HERMÈS|「しばし、時を忘れる」ような哲学的機能を備えたタイムピースを発表
HERMÈS|エルメス
「しばし、時を忘れる」ことができるメカニズム
哲学的機能を備えたタイムピースを発表
毎年、職人技へのこだわりとエスプリが結晶した“メゾン・エルメスならでは”の魅力的な腕時計を発表しているエルメス。2011年は、丸型ウォッチアルソーの自動巻きクロノグラフやHウォッチのリニューアルモデル、職人芸を駆使したアーティスティックなタイムピースにくわえ、まさにその真髄ともいえる思想、メカニズムを備えた哲学的なモデルを発表した。
取材・文=渋谷康人
ボタンを押した瞬間に「客観的な時間」から解放される
今、この地球上に住む誰もがおなじ時間を共有し、その時間に追われて生きている。日本列島に住む私たちは、日本標準時と呼ばれるおなじ時間を共有し、社会や人びとは、その時間に合わせて生活している。それは哲学的には「客観的時間」と呼ばれるもの。
しかし私たちには、大事にしたいもうひとつの時間があると哲学者は言う。それは、時計のような客観的な計測機械で測られるものとはちがう、あなたが自分自身で感じるあなただけの時間、すなわち「主観的な時間」。客観的な時間に追われつづけるのではなく、時には客観的な時間を忘れ、自分だけの主観的な時間を楽しむことも必要なのだ。
新作「アルソー タンシュスポンデュ」は、この“客観的な時を忘れる“機能をはじめて実現した腕時計。ケース9時位置のプッシュボタンを押すと、時針と分針は12時に近い定位置に移動。そして5時位置にあるレトログラード(往復運動)式の日付表示の針は文字盤から姿を消し、あなたは客観的な時間を忘れることができる。主観的な時間から客観的な時間に再びもどるには、ただもう一度、ボタンを押すだけ。針が止まっているあいだも、時計は正確に時を刻みつづけ、再び客観的な時刻を表示してくれる。こんな哲学的なメカニズムをもつ腕時計は、ほかに例がない。
職人技を駆使した限定モデル、ユニークピースも登場
このモデル以外のコレクションも、もちろん非常に充実したもの。おなじ丸型モデルの「アルソー」には、ムーンフェイズ表示機能を搭載した自動巻きモデル「アルソー ビッグムーン」や、アルソーらしいシンプルな自動巻きクロノグラフ「アルソー クロノグラフ クラシック」も登場した。また、1996年に誕生した人気の「Hウォッチ」も、ケースサイズは従来どおりながら、文字盤のインデックスを拡大したり、大型ケースのモデルに自動巻き仕様が登場するなど、大きくリファインされた。さらにユニークピース(1点もの)には、エルメスならではの意匠を使った伝統のエナメル装飾や寄木細工を文字盤に用いたモデルも登場しているのはうれしいかぎりだ。
アルソー タンシュスポンデュ
この趣向のために開発された360度レトログラード式表示機構を搭載
9時位置の「時を忘れる」ボタンを押すと、時分を表示する2本の針が定位置に、日付表示針が隠れる、ユニークな機能をもつ腕時計。時を刻みつづけながら、時分日付針をいつでも移動させるために、時分2本の針は360度回転するのではなく、12時位置からほぼ1周して12時位置に近づくと0分の位置にフライバックする「360度レトログラード式表示機構」というほかに例のないユニークな機能、メカニズムのモジュールがあらたに開発され、搭載された。3本の針がすべてレトログラード表示をおこなうトリプルレトログレードモデルでもある。なお「タンシュスポンデュ」というネーミングは英語表記すると「Time Suspend」、つまり「時を一時停止(保留)する」という意味。
自動巻き、直径43mmのステンレススティールケース、アリゲーターストラップ、3気圧防水、165万9000円(予価)。年末発売予定。
アルソー グランドリュンヌ
洗練度No.1のムーンフェイズ付きフルカレンダーモデル
今年続ぞく登場した「アルソー」の新作のなかでも、誰にでも自信をもってお薦めしたいのが「グランドリュンヌ(大きな月)」と名づけられた、月・日・曜日表示にくわえてムーンフェイズ表示を備えたこのモデル。文字盤上の要素が多いにもかかわらず、このタイプのモデルとしては驚くほどシンプルで洗練された顔に仕上げているのはさすが。ムーブメントは時計愛好家のあいだでは定評あるデュボワ・デプラ製のモジュールを搭載したもの。オーセンティックが好みならパールシルバー、精悍なイメージが好みならブラックダイヤルがお薦めだ。また比較的価格が手頃なのもうれしい。
自動巻き、直径43mmのステンレススティールケース、アリゲーターストラップ、3気圧防水、65万6250円(予価)。今夏発売予定。