HUBLOT|18金の新合金を開発
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2015年3月26日

HUBLOT|18金の新合金を開発

HUBLOT|ウブロ

ウブロが18金の新合金を開発

金属なのか、それともセラミックなのか?
驚異的な硬度を持ったゴールド

ウブロは完全無欠のマニュファクチュールになろうとしているのだろうか。セラミックの自社生産体制を整え、自社キャリバを作り、そしてついにはケース素材まで開発してしまった。

Text by parametric

SSより硬い、ビッカース硬度1000

時計のケースはプラチナ、金(イエロー・ホワイト・ピンク)、ステンレススチール、チタンがあれば十分だと思うのだが、時計業界はそう思っていないらしい。いろいろな金属を探してきて、時計ケースへの使用を試みる。

例えばウブロ。ジャン=クロード・ビバー氏がCEOに就任する1年前の2003年、タンタル素材の時計を発表している。ビッグ・バン以降、積極的にセラミックを使用しているのはご存じのとおり。その後もタンタル素材やジルコニウムの時計を発表した。

ウブロ以外にも、ハリー・ウィンストンのジルコニウム合金、リシャール・ミルのアルシック、パルミジャーニ・フルリエのパラジウムなど、多くの時計ブランドが珍しい素材を使った時計作りに挑戦している。

「マジックゴールド」で作られたアッパーケース。写真で見る限りピンクゴールドに近い色のようだ。金属光沢があるのでセラミックには見えない。

中にはまったく知らない金属もあるが、レアメタルは希少だし、耐食性に優れているとかアレルギーを起こしにくいとか、メリットはあるのだろう。しかし、ユーザーがその恩恵を受けているかというと疑問である。はたして金額に見合う価値があるといえるか。ほとんどが限定生産なので、その価値はあると思うが……。そんななか、昨年末にウブロが発表した新合金「マジックゴールド」は、非常に興味をそそられる新素材といえるだろう。

この素材、ウブロとスイス連邦工科大学ローザンヌ校のアンドレアス・モーテンセン教授との約3年に及ぶ共同研究により誕生した、超硬質のゴールドだ。炭化ホウ素の多孔質セラミックに、高圧高温で溶解させた金を流し込んでセラミックの孔をふさぎ、ふたつの素材を融合させて作る(炭化ホウ素セラミックは原子炉の制御棒として用いられているという)。

真空溶解炉とビバー氏。この機械は、24カラットゴールドを炭化ホウ素の孔に流し込む前、空気の中で軽く混ぜる時に使用する。

硬度は非常に高い。つまり傷が付きにくいのだ。普通のセラミックに比べると少々低くなっているとはいえ、ビッカース硬度は約1000。サファイアクリスタルより少し低いといったところか。ちなみに一般的な18金のビッカース硬度は約400、時計に使用するステンレススチールのビッカース硬度は約600だ。資料には新合金、つまりあたらしい金属と記してあるが、製法の記述を読むと「金のセラミック」という気がしないでもない。

マジックゴールドの金含有率は重量比で75パーセント、つまり18金だ。セラミックと純金(24カラットの金)では比重があまりにも異なるので体積比は大差になるが、重量での比率はセラミック25に対し純金75。スイスの「Central Office for Precious Metals Control(貴金属管理局)」で18カラットと認定され、現在特許申請中という。早くホールマークを見てみたいものだ。

普通の18金製品のように銀や銅で割っていないので、マジックゴールドの色は黄金色に近いもの1種類かもしれない。時計としての正式発表はバーゼルワールドで行われる予定。どんな質感で仕上がるのか楽しみだ。

           
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