テクノロジーを採用し、79g/km という低CO2排出量を実現したモデルだ。
フォルクスワーゲンによるとup!のような小さなクルマには、エミッションの少なさにくわえて、ハイブリッドシステムより大幅にコストが安いというメリットがあるという。eco up!はコンセプトカーを名乗るものの、約1年後には、正式な生産モデルとして公道を走っているだろうとフォルクスワーゲンは伝えている。
最後の1台はe-up!だ。これは、2013年に発売予定のゼロエミッションカー。搭載される電気モーターは最高出力60kW(連続出力40kW)、最大トルク210Nmを発生し、最高速度は135km/hを実現。 前進ギアと後退ギアの選択は、センターコンソールにあるブッシュボタンを押すことでおこなう。搭載されているバッテリーの容量は18kWh で、最大走行距離は130kmだとしている。
すべてのup!ファミリーの販売が実現するかどうかは未定だが、なかなか魅力的なラインナップである。