BVLGARI|トップクリエイターに訊く「ブルガリ・ブルガリ」の魅力
誕生から約40年を迎えて──“ダブルロゴ”伝説、第2章へ
トップクリエイターに訊く「ブルガリ・ブルガリ」の魅力(1)
誕生から約40年。時計界の“伝説的なタイムピース”であり、今さらに進化の時を迎えた「ブルガリ・ブルガリ」ウォッチ。その魅力の源泉はどこにあるのか。今回、「ブルガリ・ブルガリ」展の開催にあたり、日本から世界に向けて発信するトップクリエイターの3名、水墨画家の土屋秋恆(つちや・しゅうこう)氏、フラワーアーティストのニコライ・バーグマン氏、そして、グラフィックアーティストの川上シュン氏に、それぞれ独自の視点からその魅力について語って頂いた。
Photographs by TSUKAHARA TakaakiText by SHIBUYA Yasuhito
モチーフは古代ローマの貨幣、世界を魅了したダブルロゴ・デザイン
ブルガリ初の本格ウォッチコレクションとして1977年に誕生した「ブルガリ・ブルガリ」。ブランド名の“BVLGARI”ロゴをベゼルに上下ダブルで刻んだ大胆で革新的なデザインは、世界中のセレブリティの間で圧倒的な人気となり、時計界を驚愕させた。実際、これほどまでにストレートにブランド名を前面に押し出したウォッチは、当時の時計界には存在しなかった。
モチーフとなったのは、皇帝が自らの肖像と名前を入れて鋳造した古代ローマのコインと、ローマ建築物の円柱。ブルガリは、時計のベゼルにロゴを刻むことで、ローマ皇帝が自らの権力を誇示したように、ブランドとアイデンティティーの価値を高らかに世界に向けて宣言したのである。
イタリアのブランドとして、ギリシャ&ローマ文化をジュエリーに大胆に取り入れてきたブルガリらしいこのスタイルは、発表以来現在まで約40年間、不動の定番ウォッチとして愛されてきた。ブルガリという、パワフルでエモーショナルな唯一無二のブランドのパワーを腕時計として身に着ける。その感覚が世界中の男女を魅了し続けてきたのだ。
ルーツは1975年のクリスマス、顧客に配られた幻のデジタルウォッチ
実はこのブルガリ・ブルガリ ウォッチには、コレクションのルーツとなる、幻のふたつのモデルが存在する。そのひとつめは1975年のクリスマス、100人の特別な顧客へのギフトとして企画されたデジタルウォッチ。時はまさにデジタルウォッチの全盛期。デジタル独特の書体、モノクロ液晶による時刻表示が最先端の時代だった。
ロゴを文字盤ではなくケースに刻む。このアイデアを思いつくきっかけはこのデジタルウォッチにあったと、当時のCEOであったジャンニ・ブルガリは述懐している。当時のデジタルウォッチは現在と違い表示部が小さく、ブランドネームを今日のように文字盤に入れることができなかった。そこでケースへの刻印となったのだという。だがこの刻印が顧客たちの目には新鮮に写った。
そしてこの腕時計は密かに評判となり、腕時計コレクション誕生の前奏曲となったのである。
1976年、もうひとつのオリジナルモデル「BVLGARI ROMA」の誕生
1977年誕生のブルガリ・ブルガリ ウォッチ、そのリアルなルーツとなったのは、顧客の声に応えて開発され、1976年にローマ本店で限定発売されたもうひとつのオリジナルモデル、手巻きのシンプルウォッチだった。
ローマ時代の建築物の円柱をモチーフにしたフラットな丸型ケース、バーインデックスに12時と6時にのみローマ数字を使うというシンプルな文字盤に時分2本の針。
1977年に発売されるファーストモデルの基本スタイルは、このモデルですでに完成していた。ただベゼルに刻印された文字は、ダブルのブランドロゴではなく“BVLGARI ROMA”であったことは有名な話。
なおこの幻のオリジナルモデルのロゴは、新生ブルガリ・ブルガリ ウォッチの誕生を記念して今年、世界250本の特別限定モデルとして復活した。ブルガリ・ブルガリのファンにとっては見逃せない逸品である。
誕生から約40年を迎えて──“ダブルロゴ”伝説、第2章へ
トップクリエイターに訊く「ブルガリ・ブルガリ」の魅力(2)
水墨画家、土屋秋恆に映るブルガリの世界
「ブルガリ・ブルガリ ウォッチの歴史とそのデザインは、アーティストの僕にとって非常に興味深いものです。この腕時計の歩みには、僕のアートと同じように“発祥と発展”があります」
そう語るのは、水墨画家を出発点に芸術家としてエキサイティングな活動を展開する、アートやクリエイティブの世界でいま最も注目されている日本人のひとり、土屋秋恆(つちや・しゅうこう)氏だ。
「1977年の登場からこれまでの間にさまざまな変化・発展があるわけですが、その過程で問われるのが個性、そしてオリジナリティー。時計のデザインは時代の空気やお客様との対話、その反響を受けて、進化と発展を遂げていく。その中で何を出発点としてどのように構築していくか、発展の過程で何を変えないか、が問題になる」
水墨画を出発点にした現代アート作品やライブパフォーマンスにくわえて、デザイナーやアートディレクターたちとのコラボレーション活動でデザインにも携わる土屋さん。ロゴマークには特別な興味があるという。
ダブルロゴに、自分たちの価値を確信する。そこに“強さ”を感じます
「ブルガリ・ブルガリ ウォッチの場合、出発点・発祥はローマ帝国のコインであり、デザイン上の個性は“BVLGARI BVLGARI”のダブルロゴだった。ロゴそのものを製品の顔、アイデンティティーにしてしまう。この大胆なデザインは、イタリアのブランドならでは。この個性を半世紀近く貫いてきた。そしてこれからも貫いていく。この強さがすばらしい」
ある意味で唯我独尊ともいえるが、それだけではないブルガリ・ブルガリ ウォッチのデザイン。アーティストとしてその世界に共感と敬意を感じると土屋さんは語る。
「ダブルロゴに込められた“自分たちはこれでいいんだ!という強烈なメッセージ。その一方で、そもそもの時計作りのきっかけが、お客様への感謝を込めたノベルティーだったというのも素敵な話ですね。僕もアーティストとしてこれまで、他人に何と言われても自分の姿勢を変えずにやってきました。作品づくりでは、次はまったく違うことをやりたい、常に思うタイプです」
「でもその一方で、お客様に喜んでほしい、とも思ってコミュニケーションを取りながら製作をするタイプでもあります。どこまで“自分らしさ”を押し出していいのか。ブルガリ・ブルガリ ウォッチが歩んできた今日までのヒストリーはそのことを改めて考えさせてくれますね」
TSUCHIYA Shukou|土屋 秋恆(水墨画家、現代美術家、ステインアーティスト)
1974年生まれ。伯父の影響で水墨画に興味を抱き、高校在学中に南北墨絵会に入門。以後、水墨画家を出発点に、現代アートや仏像彫刻などさまざまなジャンルの芸術に挑戦。枠を超越したアーティストとして、CMやPV製作への参加やデザイナー、アートディレクターとのコラボレーションなど、刺激的な活動を精力的に展開する。いま最も注目されている日本の芸術家のひとり。
誕生から約40年を迎えて──“ダブルロゴ”伝説、第2章へ
トップクリエイターに訊く「ブルガリ・ブルガリ」の魅力(3)
ニコライ・バーグマン、表参道でローマの息吹を感じる
北欧と日本の美意識をミックスした独自のスタイルで、いまフラワーデザイン界でトップを走る気鋭のアーティスト、ニコライ・バーグマン氏。フラワーボックスをはじめとするアレンジメントは、いまや彼の代名詞。斬新な配色はニコライカラーとも呼ばれ、多くの人々を魅了している。そんなニコライ氏に、先日まで表参道ツインショップでおこなわれていた「ブルガリ・ブルガリ展」にて、インタビュー取材をおこなった。
「これだけ多くのブルガリ・ブルガリ コレクションを見ることができるなんて素晴らしいですね。この会場で歴史を感じ、ファーストモデルから最新モデルまで揃っている。これって本当に面白い」
「僕が一番印象に残ったのは、1975年にギフトとして贈られた初代のデジタルモデル。麻紐のストラップが特に良いですね。今年の新作モデルで選ぶなら、ピンクゴールドの限定モデル『ブルガリ ローマ』。ちょっとオレンジだったり、太陽がたくさん当たっているような雰囲気の色合いが、“ローマ”を感じさせます」
デンマーク出身のニコライ氏。フラワーデザインの世界に入ったのは若干15歳の時。彼にとって、時計とはどのような存在なのだろうか。
“ローマ”を感じさせるデザインの妙
「時計はいつも僕の良きパートナー。時を計るという機能としての役割はもちろんですが、己のスタイルを表現するアイテムとしての目的も多分にあります。ただのファッションアイテムとしての存在を越えた、自分の体の一部としてね」
「数ある種からお気に入りの花を選ぶように、ブルガリ・ブルガリにも多くの素材、文字盤のデザインがあります。持つ人を幸せにさせる気持ちへと導いていく。これはブルガリの時計づくりとも共通する点だと思います」
ブルガリ・ブルガリ ウォッチは、1977年の誕生以来、何故、長きに渡って世界中の人々に愛されてきたのか。ブルガリ、ローマ、時計。そのキーワードからニコライ氏が時計の魅力について語る。
「僕はヴァカンスでローマに行く機会が多いんですが、ブルガリ・ブルガリは“ローマ”という雰囲気がすごく出ている。実は今日お話しするまで、ブルガリの本社がまさかローマにあるだなんて知らなかったんです。だけど、この時計を見た瞬間、これは間違いなく“ローマ”が舞台だってすぐに分かりました。暑い夏の中で輝く光の具合や温度を、素材の色合いでとても上手に表現しています。遺跡が街中のいたるところに点在するローマの街並は本当に美しい。古代ローマと現在のローマ。ブルガリ・ブルガリはその両方を楽しめるタイムレスな時計なのではないでしょうか」
Nicolai Bergmann|ニコライ・バーグマン
デンマーク出身。来日後、2000年にフラワーボックスアレンジメントを発表。北欧と日本の美意識をミックスした独自のスタイルで、フラワーアーティストとして一躍世界的な注目を浴びる。2001年に「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」ブランドを立ち上げるなど多彩な活動を展開。今年は初の書籍「ニコライ・バーグマン 花と幸せを運ぶ日常」を出版した。
誕生から約40年を迎えて──“ダブルロゴ”伝説、第2章へ
トップクリエイターに訊く「ブルガリ・ブルガリ」の魅力(4)
川上シュン、1977年に生まれて
「僕はこの時計に、少し運命を感じます」
そう語るのは、“デザインとアート”を横断的に考え、ジャンルに縛られないクリエイティブを続ける「artless Inc.」の代表、川上シュン氏。「ブルガリ・ブルガリ」が誕生した年とおなじ1977年、東京で生まれた。
「かつてアンディ・ウォーホルは、『ブルガリのお店を訪れることは、まるで、もっとも素晴しい現代アートの展覧会に行くようなものだ』と言葉を残しましたが、僕もその通りだと思います。“永遠の美”を追求するブルガリ的美学は、時代とともに革新的な技術を用い、アートのようなアイテムを生み出してきました。『ブルガリ・ブルガリ』もそのひとつです」
歴代のブルガリ・ブルガリが展示された今回のエキシビション、そこにはブルガリ独自の“美学”が感じられたという。
「時代とともに生まれて来たブルガリ・ブルガリの時間軸で見れる経験は、非常に興味深いですね。まるでデザイン性と時代性を想像して発想の起源を探るような、僕が美術館やギャラリーで、アートを見る感覚とおなじ体験を得ることができる」
「旅するように生きたいと思っている僕にとって、1993年に世界の直営33都市のみで販売されたブルガリ・ブルガリの限定コレクション(プラスティックケース×レザーストラップ)は、その都市のクレジット表記とデザインにぐっときましたね。」
約40年間に渡る「ブルガリ・ブルガリ」ウォッチの歴史。川上氏にとって、改めてブルガリの魅力を再発見する機会となったようだ。
川上シュン|KAWAKAMI Shun
アートディレクター/アーティスト。1977年、東京生まれ。artless Inc. 代表。日本の伝統美と現代的感覚、古典技法とテクノロジーを組み合わせるなど、アートとデザインの境界に位置する「芸術としてのデザイン」を探求し、グローバルに活動をおこなう。「NY ADC: Young Gun 6」受賞、「カンヌ国際広告祭」金賞など、国内外で多数の受賞歴をもつ。 http://www.artless.co.jp/
ブルガリ ジャパン株式会社
Tel. 03-6362-0100
http://jp.bulgari.com/