ベル&ロスのジェネラル・マネージャーが語る、最新作およびブランド哲学|Bell & Ross
Bell & Ross|ベル&ロス
アビエーションからダイバーズまで。
領域を拡大する“プロに向けた計器”(1)
Bell & Rossといえば、アビエーションモデルを思い浮かべるファンが多いかもしれない。たしかに、Bell & Rossのスタイルアイコンでもある、スクエアケースのBRシリーズは、飛行機のコクピット内計器をモチーフとしたものである。しかし、ブランドは空に留まることなく、陸へ、海へと領域を拡大する道を選んだ。2017年の新作ダイバーズウォッチ「BR 03-92 ダイバー」を披露するために来日したBell &Ross ジェネラル・マネージャー、ファビアン・ドゥ・ノナンクゥール氏に話を聞いた。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
新作ダイバーズローンチイベント「WATCH BEYOND feat. DIVER」を終えて
――このイベントでファビアンさん直々に来日して伝えたかったことを改めて教えてください。
やはり目的としては、昨日のDESIGN小石川で行なったローンチイベントでした。Bell & Rossにとっては、10年振りの新作ダイバーズになります。10年という長い期間を経て、発売するに至ったモデルであることを、皆さんに直接お伝えしたかったんです。
すなわち、Bell & Rossのフィロソフィーを象徴するスクエアケースのダイバーズウォッチであることです。
――なるほど。
Bell & Rossというと、アビエーションウォッチの印象が強いかもしれませんが、それとは違う観点からのブランドの“いま”をお伝えしたかった。それは、挑戦する姿勢です。
昨年はルノーとのコラボレーションを通じて、モーターレース界に進出しました。そして今年は舞台を海に移し、挑戦を続けています。異なる環境下でも、ブランドは共通した哲学を持っています。
「BR 03-92 ダイバー」は形式的なスペックを満たしたダイバーズウォッチではなく、実際に海に潜るプロに向けたものであって、国際基準を満たし、過酷な海底空間でミッションをこなす人に向けてつくられています。
そうした厳しい基準に適合するために生まれたデザインがクールなのであり、洗練されているものと我々は確信しています。
――正方形というBRシリーズのデザインフィロソフィーは、航空機のコックピットの計器からインスパイアされています。それが、陸でも、海でも等しく貫かれるには、どういう背景があるのでしょうか?
2人の創業者によってBell & Ross が設立したときに、「過酷な環境で働くプロフェッショナルに向けた時計づくり」というコンセプトが第一にありました。そのときからイメージにあったのが
飛行機のコクピットです。飛行機のコクピットには、時計づくりにおいて非常に重要な要素が盛り込まれているからです。
・視認性……ひと目で複雑な情報を読み取らせる
・機能性……有用な情報を文字盤に整理して収める
・高精度……搭載する機械が正確で、誤差が十分に少ない
・防水性……機能と用途に応じた最適な防水性能
コクピットの計器は、私たちの時計づくりの基本です。それをストレートに示したのが「BR」シリーズ。計器をそのまま腕に載せたらどうなるだろう? というアイデアですが、実際にやってみると、これほど情報を読み取りやすいものはなかった。
そして現在、BRシリーズは時計業界のなかでもアイコンのような存在になりました。スクエアケースの代名詞として、すぐに思い出してもらえるようなアイテムになっています。
Page02. 角型ケースは、防水性能では不利?
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アビエーションからダイバーズまで。
領域を拡大する“プロに向けた計器”(2)
角型ケースは、防水性能では不利?
――しかし防水面を考えると、角型ケースは構造上不利です。ねじ込み式ケースバックを使えませんから。それを、どのようにクリアしたのでしょう?
ひとつはねじ込み式リュウズ。ふたつめはサファイアガラスの厚みの調整です。風防は通常モデルで1.5mmですが、このモデルでは2.85mmとしています。ケースバックについては通常よりも1mmアップです。
また、加工精度を一段と高めるべく調整に当たっています。こうしてケースバックをねじ込み式にできない弱点を、他所でカバーしました。
――加工精度については、このモデルだけに特別な何かをしているのですか?
通常モデルと同じです。BRシリーズはすべて100m防水をうたっています。ですから、ノーマルモデルについても十分な防水性能を有していますが、その延長線上でこのモデルが誕生しています。
――ということは、もともとの設計が非常に精巧にできているのですね。
その通りです。新規開発といっても、すでに「BR 03」という高スペックなレギュラーラインがあり、その他にもノウハウを積んでいます。Bell & Rossは「ハイドロマックス」(1997年リリース)で1万1100m防水をクリアし、当時の世界最深記録を樹立しました。その後も「BR 02」(2007年リリース)では、3針で1000m防水を実現。こうした積み重ねがあるのです。
機能美の追求は、高級時計界に必要?
――機能美を追求することがなぜ、高級時計界に必要とされるのかを教えてください。
プロフェッショナルたちの使用に耐える時計づくりとは、無駄な要素を削ぎ落とすことです。それが結果としてデザインとしても機能としても非常にユニークなものになると考えています。
ディレクターのブルーノ・ベラミッシュも、「無駄なものは一切要らない。すべての要素に存在理由があるからこそ、デザインが生きる」と、申しています。
たとえば、この秒針の先端に付いている丸い部
分。これはただの飾りではありません。実際にダイビングする人ならご理解いただけると思いますが、潜ったときに時計が実際にちゃんと動いているかどうかは、瞬時にわからないと怖いのです。そのために大きなドット形状が生まれています。このディテールひとつをとっても、機能追求により生まれたデザインこそが真にユニークであり、面白さにつながると思っています。
――今後のブランドのビジョンを教えてください。
ブランドを設立して以来、一貫して揺らぐことのなかったDNAを、これからもしっかりと守り抜くことを約束します。ただそうは言っても現状に満足せず、新しいチャレンジをしたいとも思っています。
その姿勢を示すのが、「WATCH BEYOND」というキーワード。この言葉を軸に、陸、海、空それぞれの分野においてBell & Rossらしさを表現していきたいと考えています。
BR 03-92 ダイバー
ムーブメント|自動巻き。キャリバーBR-CAL.302
ケース素材|SS
ケースサイズ|W42mm☓H42mm
ブレスレット|ウーブン ブラックラバーとブラックの
ヘビーデューティ仕様シンセティックファブリック
防水|300m
価格|45万円(税別)
ファビアン・ドゥ・ノナンクール
Bell & Ross ジェネラル・マネージャー
2010年1月に入社。タグ・ホイヤー社にて14年間のキャリアを積み、アイウェアーと時計部門のジェネラル・マネージャーを務めた。アジア地域で4年間を過ごしたことから強い国際感覚と経験を持ち、日本とアジア太平洋地域における市場開拓の任務を担う。2017年3月15日よりインターナショナル・セールス・ディレクターのポジションに加え、ジェネラル・マネージャーも兼務。
オールブルー
Tel.03-5977-7759
http://www.bellross.com