A. Lange & Sohne|2011S.I.H.H.速報!
A. Lange & Sohne|A.ランゲ&ゾーネ
最高峰モデル“プール・ル・メリット”第4弾モデルにくわえ、
初のミュージカルウォッチ、初の超薄型シンプルモデルを発表!
今年のS.I.H.H.で発表されたA.ランゲ&ゾーネの新作のうち、なんといっても注目すべきは、高度なメカニズムを搭載したふたつのあたらしいコンプリケーションだ。全面的にリニューアルされた「サクソニア」の全貌もあわせ、ここで紹介。
文=渋谷康人
曾祖父アドルフ・ランゲによる1845年のマニュファクチュール創業の伝統を継承すべく、東西ドイツ分割と会社の国有化による半世紀の空白を超えて、1990 年にウォルター・ランゲの手で復興。ドイツ・グラスヒュッテ伝統のスタイルと最高峰の職人技による究極の機械式時計づくりを追求しているA.ランゲ&ゾーネ。高い目標を掲げて一切の妥協を許さない姿勢、トレンドに影響されることなどない独自のペースでの製品づくりは2011年も変わらない。
今年の新作は全部で6モデル。その内訳は、ふたつの複雑モデルと、復興第1号モデルとして1994年に発表され、今回全面的にモデルチェンジされたスタンダードなウォッチコレクション「サクソニア」の4モデルだ。
高度なメカニズムが大好きな時計愛好家にとって興味深いのは、何と言ってもふたつのあたらしいコンプリケーション。
とくに時間精度を追求して地球の重力の影響を軽減するトゥールビヨン脱進機に、時計の駆動力を安定させてさらなる精度向上を狙った鎖引き(チェーンフュジー)機構を組み合わせた「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」には注目だ。時・分・秒を独立した針で表示するレギュレーター文字盤のうち、時を表示するインダイヤルの一部をトゥールビヨン脱進機を見やすくするために6時間毎に表れたり消えたりする隠しダイヤルにしている趣向が楽しい。
またもうひとつの複雑時計「ランゲ・ツァイトヴェルク・ストライキングタイム」は、一見すると2009年に発表されたデジタル表示の「ツァイトヴェルク」とほとんどおなじに見えるが、じつは文字盤左右のデジタル表示の下に、時の経過を音で知らせるためのハンマー機構を備えた、ブランド初のミュージカル(鳴りモノ)ウォッチであり、鳴りモノ好きの時計愛好家には絶対に見逃せないモデルだ。
また全面リニューアルされた「サクソニア」も、ひとまわり大きく薄くなったケースに合わせてムーブメント自体を設計し直すなど、手間を惜しまぬ細かなこだわりが満載されており、最高峰のスタンダードウォッチとして完璧な仕上がり。とくにランゲ初の2針シンプルモデルとなった「サクソニア・フラッハ」は、シンプルウォッチを愛する大人の方に、ぜひ一見を薦めたいモデルである。
リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”
時を表示する右下のインダイヤルの一部が6時間毎に切り替わる!
トゥールビヨン脱進機とともに時計の駆動力を安定させるランゲ自慢の極小のチェーンフュジー機構を腕時計ながらムーブメントに組み込み、機械式腕時計としての最高精度を追求した“プール・ル・メリット”の第4作目。時・分・秒をそれぞれ独立した針とインダイヤルで表示するレギュレータータイプの文字盤デザインの原型となったのは、近代地理学の父アレキサンダー・フォン・フンボルトが愛用したクロノメーターも製作した、名時計師ヨハン・ハインリッヒ・ザイフェルト作の1807年製懐中時計。オフセンター配置された3つのインダイヤルのうち、右下にある時表示用の文字盤の一部、左下のトゥールビヨン脱進機が見えるようスケルトン化されたスモールセコンドダイヤルと重なっている部分を、時針が右半分の12時から6時にあり文字盤が不要なときは隠して、トゥールビヨン脱進機全体が見えるようにするという、回転ディスク機構を使った凝った仕掛けを備えている。
手巻き、直径41.9mmのピンクゴールドケース、クロコダイルストラップ、1647万4500円。8月発売予定。
ランゲ・ツァイトヴェルク・ストライキングタイム
時を音で知らせる! ランゲ初のミュージカル・ウォッチ
機械式ながら現在時刻を時、分のデジタル表示でハッキリと教えてくれる。しかも時分がその時刻になった瞬間に即座に切り替わる「ランゲ・ツァイトヴェルク」のメカニズムをベースに、毎正時と15分を、金属製のハンマーがチャイムを叩く美しい音で知らせてくれる「クォーターストライク機構」を搭載した、新生A.ランゲ&ゾーネ初のミュージカル(時を音で知らせる)ウォッチ。この種のメカニズムを駆動するには通常の時計機構より遥かに大きなエネルギーが必要だが、大きな時分表示ディスクを動かしているツァイトヴェルクの機械式ムーブメントには駆動エネルギーに余裕があったため、この製品が誕生したという。文字盤下に見える3角形のハンマーは、左が時打ち用、右が四半時(15分)打ち用。なお、音を放出するゴングは文字盤とベゼルのあいだにセットされている。なお、音を出したくないときは4時位置にあるプッシュボタンを押すとサイレント機構が働いて、時打ちの機能を止めることも可能だ。
手巻き、直径44.2mmのホワイトゴールドケース、クロコダイルストラップ、852万6000円。9月発売予定。
サクソニア・フラッハ
ランゲ初の2針、最薄型シンプルウォッチ
1994年、新生ランゲの第1弾コレクションのひとつとして登場した「サクソニア」は、無駄な要素を極限まで削ぎ落とし視認性を追求したシンプルな文字盤や、高い剛性で歯車、カム、そしてバネをしっかりと支える3/4プレートの地板など、質実剛健なデザイン、またラインナップのなかでは比較的手頃な価格で、第二次世界大戦前のドイツ機械式時計の美点を今に伝えるタイムピースとして時計通たちに愛されてきた。今年はそのシリーズが完全リニューアルされ、これまでマイクロロータ−だった巻き上げ機構がセンターローター式となって巻き上げ効率が向上、パワーリザーブが従来より長くなるなど、ムーブメントのレベルから新世代に生まれ変わった。そしてこの革新に伴って、このシリーズにはじめて登場したのがランゲ初の2針モデルであり、ケースの厚さわずか5.9mmと、これまでに登場したランゲのコレクションでもっとも薄いこの「サクソニア・フラッハ」である。ムーブメントはここで紹介している他の2つの複雑モデルと同様に自社製のひげゼンマイを採用。このモデルのためにあらたに開発された、厚さわずか2.9mmのものだ。ケースはシースルーバック仕様となっており、美しいその姿を目で楽しむこともできる。なお2針のため、ストップセコンド機構はランゲのムーブメント中唯一省かれている。シンプルな腕時計の奥深い魅力を知る、まさに時計通待望の1本と言っていいだろう。
手巻き、直径40mmのピンクゴールドケース、クロコダイルストラップ。184万8000円。2012年1月発売予定。
A.ランゲ&ゾーネ
Tel. 03-3288-6639