誰かになるためにがんばるなんて、もったいない！

Chico SHIGETA　今日はごあいさつもそこそこに、いきなり、マッサージをさせていただきました。蜷川さんのからだ、おもしろいですね。

蜷川実花　おもしろい!?

Chico　すみません、興味深いという意味です（笑）。からだって、そのひと自身を語るんですよ。だから今日はぜひ触れさせていただこうと思っていたのですが、やっぱり、モノづくりをされている方はちがう。“そのひとらしいもの”が、もろに出てきますね。

蜷川　もろ!?

Chico　はい。なんていうか、こう静かなマグマのような感じで、決して激しくはないんですけど、ふつふつとしたものがとても強い。「気がまっすぐとおってるぞー！」みたいな（笑）。

蜷川　まっすぐかどうかは自分ではわかりませんが（笑）、ただ、これまでの人生を振り返ってみると、まっすぐ“斜め”に生きてきたなという気はします。あっちにこっちにふらつくことはなく、ただひたすら、まっすぐ、斜め（笑）に。

Chico　でも、いい感じで斜めですよ（笑）。

蜷川　ハハハ。

Chico　つまるところそれが、蜷川さんの作品のおもしろさなんじゃないかな。じつは私、以前からずっと蜷川さんの作品が大好きで、だから、この対談の企画があがったときも、まっさきに「蜷川さんに会いたい！」とリクエストさせていただいたんですよ。今日は念願がかなって本当にうれしい。お越しいただきありがとうございます。

蜷川　そうでしたか。私はてっきり、自分がSHIGETAのファンだから呼んでいただけたのかと思っていました（笑）。

Chico　なんと、使っていただいていたんですね。ありがとうございます！

蜷川　SHIGETA歴は、約2年になります。出産後、ちょっと太って、なんとなく気分も冴えなくて、なんかないかなーって撮影のときに話していたら、そこにいた編集者が「SHIGETAのオイルがいいよ」と教えてくれて、なにそれどこに売ってるの？って(笑)。白金台だったかな？　某トリートメントサロンを紹介してもらって、行ってみたらSHIGETAのオイルがたくさんあって、6本くらい大人買い（笑）。以来、なにかあるとつけています。事務所でもよく、おすそわけしているんですよ。

Chico　おすそわけ、いいですね。

蜷川　いや、つけているとみんなが寄ってくるので（笑）。私のまわりのひとたちは基本的に、疲れていたりとか、バランスがあまりうまくいっていなかったりすることが多いので、効果てきめん。ほんの少しつけるだけで気分がリフレッシュされるみたいです。

Chico　いまのお話に通じるかもしれませんが、この対談のテーマは、メッセージの発信です。日本の女性は、いつもすごくがんばっていて、きれいになる努力もたくさんしているのに、なんとなく疲れている。それってなんでなんだろうと考えてみたときに、みんな誰かになろうとしているのだと思いました。本当は自分らしくいるのがいちばんいいのに、それを無視して、あのひとのようになりたい、こういうひとになりたいと、自分とは別のひとになろうと“がんばりすぎている”気がして仕方がないのです。

蜷川　誰かになるためにがんばるなんて、もったいないですよね。

Chico　そうですよ。ひとそれぞれに美しさはあるはずなのに。だから、「そのままでいいじゃん！」ということを伝えていきたい。では具体的にどうすればよいかということで、この対談につながりました。
やっぱり、モノをつくっているひと、なにかを表現するひとのメッセージは説得力がありますから、今日は蜷川さんに、独自の視点・観点で「こんなきれいがあるよね」というのをお話しいただくことで、「それもありか！」となるはず！　期待しています。

SHIGETA｜自分らしく、リアルに生きるという提案

蜷川実花×Chico SHIGETA エキサイティング対談 （前編）

「そのシワ、かっこいい！ って思えるくらいになりましょう」 （2）

自分らしくいるためには、ときにたくましさも必要

Chico　蜷川さんのファンの私としては、インタビュー記事などもよく読ませていただくのですが、知れば知るほど共感することが多い。蜷川さんのお宅にはたしか、家訓がありましたよね。じつはSHIGETA家にもあって、内容はおなじく、「ひとに頼らず生きていけ」なんですね（笑）。

だから、作品ももちろん大好きですけど、蜷川さんの生き方そのものが興味深い。バックグラウンドというか、ヒストリーみたいなものがすごくおもしろいし、そういうたくましさって、みんな必要だなーって思う。

蜷川　そうかもしれないですね。なんかやっぱり、最初におっしゃっていたみたいに、みんなものすごく恐怖心を植えつけられているんじゃないかなという気がします。こうしなくちゃいけないとか、ああしなくちゃいけないとか、それはもう遅いんじゃないとか、それ去年っぽいよねとか、とにかくあまりに情報が細かくありすぎる。で、日本人はまじめだから、そうなんだ、じゃあそうしなきゃいけないんだって、過剰に思いすぎちゃっている気がしますね。もったいないなぁって。だって、たまに海外へ行くと、現地のひとたちはみんな、とてつもない格好でふらふらしていたりするじゃないですか（笑）。

Chico　ですね（笑）。

蜷川　日本人はとてもおしゃれだけれど、どこが窮屈な感じもして、もっとひととちがっていてもいいのにって思いますよ。きっかけなんでしょうけどね。実際、ほんのちょっと肩を押してあげるだけで、一歩を踏み出せる友達もいます。だから、Chicoさんのいう、「そのままでいいじゃん！」というメッセージには、無条件に共感。私もつねづね、声をあげられる場があったら言いたいと思っていたので、今日はすごくうれしいです。

SHIGETA｜自分らしく、リアルに生きるという提案

蜷川実花×Chico SHIGETA エキサイティング対談 （前編）

「そのシワ、かっこいい！ って思えるくらいになりましょう」 （3）

よいことも悪いことも、ぜんぶ混ざっているからこその美しさ

蜷川　さっき、からだに触ってみればそのひとのことがわかるっておっしゃっていましたけど、それってどういう感覚ですか？

というのも、じつは私も、はじめてお会いしたひとをまえに「じゃあ撮ります」となったとき、ふと、ふだんとはちがう感覚がひらくんですね。このひとはきっとこういうひとだろうなって、勝手にひととなりを想像しながら、このひととどういうふうに混じり合えるかな、どうやったら芯まで届くことができるかなって思いながら撮っていくので、もしかしたらこれって、Chicoさんの感覚とちかいのかなと。

Chico　うんうん、似ているかもしれませんね。私の場合はすごく知りたがりなんだと思うんですよ。まずは、そのひとのことを知りたい、すごく興味があるというところからスタートする。ただやっぱり触れたときには、たぶん蜷川さんがシャッターを押すさい、その一瞬の感覚を大事にしたいと思っていらっしゃるのとおなじで、この指先の触感というか、触れたときにどれだけ敏感でいられるかが、私の一貫したテーマではあります。
あとは、いい距離をおくということですね。主観を入れない。そうすればからだが教えてくれますから。

蜷川　うん、わかる気がします。私はけっこう写真が濃いというか、“蜷川さんの写真っぽい”みたないのがわりと強いので誤解されがちなのですが、じつは、こうしてほしいああしてほしいという要望はぜんぜんなくて、そのひとのその日の体調だったり気分だったりをそのまま引き出したいというスタンス。ほんと、“撮らせてもらっている”という気持ちのほうがまちがいなく強いんですね。

だからでしょうか、撮影時はよく、「すごくいい婦人科の先生みたい」って言われたりします（笑）。たしかに、撮るまえより撮ったあとのほうが、被写体の方も元気になって帰られるし、私自身も、撮ることによって自分が再生される。要は自給自足ですね（笑）。撮って元気になって、また撮って元気になってって感じ。

Chico　わたしもそうです。朝ちょっと調子が悪いという日でも、お客さまのところへ施術に出かけると、めちゃめちゃ元気になって帰ってくる（笑）。

蜷川　ふしぎですね。

Chico　たぶん、リチャージされるのだと思います。からだに触れることで、そのからだからは皮膚のなかのことまで教えてもらえるので、私の場合、施術はある意味、お客さまとのセッション。だから、施術をすることで自分のからだのなかもリチャージされて、きれいになる。

蜷川　なるほど～、すごくよくわかります。もしかして、Chicoさんと私は、感じ方や考え方が近いかも。いろいろお話をうかがってみて、そう思いました。

Chico　じゃあ、お仕事めちゃくちゃ楽しくないですか？

蜷川　楽しいです！

Chico　だから蜷川さんの作品からは、生きてる感が伝わってくるんですね。写真のなかに、善と悪がない。そのまんまじゃないですか。リアルな感じがすごくいい。だから好きなんですよ。

蜷川　ありがとうございます。私の作品は、その作風から、どうしても、かわいいだとかきれいだとか言われてしまうんですけど、自分の撮っている写真はそれだけのものでは絶対になくて、それこそ、よいことも悪いことも、きれいなこともきれいじゃないことも、ぜんぶ混ざっているからこその美しさだと思っているのですが、なかなかその話をしてもわかっていただけないことが多くて……。

Chico　蜷川さんは、作品も生き方もリアル。それって、すごくすてきですよね。やっぱり“そのまま感”というのが大事だなと私は思っています。大人になるとみなアンチエイジングに夢中になりますが、その年齢ならではのよさにもっと気づいてほしい。シワやシミを嘆くのではなく、「そのシワ、かっこいい！」って思えるくらいになりましょうよ。

蜷川実花｜NINAGAWA Mika
フォトグラファー。東京生まれ。1996年、写真ひとつぼ展グランプリ受賞。以後、キヤノン写真新世紀優秀賞、コニカ写真奨励賞、木村伊兵衛写真賞、大原美術館賞など数々の賞に輝く。2007年には、映画『さくらん』で監督を務め、大きな話題に。2008年11月東京オペラシティアートギャラリーで開催された個展「蜷川実花展 ―地上の花、天上の色―」は入場者記録を大きく更新、翌09年4月より全国の美術館を巡回し、述べ18万人を動員する。
http://ameblo.jp/ninamika（オフィシャルブログ）
http://ninamika.com（オフィシャルHP)

Chico SHIGETA
2004年、仏・パリで「SHIGETA」を設立。長年にわたる日仏のさまざまなウェルビーイングを探求後、「そのひとだけがもつリアルビューティを引き出すのは、インナービューティを育むことから」をキーワードに、独自のセルフケアメソッド“バイタリティー・コーチング®”をつくり、セルフケアの大切さを伝える啓蒙活動を展開。現在、パリの著名人、アーティストはもとより、日本国内のVIPからもビューティエキスパートとして絶大な支持を受けている。
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