若干20歳、無名の4ピースバンドに用意された最高の舞台

2007年2月、モード界の寵児Hedi Slimane（エディ・スリマン）率いる「Dior HOMME」最後のコレクションを飾ったのは若干20歳の4ピースバンドTHESE NEW PURITANS（ジーズ・ニュー・ピューリタンズ）によるサウンドトラックだった。たった一枚EPを発表しただけの無名バンドの大抜擢、さらにモデルとしてランウェイにまで登場したのだから、たちまち彼らに注目が集まったことは言うまでもない。

そんなジーズ・ニュー・ピューリタンズが2008年のデビューアルバム『Beat Pyramid』以来2枚目となるニューアルバム『Hidden』を1月13日（水）リリースする。

まさに“Attack Music”、攻撃的な音楽なんだ──Jack Barnett

13人編成の木管・金管バンド、2本のクラリネットにアルトフルート、ブラスクラリネット、バスーン、コントラバスーン、フリューゲルホルン、バリトンホルン、トロンボーン、ベーストロンボーン、チューバ……そして合唱隊。クラシックの要素を織り交ぜ、SEを効果的に配することでサウンドに奥行きとストーリーが生まれる。

ボーカルのJack Barnett（ジャック・バーネット）いわく「ブリトニー・スピアーズの力強いポップサウンドと金管や木管アンサンブルから得られるメランコリー、その対比を表現したかった」。まさに彼の狙い通りの仕上がりといえるだろう。

そして今回この世界観を表現するためにフォーリーテクニックと呼ばれる技術が導入された。この手法は、音響シアターの世界で好んで用いられ、映画の世界でもよく使われている手法だ。

「映画のサウンドトラックって、CDにはないシャープで歯切れのいい音質だなぁって思っていたんだ。あの質感がどうしても欲しかった。曲名にもしているけれど、まさにAttack Music、攻撃的な音楽なんだ」とジャック。

『Hidden』というひとつの壮大な物語

幸福感に満ちた穏やかな「Time Xone」のはじまりから一転、高さ180cmという巨大和太鼓のベースにナイフが空を斬る音、ミステリアスなボーカル「We Want War」が暗雲立ちこめる混沌とした世界へと情景を変貌させる。7曲目の「Orion」では聖歌隊を思わせる重厚なハーモニーが力強く響き、チェーンを引きずる音やドアを叩く音がこの不気味な情景をより鮮明に物語る。そして迎えるエンディング「5」ではこれまでのスリリングな展開がうそのように、空にまたたく星のような金管バンドのリズムにフルートの音色、壮大なトロンボーンの調べが静かな夜が訪れを感じさせ、そっと眠りにつくようにこの『Hidden』という物語は完結する。

巧妙に構成されるサウンドソース、圧倒的な完成度の高さ、そして一貫したストーリー……これがまだ2作目だというのだから驚きだ。息つく暇のないスピード感に衝撃の展開、誰しもがあっという間に引き込まれてしまうだろう。巷に氾濫するサウンドに飽きてしまったという方、ならばジーズ・ニュー・ピューリタンズの音楽をお薦めしたい。必ずやあなたの概念を覆してくれることだろう。

DOMINO / HOSTESS

『Hidden』
THESE NEW PURITANS

発売日｜1月13日（水）
価格｜2490円

1. Time Xone
2. We Want War
3. Three - Thousand
4. Hologram
5. Attack Music
6. Fire - Power
7. Orion
8. Canticle
9. Drum Counts - Where Corals Lie
10. White Chords
11. 5
12. We Want War (Brass & Woodwind / Alternative Ending)※
13. Hologram (Alternative Mix)※
※ボーナストラック

THESE NEW PURITANS｜ジーズ・ニュー・ピューリタンズ

Jack Barnett｜ジャック・バーネット
（vo／g／computer／sound）
George Barnett｜ジョージ・バーネット
（ds／tapes／per）
Thomas Hein｜トーマス・ヘイン
（b／sampler／backing vo／per）
Sophie Sleigh-Johnson｜ソフィー・スレイ-ジョンソン
（synth）

伝説的ポストパンクバンド「The Fall」の曲名からその名を取った4人組のバンド、ジーズ・ニュー・ピューリタンズ。2006年にデビューEP『Now Pluvial』をリリースし、『NME』の「COOL LIST」にランクイン。その後エディ・スリマン最後のコレクションとなったDior HOMME 07AWのためオリジナルサウンドトラックを提供、メンバーの一部はランウェイにモデルとして立ち大きな話題となった（ジョージ・バーネットは「GUCCI」や「Dris Van Noten」といったハイブランドのコレクションに出演するなどモデルとしても活躍）。08年にデビューアルバム『Beat Pyramid』をリリース。スタイリッシュなサウンドと独特な世界観からカルト的人気を確立。同年夏にはサマーソニック08に出演し、ここ日本でもさらに知名度を広げた。