LAオートショー プレイバック 後篇|L.A. Auto Show
CAR / FEATURES
2019年1月30日

LAオートショー プレイバック 後篇|L.A. Auto Show

L.A. Auto Show 2018|ロサンゼルス オートショー 2018
LAオートショー プレイバック 後篇

日本車をはじめメインストリーマーも
プレミアム志向をますます強める

2018年末に開催されたロサンゼルス オートショー 2018を訪れた南陽一浩氏による総括。後篇では日本車などを中心に、コンパクトなメインストリーマーたちに注目する。

Text & Photographs by NANYO Kazuhiro

“メインストリーム”のスターは――

近頃はプレミアムや準プレミアム化を掲げるブランドが増え続ける自動車業界では、高級車ではないが経済的理由で選ばれるわけでもないベーシックカーセグメント内のメインボリュームを担うモデルを「メインストリーム」と言い表すことが多い。たいていはジャーマン御三家やレンジローバーやジャガーらなど、もとより販売台数を追わないメーカーを除いた、総合自動車メーカーの普及モデルのことだ。

ちなみにフォルクスワーゲン「ゴルフ」やプジョー「308」は欧州Cセグメントでベストセラーを競う2台ながら、もはやメインストリームというよりプレミアムに移行しつつある。

今回のLAオートショーで、今のところはメインストリーマーとして捉えられているが、プレミアムへの移行を高らかに宣言し、野心的なフルモデルチェンジで注目されたのはマツダ「3」、つまり4世代目の「アクセラ」だ。とくにハッチバックは、2017年の東京モーターショーで発表したコンセプト「魁」(kai)を、忠実に市販モデルに落とし込んだデザインで、耳目を引きつけた。

Mazda 3

Mazda 3

Mazda 3

その特徴は何といっても、プレスラインをぱっきりつけたがるドイツ車とは真逆の、キャラクターライン不在であるかのようなツルリとしたサイドビューだろう。ただしよく見ると、ヘッドライトからCピラーにかけて日本刀のしなりのような柔らかなラインが、控えめに絞られたボディサイドの上に浮き上がって見えるし、太いCピラーからリアフェンダーにかけての面構成とリアドアのチリ合わせには、ジャパンメイドらしい繊細な造りを感じさせる

海外の評価は、面白いことにはっきり好悪が分かれている。「今のアルファロメオができないことをマツダがやってのけた」「レンジローバーがイヴォークで起こした革命を、ハッチバックでやった」という称賛もあれば、「ボディサイドがすっきりし過ぎて味気ない」という不満の声もある。

Mazda 3

ちなみに内装に目を移すと、メーターパネルの端やディスプレイ周辺が中途半端にえぐられたようなダッシュボードの形状は、概してあまり好まれていない。とはいえ、こうした非難も注目を集めているからこそであり、それだけ目を引くデザインとして認められたということだ。

5ドアハッチバックで4,459mm、4ドアセダンで4,662mmの全長は大きいように感じるが、その分、ハッチバックも荷室スペースは立方体に近い形状を誇る。圧縮着火をガソリンエンジンで実現した「スカイアクティブX」パワートレインは、マイルドハイブリッドと組み合わされるようだ。呼称を同じくする新プラットフォーム、「スカイアクティブX ビークル アーキテクチャ」が相対的に目立たなかったものの、ベクタリング制御と組み合わされたAWDシステムも用意される。先代までに世界的な高評価を勝ち得たマツダ3の最新世代はこの後、東京オートサロンやジュネーブにも登場予定で、世界各地を2019年中に走り出すはずだ。

L.A. Auto Show 2018|ロサンゼルス オートショー 2018
LAオートショー プレイバック 後篇

日本車をはじめメインストリーマーも
プレミアム志向をますます強める(2)

電化は前提でデザインに凝るアジア勢

一方、日本車勢でフェイスリフトながら、おおむね好評を得ていたのがトヨタ「プリウス」。PHV版に近づいて少し大人しくなったデザインだが、初期フェイズからの相対的評価と考えれば、決して栄誉というわけではない。むしろAWD版にニッケル水素バッテリーを採用したことで、リチウムイオンバッテリー偏重の趨勢に一石を投じた技術的判断が高く評価されていた。トヨタブースでもうひとつの注目株は「カムリTRD」で、305psの3.5リッターV6ユニットはそのままに、1.5cm低められたボディに、より締め上げられた足回り、フロント328mm径にまで強化されたブレーキを備えた。

アメリカ市場で、とくに独自展開を見せるホンダは、「CR-V」と「パイロット」の間に位置づける本格SUVとして、「パスポート」の名を復活させた。これは90年代初頭、いすず「ロデオ」の兄弟モデルで、ホンダが初めて北米に送り出したSUVモデルの名だったのだ。7シーターのパイロットに対し、5シーターでCR-Vよりもオフロード志向のSUVとして、パイロットはジープ「チェロキー」辺りと競合することになる。

さらにコンパクトなクラスでは韓国の起亜が、北米市場でのヒット作である「ソウル」を3代目へとフルモデルチェンジさせた。ノーズが長く、リアのハッチゲートがほぼ垂直に立てられたボクシーなスタイルで、今世代はとくにEVへの比重を高めてきた。

アメリカの専門誌「hot VWs」の編集長、シンスケ・ワタナベ氏

Volkswagen The Beetle Cabriolet

カリフォルニアはアメリカでも珍しく、海外産のコンパクトカーを受け入れてきた土地柄でもある。往年のホンダ然り、そしてフォルクスワーゲン然り。じつはLAオートショー開幕初日には、メインゲート脇のスペースに「タイプI」をはじめとする旧いフォルクスワーゲンが集まり、いかにもLAらしい光景を作り出した。これはアメリカの専門誌「hot VWs」が主催した「ビートルズ ブレックファスト」というミーティングに、編集長のシンスケ・ワタナベ氏の呼びかけに応じてオーナーたちが集ったのだ。

例のディーゼル問題で、アメリカでフォルクスワーゲンのイメージは一時はひどく悪化したものの、両者の関係はやはり切っても切れないものがある。実際にショー会場内、フォルクスワーゲンブースではカリフォルニアへのオマージュとして、「ニュービートル カブリオレ」のファイナル エディションも展示された。スキャンダルの汚名をフォルクスワーゲングループが濯(すす)ぐことができるかどうかは、カリフォルニアでの成功、ひいては電化からEVへの趨勢をリードできるかどうかにかかっているのだ。

           
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