あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──ゼファー編|SHIFT JAPAN
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2015年5月27日

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──ゼファー編|SHIFT JAPAN

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──ゼファー

大きな可能性を秘める、小型風力発電(1)

自然エネルギーとして話題にのぼることが多い風力発電。風の力を電気エネルギーに変換するシステムで、大型のシステムが海岸線に並んで立つイメージが強い。しかし、学校や一般家庭用としても使えるシステムもある。

文=小川フミオ写真(ポートレイト)=吉澤健太

あたらしい時代のエネルギーを

小型風力発電システムの第一人者といわれるのが、ゼファー。新宿副都心の一角にオフィスをもつこの企業は、1997年、新エネルギー分野に特化した専門メーカーとして創業した。いらい、独自の小型風力発電システムを開発、世界40カ国以上で、5000を超えるシステムの設置導入実績をもつ。これからの小型風力発電システムの可能性について、ゼファーの遠藤友哉代表取締役社長に話を聞いた。

──風力発電システムの開発・販売を手がけるにいたった理由は?

創業者が、オーディオメーカーの出身で、モノづくりで社会に貢献したいという志とともに創業されました。そのさい、注目したのは、1997年12月の京都議定書(温室効果ガスの削減目標を定めた規定)を受けて加盟国が何をするかでした。

ゼファーの遠藤友哉代表取締役社長

小型なので設置場所を選ばない(西表島)。

──そこで発電をビジネスにしようと。

経済産業省の後押しも受けて、あたらしい時代のエネルギーをつくることが大事と考えました。条件はふたつ。ひとつは、CO2を出さない。もうひとつは自然のエネルギーを利用する。それが京都議定書で定められた目標をクリアする手段だと考えました。

──ゼファーは小型の風力発電システムを多く手がけ、企業や学校などの設置を目的にしているのが興味ぶかい。

東京都内でも会社や学校の敷地に設置したいという要望が多くなっています。そこには、個人単位での環境への取り組みが増えてきていることとも関係あると思います。たとえばハイブリッド車に乗るのも、個人的に環境にいいことをしたいという気持ちの表れといえるのではないでしょうか。そんな方たちが興味をもってくださっています。

企業が風力発電を導入する例も増えている(静岡銀行)。

EVなど蓄電機能のあるものへの充電も可能。

──さらに、震災後の計画停電や、現在の節電など、電力供給に対する不安が購買の背景に?

電力供給への不安を感じたり、電力供給のあり方そのものについて、今回の震災をきっかけに関心をもったひとが増えていると思います。緊急時における電源の確保を真剣に考えるひとが増えているのでは。

──セールス的にも変化が?

市場での関心が高まっているようです。問い合わせ件数は震災前の10倍です。ひとつのエネルギーにのみ依存するのではなく、複数のエネルギー源を確保することが非常時の“保険”と考えるひとが多くなっているようです。それがセールスが上向きになっている理由のひとつだと思います。

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──ゼファー

大きな可能性を秘める、小型風力発電(2)

2011年度の販売数は、前年の3倍に迫る勢い

──風力発電のシステムはどう構成されているのか?

エアドルフィンという製品を例にとると、風力発電機、地面から立てるポール、太陽光パネル、ケーブル類、リモートモニター、インバーター、バッテリーなどを組み合わせて、お客様のニーズに合わせた最適なシステムを提案しています。たんなる風力発電機の販売でなく、顧客のニーズに合わせて自家発電のシステムを組むのがわが社の特徴です。ちなみにエアドルフィンのシステムは約200万円です。

──製品的な特長は?

できるかぎり風力を電力に、が開発の根幹です。そして、どこでも使えるように。軽量かつ丈夫であることを心がけて開発しました。たとえばブレードは東レと共同開発したカーボンファイバー製です。一枚380gと超がつくほど軽量です。風への追従性が高いし、風が強くなったときの停止も楽だし、万が一のときひとなどを傷つける心配もほかの素材にくらべて大きく低下しています。

風通しのよい建物の屋上は設置に最適(高崎高島屋)。

街灯の電力を風力発電でまかなう例も。

──性能は?

一般的な風力発電機のローターは風が強くなりすぎると暴走するおそれがあるため、だいたい風速25m/sで停止させています。でもそれではもったいないと思い、エアドルフィンでは風速に関係なく発電しつづける設計にしています。性能的には、定格出力1.1kW(12.5m/s)ですが、それを“出力の通過点”と位置づけて、瞬間最大で4.0kW(20m/s以上)を出します。暴風域(20m/s以上)でも、ローター回転数を下げながら、出力を絞って運転をつづけます。

──実際にはどのような販売状況なのか。

エアドルフィンは2007年に販売しました。それ以来出荷量は、国内海外ともに1500台ずつ。そのあと5000台に増え、さらに2011年度は前年度に対して3倍の伸びと見込まれています。

──購買層の内訳は?

日本では法人と個人の顧客がほぼ同率です。個人のお客さまは、エアドルフィンの出力が月間平均風速5m/sで100kWhですから、家庭の消費電力の3分の1程度をまかなえる能力を評価してくださるとともに、バッテリーを備えれば緊急時の電源確保も可能である点も好評です。法人では無電源地域の電化や節電目的で使われることもありますし、最近の例ではメルセデス ベンツ日本が乃木坂にオープンした「メルセデス ベンツ コネクション」の一部照明用にゼファーが動いています。

八ヶ岳の赤岳天望荘に設置された。

「循環型サイクルによる発電の重要さが、世間でも再認識されました」

──特殊な地域でのニーズもあるとか。

無電源地域でも、すぐに設置できることと、ディーゼル燃料に対してコストの償還が早いことやCO2排出量が圧倒的に少ないなどの特徴が評価されています。日本だとたとえば八ヶ岳の赤岳天望莊に設置されています。カバーできる範囲が広いこともあり、海外での販売も好調です。米コロラド州に100パーセント子会社を設置しましたし、スウェーデンのストックホルムにも事務所を開設するまでになっています。

──風力発電には超低音を発生する騒音公害や鳥への脅威という問題がとりあげられるが。

ノイズはゼロにはできませんが、同規格の製品と比較すると、ゼファーの製品は圧倒的に静かだと自負しています。エアドルフィンを例にとると、静かに飛ぶフクロウの羽を参考に表面処理をほどこした「サイレント・ディスラプター・ブレードを採用して、エアフローによるノイズを大幅に低減しています。鳥が衝突するバードストライクは、わが社の製品では、過去3年間に1回起きているだけという報告です。

ゼファー株式会社|ZEPHYR CORPORATION
風力、太陽光、水力等のエネルギーにかんする機器の開発、製造、販売(設置に関する設計、工事、リース、メンテナンス、など一貫して受注)及びコンサルティング。家庭用、住宅産業用、学校教育用、業務用、船舶用、大型売電事業分野での事業展開。

           
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