MOVIE|マインド・コントロールの苦しみから逃れるためにもがく2週間『マーサ、あるいはマーシー・メイ』
MOVIE|マインド・コントロールの苦しみから逃れるためにもがく2週間
自らの妄想に脅かされる女性を描いた『マーサ、あるいはマーシー・メイ』
カルト集団から逃走した女性がマインド・コントロールから逃れようとするものの、心に深い傷を負ったがゆえに、妄想と現実の間でもがき苦しむ2週間を描いたサスペンス。『マーサ、あるいはマーシー・メイ』が、2月23日(土)からシネマート新宿ほか全国順次ロードショーとなる。
Text by YANAKA Tomomi
あの“オルセン姉妹”の妹が体当たりの演技を披露
1994年の設立以来、ナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』など良質な映画を提供しつづけ、映画ファンの支持を獲得してきたスタジオ「フォックス・サーチライト」から、またも深い恐怖が観る者の気持ちをえぐるようなサスペンスが誕生した。
監督を務めたのは、新世代のインディペンデント映画を牽引する新鋭であり、本作が長編デビューとなるショーン・ダーキン。彼の友人の体験をもとにし、「マインド・コントロールから逃れるためにもっともつらい最初の2週間に焦点を当てよう」と、脚本も担当した。
主演のマーサはこちらも新人のエリザベス・オルセン。ドラマ『フルハウス』の出演やセレブリティとして知られる、アシュレー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンを姉にもち、ニューヨーク大学で舞台を学んでいたという彼女。今回の体当たりの演技が大きな話題となった。また、カルト集団のリーダーをジョン・ホークスが演じるなど、演技派俳優たちによる鋭い演技にも注目だ。
カルトからの脱走を果たしたものの、逃れられない心の呪縛
家族の愛情を求めてカルト集団に入信したマーサ。リーダーのパトリックからマーシー・メイというあたらしい名前を与えられ、仲間たちとの共同生活にはじめての安らぎを感じていた。
しかし、2年後の20歳の夏、彼女はコミューンからひとりで脱走。唯一の家族である姉のもとに身を寄せた。安全な暮らしに戻ったものの、心にはカルト集団での記憶が蘇り、彼女は何かにおびえつづけている。自給自足の日々、リーダーから捧げられた歌、そして“浄め”の儀式。マーシー・メイの妄想がやがてマーサの現実の世界を少しずつ侵してゆき、サマーハウスでのにぎやかなパーティの日に何かが爆発する──。
ごく普通の人間でも陥ってしまう心の闇にリアルに迫る本作は、2011年のサンダンス映画祭の監督賞をはじめ、同年のカンヌ映画祭の「ある視点部門・若者の視点賞」など数多くの賞を受賞。現代社会で自分を見失い、居場所と役割を求めてさまよう若者の真実に迫る衝撃作だ。