LAオートショー プレイバック 前篇|L.A. Auto Show
CAR / FEATURES
2019年1月15日

LAオートショー プレイバック 前篇|L.A. Auto Show

L.A. Auto Show 2018|ロサンゼルス オートショー 2018

LAオートショー プレイバック 前篇

カリフォルニアという土地柄だからこそ
EVとハイパフォーマンス モデルが際立つ

2018年末に開催された「ロサンゼルス オートショー 2018」を訪れた南陽一浩氏による総括。前篇ではハイパフォーマンスや最先端技術を前面に押し出すドイツ勢や現地に特化されたアメリカ勢を中心にお伝えする。

Text & Photographs by NANYO Kazuhiro

LAならではの妙味とは?

今年はフルモデルチェンジを迎えたポルシェ「911」、つまり992型がすっかり主役を奪った感のあった「ロサンゼルス オートショー」。ワールドプレミアのニューモデルがインターネットを介して世界中に一斉発信される今や、モーターショーの意義は薄らいだ、などという声も聞かれる。だが自動車市場がグローバル化より多様化に向かっているなかで各ローカル市場に向けて、もっともオプティマイズされたモデルが供給される象徴的な場は、やはりモーターショーなのだ。

自家用車の巨大なマーケットで、その裏返しで環境問題への取組みにも前のめりなカリフォルニアという土地柄を反映し、LAオートショーで際立っていたのは、ハイパフォーマンスカーとEVだった。そこが同じアメリカでも、普及モデルにスポットが当たるデトロイトショーや新テクノロジーのショーケースであるラスベガスのCES、さらにエスタブリッシュメントな高級車に焦点が当たりやすいニューヨークショーとの違いといえる。

BMW X5 xDrive50i

BMW X5 xDrive50i

BMW M340i xDrive

BMW M340i xDrive

純粋なパフォーマンス志向押しのドイツ車

まずBMWはエンジン屋としてダウンサイジング以上に本懐であろう、3リッターのストレート6や4.4リッターのV8ツインターボといった今となっては巨大ともいえるパワーユニットを、各セグメントに追加してみせた。

8シリーズ」にはコンバーチブルボディの「M850i xDrive」が、そして「X7」には「M50i xDrive」が姿を見せた。同じく4.4リッターのV8ツインターボを搭載するが、出力は前者が530ps、後者が462psとなる。さらにはパリサロンで登場したばかりのG29世代の「Z4」の隣では、同じくストレート6だが374psと過激さを増した「M340i xDrive」も登場。この先に現れるであろう新しい「M3」と棲み分けるAWDゆえの、強気なスペックを誇っていた。

Mercedes-AMG GT C Roadster

Mercedes-AMG GT C Roadster

Mercedes-AMG GT R Pro

Mercedes-AMG GT R Pro

一方のメルセデス・ベンツは、マイナーチェンジを迎えたメルセデス AMG「GT」を強烈にアピールした。センタープロダクトとなるAMG「GTクーペ」、476psの2020年仕様の周囲に、ラグジュアリーな「GT C コンバーチブル」、さらには「GT R」からアクティブとパッシブ双方の空力デバイスをニュルブルクリンクのタイムアタック用に見直した「GT R Pro」を発表した。

GT R Proは、決してベストではないコンディションである秋口のニュルブルクリンクでのアタックで、GT Rに比べて約6秒を縮めた7分6秒432を記録しているという。FRとして無論、驚異的なパフォーマンスだ。肝心のマイナーチェンジだが、外観上で旧モデルとの違いはヘッドライト内のLEDが「L」から「V」字型に近い形に改められたこと。あとリアアングルでは、基本的に4本出しのエキゾーストエンド形状が、GTは丸、GT SとGT Cは平行四辺形気味の角、GT Rはセンターにまとめられたことだ。

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LAオートショー プレイバック 前篇

カリフォルニアという土地柄だからこそ
EVとハイパフォーマンス モデルが際立つ(2)

市場化目前のアウディEV

ちなみにジャーマン御三家の一角を占めるアウディは、「e-tron GTコンセプト」をワールドプレミア。先に市販される見込みの「e-tron」や「e-tron スポーツバック」がSUVとクロスオーバーだっただけに、低いプロファイルを与えられたEVサルーンは、テスラ「モデルS」と市場で相まみえるはず。

今のところ市販予定は2020年と謳われているが、2019年に現れるはずのポルシェ「タイカン」との共通項も気になるところだ。プラットフォームは、フォルクスワーゲングループのMEBではなく、タイカンやe-tronと共有するPPE(プレミアム プラットフォーム エレクトリック)を用いるという。

Audi e-tron GT Concept

e-tron GTコンセプトの外観上の特徴としては、「A7スポーツバック」などでおなじみの、後ろに長く伸びつつ上方に切り上がるクォーターウィンドウ、そしてブリスター気味に張り出したリアフェンダーが印象的だ。4.97メートルの全長に全幅は1.97メートル、全高は1.38メートルとされ、空力性能が追求されたボディであることが予想される。

バッテリー容量は今のところ90kWhと発表され、当然のように4輪駆動を採用。出力は434kW/590ps、自律走行距離はWLTP基準で400㎞とされる。このe-tron GTコンセプトが積むバッテリーは800V対応で、20分充電で約80パーセントの充電を完了、予定では11kW容量のコードレス充電にも対応するとか。いずれにせよ、ドイツ車のEVのコンセプトは、ようやくハリボテ感を卒業しつつある。

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カリフォルニアという土地柄だからこそ
EVとハイパフォーマンス モデルが際立つ(3)

カリフォルニアン ニーズに合うクルマ

もうひとつ、EV関連で驚かされたのは、地元勢といっていいテスラの「モデル3」に、結構な人だかりができていたことだ。生産の遅れが伝えられるなか、やはりまだ地元でも相当に珍しい存在であることが察せられた。

ニューカマーとして注目を集めたのが、EVのSUVコンセプトを発表したリヴィアンだ。この聞きなれない名前のEVメーカーは2009年にMIT(マサチューセッツ工科大学)のオートモーティブラボラトリー出身のロバート・RJ・スカリンジが創設。英国でマクラーレンのロードカープログラムを手がけたマーク・ヴィネルスらを迎え、プラットフォーム共有のEVピックアップトラック「R1T」、そして「R1S」を発表したのだ。リヴィアンは当初、2万5,000ドル前後の超低燃費車の市販を目指していたが、2013年ごろにEV専業へと方向転換し、2017年にはイリノイ州の三菱自動車の元工場を買収し、いよいよ生産に着手するかと注目を集めている。走破性が高く、汚して乗れるタフな高性能EVという開発コンセプトだ。

Rivian R1S

Rivian R1S

安価なラダーフレームに抱き込まれたバッテリーパッケージは、105kWh、135kWh、180kWhという、いずれも大容量の3サイズ展開。計4基のモーターは、1基ごとの最大出力は147kWで各輪を駆動し、上記のバッテリーパッケージごとに300kW/560Nm、562kW/1,120Nm、522kW/1,120Nmの最大出力/トルクとなる。

サスペンションはエアサスでダイナミック ロール コントロールを備え、車重はSUVモデルで2,650kgに達するものの、105kWhパッケージでも240マイル(約388㎞)以上、180kWhパッケージなら400マイル(約648㎞)以上の航続距離を誇るという。アメリカ車とはいえ幾分かヨーロッパ化されたモダンなラインナップのテスラとは対照的に、アメリカ市場で伝統的に売れ筋のピックアップやSUVの電化を進めるオートモーティブ コンストラクターといえるだろう。

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カリフォルニアという土地柄だからこそ
EVとハイパフォーマンス モデルが際立つ(4)

魅力的な現地専用モデル

ところでハイパフォーマンスとは少しニュアンスが異なるが、ローカル専用モデルも強烈な存在感を放っていた。

例えば、GMCがグリルからテールゲートまで新世代のフルサイズピックアップトラックとしてフェイスリフトした、「シエラ デナリ」の2019年モデルだ。20インチのポリッシュアルミホイールが標準で、クロームメッキがふんだんに使われた威圧的な外観は、どこか日本産ミニバンに通じるところがある。6.2リッターのV8を搭載し、フロア自体が高いキャビンと荷室ベッドを実現しているため、リアゲート裏には開閉式のステップが備わるほどだ。

GMC Sierra Denal

GMC Sierra Denali

加えて、衰えぬピックアップ人気を裏づけるのが、インターナショナルレベルでも知名度の高いジープが復活させたピックアップ、「グラディエーター」だ。クライスラー傘下時代の1988年にディスコンした先代は、「ワゴニア」をベースとしていたが、今回のニューモデルは一新されたアイコンモデルである「ラングラー」に基づく。

ラングラーからホイールベースは50cm近く、全長は1.5メートル以上も伸ばされて5,539㎜にも達するが、725kgの最大積載量を備え、牽引容量は3,470kgにも達する。ドライブトレーンはガソリンの3.6リッターV6の284ps/353Nm+6段MT、または8段ATが主力で、やがてディーゼル3.0リッターV6の260ps/599Nm+8段MTが追加される予定という。サイズ的に市場が限られるのは分かるが、抗いがたい魅力を備えたモデルであることは確かだ。

           
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