MOVIE|“チェルノブイリ”の10年後を描く『故郷よ』
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2014年12月10日

MOVIE|“チェルノブイリ”の10年後を描く『故郷よ』

MOVIE|事故から25年、立ち入り制限区域で撮影されたはじめてのドラマ

“チェルノブイリ”の10年後を描く『故郷よ』

チェルノブイリの原発事故の悲劇を、圧倒的なリアリティで描く『故郷よ』。2月9日(土)よりシネスイッチ銀座で公開、全国順次ロードショーされる。

Text by YANAKA Tomomi

主演はウクライナ出身のボンドガール、オルガ・キュリレンコ

旧ソ連、ウクライナで1986年4月に起きたチェルノブイリの原発事故。そのわずか3キロ先の隣町プリピャチで幸せに暮らしていたひとびとの人生は突然、事故にのみこまれる。それでも故郷を想い、生きていく姿を描いた『故郷よ』が、日本でも上映される。

監督は本作が長編劇映画デビューとなる新鋭の女性監督ミハル・ボガニム。当事者への入念なリサーチをもとに、脚本も執筆した。これまでチェルノブイリの原発事故についてのドキュメンタリーは数多く制作されてきたが 、劇映画としてはじめて立ち入り制限区域内での撮影に成功。事故当時の様子が忠実に再現されている。

主演は『007 慰めの報酬』でボンドガールを演じ、一躍注目を浴びたウクライナ出身のオルガ・キュリレンコ。本作への出演を切望した彼女は「美しすぎる」という理由で起用を躊躇するボガニム監督を自ら説得、体当たりの演技を見せている。

MOVIE|故郷よ 02

ウクライナ出身のオルガ・キュリレンコ(中央右)

結婚式の途中で駆り出され、二度と戻ってこなかった新郎

1986年4月26日、チェルノブイリの隣町プリピャチ。春輝く日に、美しき花嫁アーニャは最愛のひとと結婚式を挙げ、その幸せをかみ締めながら『百万本のバラ』を歌っていた。しかし、原発事故が起こる。新郎は式の途中に「山火事の消火活動」といって駆り出され、二度と戻っては来なかった。

原子力発電所の技師アレクセイは、いちはやくことの重大さを悟るが、真相を告げることもできず、降り出した雨に濡れないよう道行くひとに傘を配ることしかできない。そんななか、強制退去命令が下り、街のひとびとは何も教えられないまま散り散りとなる。アレクセイは妻と幼い息子のヴァレリーを避難させた後、そのショックから消息を絶ってしまう。

そして10年後。あの日の花嫁アーニャはツアーガイドとして故郷にとどまり、技師アレクセイは故郷を見失って終わりのない放浪の旅をつづけていた。

MOVIE|故郷よ 03

母親に「父さんは死んだ」と教えられ、別の土地で育った息子ヴァレリーはいまも生きていると信じる父を探しに故郷プリピャチに戻り、生きている痕跡を探して街を歩くのだ。

東日本大震災前に撮影されていた本作。しかし、そこに重なりあうのはフクシマの姿だ。穏やかで緑あふれる故郷が一瞬にして、放射能の街になってしまう恐怖と、しかしそのなかでもたくましく生きようとするひとと自然。この心揺さぶるドラマは、いま日本に住むわたしたちに何を伝えてくれるだろう。

MOVIE|故郷よ 04

『故郷よ』

2月9日(土)よりシネスイッチ銀座ほか、全国順次ロードショー

監督・脚本|ミハル・ボガニム

出演|オルガ・キュリレンコ、アンジェイ・ヒラ、イリヤ・イオシフォフ、セルゲイ・ストレルニコフ

配給|彩プロ

2011年/フランス、ウクライナ、ポーランド、フランス/108分

© 2011 Les Films du Poissons

           
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