アズ コレクション|ジュエリー・プロデューサー 佐野敦子氏インタビュー
AS collection|アズ コレクション
ジュエリー・プロデューサー 佐野敦子氏インタビュー
アズ コレクションのジュエリー・プロデューサーである佐野敦子さんが考える、“ジュエリー論”とは? そしてその“ジュエリー論”が培われてきた経緯とは? 自由な感性でジュエリーを身に着けるその美学から、ファッションとジュエリーの関係性や、ジュエリーのあらたな可能性が見つかるはず。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
独創性と、ファッションとの融合を求めて
まるで小さな建築物を思わせるかのような立体の美しさ、色石どうしの組み合わせや、地金のコンビネーション。クラシックカーからインスピレーションを受けたシリーズや自然の造形美をモチーフにしたシリーズなど、他のジュエラーとは違う独創性。アズ コレクションのジュエリーを見たときに、誰しもがこのような印象を抱くはずだ。
「私のなかで、ジュエリーはファッションのひとつ。これからは女性だけでなく男性ももっとジュエリーを着けるようになっていくでしょうし、また、そうなるべきだとも思っています」と、アズ コレクションのジュエリー・プロデューサーである佐野敦子さんは語る。
佐野さんとジュエリーとの関わりは幼少のころからはじまった。
「祖母が開いていたサロンに宝石商の先生がいらっしゃっていて。私は小さいころからずっとそこに参加していましたので、その方との出会いによって、“ジュエリーというものは自分で作るべきもの”というふうに自然に考えていたんです。10代のころは、ジュエリーのデザインを語られるよりもテクニック的な観点から語っていただけるほうがインスパイアされる部分が大きくて、その流れから大学生のころにはその先生のもとで製作の勉強をさせていただきました」
ジュエリー製作というある種の男性社会で競争していきながらも、佐野さんのなかで何か別の道――製作ではなくて、もっと“宝石”自体を知りたい、専門にしていきたい、という想いが深まっていった。
「大学を卒業するとすぐにアメリカへ行って、ハリウッドスターの住むマリブ地区でセールスをやったり……もろもろの修行をやりましたね。セールスをしていて感じたのは、突飛なものが売れるわけではなくて、やっぱり手堅いものが売れたりする。でも自分の考えるジュエリーって、そういうことじゃない。もっと洋服を選ぶときとおなじくらいに自由な発想でコーディネイトするものだし、自由なデザインであるべきもの。そんなふうに自分の考えるジュエリーの在り方を考えたときに、もっとそれを形にしたい、みなさんに知っていただきたい、という想いから“ブランドを作ろう”と思いました」
佐野さんの考える“ジュエリーの在り方”とは、やはり幼少時代の経験が大きく影響しているという。
「小さいころ祖母のサロンの場で、ひときわ素敵な女性がいらっしゃいました。どう素敵なのかということを考えたときに、早い話がファッションとジュエリーのトータルバランスがとても良かったんです。季節や洋服によって“なぜこのジュエリーをつけているのか”と語れることが彼女のなかにはたくさんあって、ライフスタイルのなかに自然にジュエリーが溶け込んでいた。ほかのひとのように、枠に縛られていない自由な発想がその方にはありましたね」
メンズジュエリーのあらたな可能性を啓蒙
この5年くらいのあいだに男性たちのジュエリー使いが変わってきていて、これからが更にジュエリーの提案をしていける時期だと佐野さんは語る。
「世代の壁もあると思うのですが、一般的に40代より上の方々はまだキラキラしたものに対する抵抗があるのかもしれませんね。それはやはり、バブル時代にジュエリー本来の美しさを損なうような身に着け方をしてしまったゆえの、そこから生まれる抵抗感と言いますか……そうなるとジュエリーといってもカフスやピンなどの平面的なもの止まりなんですね。30代くらいの方は、日常的にシルバーリングやブレスを、自然に着けていらっしゃいます。その感覚をもった方たちがファッションのスタイルに合わせたジュエリーを自然と手に取る。ビジネスシーンですと立場や役割からなかなか輝きのあるジュエリーを身に着けることにまだ抵抗があるかもしれませんが、あと5年もたつと世代が底上げされることによって、TPOに合わせたより自由なジュエリーづかいを楽しめる時代にもなってくると思いますよ」
また、男性の美意識がどんどん高まりを見せていることにも佐野さんは注目している。
「美しいアート作品に出逢ったときに感動を覚えるように、ジュエリーも良いものに出逢ったときには、やはり心が震えるようなものがある。それは綺麗なもの・美しいものをもっともっと多く見ることによってどんどんと磨かれていく感覚だと思います。美しさに感動すると、自然と視線を奪われたり、触れたいと思ったりする。それはクルマやインテリアとまったくおなじこと。その延長線上にジュエリーもあるのですから、今後はそこに対する男性の意識もより高まっていくはず」
この話からもわかるように、佐野さん自身の審美眼がどのようなものであるか、お察しいただけることであろう。質の高さにこだわりつづけたクリエイションは、アズ コレクションが自負するところでもある。
「とにかく質の良いものが好きですが、質の高さといったときに、素材もあるし、デザインもあるし、売る姿勢ひとつをとってもそうだし……すべてにおいて一流であることを目指してモノづくりをしていますし、それは質の良いものが好きな方々には絶対受け入れられるものだと思っています」
アズ コレクションを立ち上げてから9年間。日本でも少しずつジュエリーがライフスタイルに浸透してきているように感じていると、佐野さんはいう。
「今後も日本でジュエリーが浸透していくような仕掛けを、どんどんしていきたいですね。それと同時に洋服文化の発祥地でありジュエリー先進国と呼ばれる土地で、アズ コレクションがどのように響くのかも楽しんでいきたい。海外でのお披露目もスタートします」
そう語る佐野さんの目は輝く。若きジュエリー・プロデューサーが発信する、ファッションの一部として自由な発想を楽しむジュエリーの世界。今後はこのアズ コレクションからの提案が、メンズジュエリーの今までの概念をガラリと変える――そのような予感をひしひしと感じずにはいられないのである。
アズ コレクション
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