BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗|BMW
CAR / IMPRESSION
2018年12月14日

BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗|BMW

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗

まさに言葉通りの“駆けぬける歓び”がある

2018年のペブルビーチ コンクール デレガンスでデビューした新型BMW「Z4」。1996年に登場した「Z3」も含めると4代目へと進化した最新のオープン2シーターに、モータージャーナリスト九島辰也氏がポルトガルの首都、リスボンで試乗した。

Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by BMW

SUV全盛の昨今における2シーター ロードスター

およそ20年前、欧州メーカーが2シーターロードスターを盛んに開発していたのを覚えているだろうか。メルセデスが「SLK」を、ポルシェが「ボクスター」を、フィアットが「バルケッタ」なんかを次々とリリースした。いずれも1996、97年あたり。

そしてBMWが送り込んだのは「Z3」。アイルランド出身の俳優ピアース・ブロスナンが演じたジェームズ・ボンドがボンドカーに使ったことでも話題になったモデルだ。個人的にもこのクルマをベースにしたMロードスターを所有していたので思い入れは強い。とにかく、暴れ馬のようなクルマだったことを記憶する。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

今回試乗したBMW「Z4」はその後継として誕生したもので、3世代目となるモデル。20年前とは違うSUV全盛の昨今において2シーター ロードスターは希少な存在だが、ニーズがあるのは確かということだろう。データを見てもSUVマーケットが増殖しているにも関わらず他のカテゴリーはシュリンクしていない。よってメーカーはそれに応えるように2シーター ロードスターを置き去りにせず、しっかり進化させているというわけだ。

新型Z4の国際試乗会は、ポルトガルの首都リスボン近郊で、世界中からメディアを呼んで行われた。時は10月の終わり。西ヨーロッパ北部ではかなり寒くなっているが、さすがにポルトガルは温暖。雪の心配もないということで、ドイツメーカーはこの時期ここを頻繁に利用する。もちろん、オープンカーを走らせるのに気持ちがいい環境であるのは言わずもがなだ。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗

まさに言葉通りの“駆けぬける歓び”がある(2)

メタルトップからコンベンショナルなソフトトップに

新型Z4の特徴はご覧のようにルーフにある。従来のZ折電動メタルトップではなく、ファブリックのソフトトップが採用された。理由は軽量化によるメリットとルーフ収納スペースの有効化。軽量化はダイレクトに走りに直結するし、収納スペースもファブリックの方が場所を取らないのはご想像の通りである。それでも先代を電動メタルトップにしたのは、当時としては画期的な技術だったから。常に最先端のテクノロジーを取り入れるのはカーメーカーとして正しい判断といえる。

ただ、試乗後あることに気がついた。BMWは今回Z4をソフトトップにしなければならない理由が他にもあることを……。

それは兄弟車として世に出ることが決まっているトヨタ「スープラ」の存在。同じプラットフォームとシャシー、パワートレーンを使ったスープラは屋根を固定した2ドアクーペ。となれば電動メタルトップでは開閉用モーターをいくつか付けるだけで、単純にクーペよりも重心が高くなりハンドリングは悪くなってしまう。それではBMWのプライドが許さない。となれば選択肢はソフトトップしかなかったと考えられるからだ。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

もちろん、屋根を固定してしまっては2シーターロードスターで歩んできたZ4の存在意義が変わってしまう。かつてZ4クーペがあったが、それも屋根開きモデルがあってこそ意味があるのだ。

なんて憶測を生むソフトトップの開閉時間はわずか10秒。50km/h以下であれば走行中も稼働できる。しかも、気密性や静粛性は想像以上で、閉じたままだと開閉できることを忘れてしまうほど走りに熱中してしまう。それだけボディ剛性が高いということだ。キャビンがプルプル振動するなんてことはない。そして閉めた時のルーフラインのなめらかさもまた素晴らしい。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗

まさに言葉通りの“駆けぬける歓び”がある(3)

新型3シリーズと共有される新開発のプラットフォーム

試乗したのは「Z4 M40i」。エンジンは3リッター直6ツインパワーターボを搭載する。最高出力は340ps、最大トルクは500Nm、0-100km/h加速は4.6秒だ。要するにこれは今後出てくるであろうMロードスターを除くトップレンジ。新型Z4を象徴するモデルだ。

と同時に、これは現在BMWジャパンのホームページに載っているファーストエディションと同じスペック。ファーストエディションはきっとこのパワートレーンにいくつかのオプションを装備したものだろう。後に2リッター直4ターボのエントリーグレードも導入されるが、予算に余裕があればここを押さえておきたい。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

フロアパネルを含むプラットフォームは新開発。というか、ほとんど同じタイミングで新世代に移行する新型「3シリーズ」と共有する。軽量化にこだわったFR用プラットフォームだ。屋台骨となる3シリーズだけでなく、こうした汎用性も鑑みた設計が特徴と言える。

さて、Z4 M40iだが、名前からも分かるように “M”の手が入っている。専用のフロントチンスポイラー、リアスカート、ディフューザーといったエアロパーツから、Mスポーツブレーキ、Mスポーツディファレンシャルといったパフォーマンス装備までそう。なので、エクステリアはスタンダードモデルよりアグレッシブな印象が増す。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMWの最新オープン2シーター、新型「Z4」に試乗

まさに言葉通りの“駆けぬける歓び”がある(4)

クルマがどんどん煽ってくる

実際に走らせると、見た目以上にスポーティな味付けになっている。デフォルトで乗り心地は硬く、ステアリングに遊びは少なく妙にクイックなレスポンスだった。その分ステアリング操作に集中すると、ワインディングでは舵角一定のライン取りに対しピタッと吸い付くようなコーナリングを見せてくれる。この辺のコントロール性の高さはBMWの得意分野。まさに言葉通りの“駆けぬける歓び”が、ある。

さらにドライブモードに手をやると、彼らの真骨頂が姿を現す。 “スポーツ+”ではドライバーに「もっといけ!」と言わんばかりにクルマがどんどん煽ってくるのだ。具体的には、シビアなステアリングやアクセルレスポンス、なかなかシフトアップしてくれないギアのプログラミングなどによるものだ。

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

BMW Z4|ビー・エム・ダブリュー Z4

そうしたクルマの素性を象徴するのがエキゾーストサウンド。特に4,500rpmからの領域はまさにスポーツカーそのもので、SUVと比較しては申しわけないが、新型「X4 M40i」のとき以上にアドレナリンを分泌させる。そりゃそうだ。なんたって屋根がない分ダイレクトにレーシーなサウンドがエキゾーストから耳に届く。思わず頬がゆるみ、ニヤケてしまう。

もちろん、その状態でワインディングを走るのはかなり楽しい。若干進入速度が速くなろうと、バランスよくクルッと回る。このときのブレーキ性能の高さが奏功していることも付け加えよう。立ち上がりの早いストッピングパワーが安心してアクセルを踏ませてくれる。

以上がポルトガルでのファーストインプレッション。新型Z4はかなり“攻め”のモデルに仕上げられているのが印象的だった。予想以上に。まぁ、“M”の文字のない4気筒モデルはもう少し緩く仕上げられるであろうが、これだけ“走り”を前面に押し出したのは、もしかしたらスープラが関係しているかも、しれない……。

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0120-269-437(平日9:00-19:00、土日祝9:00-18:00)

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