ARグラスを装着して情報の海にダイヴせよ 『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』
LOUNGE / FEATURES
2026年2月24日

ARグラスを装着して情報の海にダイヴせよ 『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』

 

GHOST IN THE SHELL THE EXHIBITION|攻殻機動隊展 Ghost and the Shell

 
都心の大規模再開発が進む中で最も注目すべき施設が、虎ノ門ヒルズステーションタワーの45階に生まれたTOKYO NODEである。そこではアートとテクノロジーの未来を体感できる先鋭的なプログラムが用意されており、今年最初に催されているのが『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』だ。2029年の東京を舞台とした作品世界と現実世界が交錯する、刺激的な空間に身を委ねてみよう。
 

Text by KAWASE Takuro

作品世界と見事にリンクするTOKYO NODEが会場に

 
昨年11月に渋谷ヒカリエで行われたMUTEK JPでアナウンスされていた、攻殻機動隊シリーズを横断する大展覧会がいよいよ開幕した。プレビューに当たってまず驚かされたのが、集められたメディア関係者の多さである。報道系からカルチャー系、アート系、テック系、ファッション系、さらには外国メディアまで、多種多様なジャーナリストやライターが虎ノ門ヒルズステーションタワー45階に詰め掛けた。
 
入場整理が行われ、順繰りに案内された部屋の正面には巨大スクリーンが配置され、背後にも縦長のスクリーンが立ち並ぶ。さらに壁面には作中の名シーンや名キャラクターが浮遊するように映し出されている。何より圧巻なのは、高さ15mにも及ぶ天井から降り注ぐ無数のケーブルで、ファンならお気づきであろうが、劇中に登場する有線接続のシーンを表現している。
 
来場者の頭上に迫る無数のケーブルと神経のように複雑に絡み合う鉄線が織りなす巨大オブジェは、『“知の遺跡” “World Tree: Ghost and the Shell”』と名付けられたデザイナー・美術作家の寺山紀彦氏による作品。
 
まさにサイバーパンクな雰囲気に包まれていると、ステージが照らし出され司会者が登場。本展の仕掛け人4名が登壇し、トークセッションが開始された。押井守監督による最初の映画作品が公開された1995年から昨年で30周年を迎えるにあたり計画されていた、全アニメシリーズ横断をコンセプトとした大規模展覧会の全貌が明らかとなった。それでは各登壇者のコメントともに本展のハイライトをピックアップして紹介していこう。
 
本展覧会の制作幹事でプロデューサーの笹大地氏(講談社)
 
:アニメ作品を手掛けているプロダクション・アイジーさんと話をする中で、30年に渡る膨大な資料が眠っていることが分かりました。そこで、ここにいらっしゃる三浦さんに相談したところ、クリエイティブの最前線にある攻殻機動隊という作品とKDDIさんが持つ最先端技術を組み合わせることでこれまでにない先進的な展示ができるのではないかということで意見が合致しました。ですが、会場がまだ決まっておりませんでした。そんな時にTOKYO NODEのこけら落としとして開催されたライゾマティックスさんの展示や桑名さんが手掛けられた蜷川実花さんの展示を拝見しました。まさに作品が持つ先進的なイメージとTOKYO NODEという会場の素晴らしさが共鳴すると思い、本会場での開催に至ったという経緯でございます。
 
総合ディレクターを務める桑名功氏(森ビル/TOKYO NODE)
 
桑名:このギャラリーAには8台の端末が並んでいますが、アニメシリーズの全シーンを閲覧していただける検索エンジンを作り、皆さんが好きなシーンを探し出していただきます。そして、そのシーンがどのように作られたのかということを次のギャラリーBでご覧いただけます。ここでは今回のコンセプトに合わせて厳選した1600点の原画の実物を展示しており、アナログレコード屋さんでお気に入りの一枚を探し出すように、アニメーションカット袋から原画を探し出す体験ができる場所にもなっています。デジタルとアナログの両方で皆さんが好きな攻殻機動隊をディグしてほしいという想いで、全ての情報を詰め込みました。
 
本展でまず体験すべきは、アーティスティック・ディレクターの松山周平氏が手がけた「巨大電脳ネットワークビジュアライザー “Nerve Net”」だ。
 
約1,000平方メートルの大空間には、制作過程のコンテや精緻に作り込まれた劇中の背景画が多数展示されている。
 
「データの海を泳ぐ ”Digital Dig”」 と題されたコーナーでは、実際のアニメーターのデスクトップをそのまま展示したかのように設えてある。
 
「手で掘り起こす記憶 "Analog Dig"」のコーナーではカット袋に封入された貴重な原画から、実際に手を動かしながらお気に入りの1枚ずつ見つけることができる。
 

電脳化を擬似体験できる特別なARデバイスを用意

 
先進的な取り組みをやってこそ攻殻機動隊であろうというファンの期待に応えるかのように、本展覧会のために特別に開発されたのが「電脳VISION」である。2029年の東京を舞台とした作品世界で描かれていたデバイスが、2026年のAR(拡張現実)技術によって現実のものとなったことに感動を覚えるはずだ。
 
このデバイスを着用するとタチコマが会場内をナビゲート。目の前にある現実の展示物にさまざまな情報が加えられていく。
 
会場内にいくつかあるポイントに設置されたパネルを読み込むと、それぞれ異なるプログラムが起動する。
 
電脳VISION統括プロデューサーの砂原哲氏(KDDI)
 
砂原:X REAL社のAir 2 Ultraをベースに開発したARグラスを、電脳VISIONと命名しました。こちらをかけていただくと、皆さんを90分間電脳化できるという設定になっています。会場に1600枚の制作資料があるのですが、そのうち厳選された21シーンに関して、S.A.C.シリーズに出てくる可愛いタチコマがナビゲーションをしてくれるというコンテンツに仕上げております。SAC_2045シーズン2のラストシーンを現実の夜景ごと体験いただけますので、どうぞ皆さんご期待ください。
 
昼間は遮光して閉じられた空間になっているギャラリーBだが、夜間になると大都会のダイナミックな夜景が楽しめるスペースに変化する。電脳VISIONを使えば、主人公の草薙素子が今まさにダイブするかのような名シーンが立ち現れる。
 
昼間は遮光して閉じられた空間になっているギャラリーBだが、夜間になると大都会のダイナミックな夜景が楽しめるスペースに変化する。電脳VISIONを使えば、主人公の草薙素子が今まさにダイブするかのような名シーンが立ち現れる。
 
 

ジャパニメーションを超え、日本を代表するコンテンツへ

 
グローバルライセンスプロデューサーの三浦伊知郎氏(KDDI)
 
世界的な評価が高いことも攻殻機動隊シリーズの大きな特徴であるが、本展の海外巡回を予定しているという。グローバルライセンスプロデューサーの三浦氏がその意気込みを語った。
 
三浦:講談社さんも含めて3年ほど交渉していく中で、攻殻機動隊は世界に通用する作品であり、日本を代表するIPだということを再認識しました。本展を皮切りに日本のアニメ文化やIPをどんどん世界に出していく、さらには日本人もどんどん世界に出ていけることをやっていきたいという想いで海外巡回に取り組んでいます。現時点で海外からものすごい数の問い合わせが来ており、北米、ヨーロッパ、アジア、中東といろんな地域での開催を予定しています。もうこれしかないという覚悟で、2026年の東京発のコンテンツとして世界に問いかけたいです。
 

日本を代表するクリエイターとの豪華コラボ作品も展示

 
《Sexy Robot_The Ghost in the Shell type 1》©︎Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA©︎Shirow Masamune / KODANSHA
 
全シリーズを横断する膨大な資料と電脳VISIONだけでも圧倒される内容となっているが、さらに本展に奥行きを持たせているのが、国内外の多様な現代アーティストとのコラボレーション作品の展示だ。原作者である士郎正宗氏と往復書簡を送り合うほど親交が深い現代美術家の空山基氏へオファーし実現したインスタレーションは必見だ。その他、ファッションシーンの最前線で活躍する森永邦彦氏のブランド『アンリアレイジ』とのコラボなど、攻殻機動隊の作品世界を反映した作品が会場の随所に設置されている。
 
《SCREEN》ANREALAGE 森永邦彦
 

展覧会を締め括るのはファン垂涎のオフィシャル&コラボアイテム

 
古着店などでブート品が高騰している中で、オフィシャル品を手にすることができるまたとない機会でもある。
 
展覧会で味わった感動を日常に持って帰りたいと思うファンのため、オフィシャルグッズが充実しているのも本展の魅力のひとつ。コラージュアーティストである河村康介氏が手がけたグラフィックをはじめ、諸般の事情で商品化されなかった名シーンの数々がTシャツとなって販売されている。また、ワコマリア、ブレイン・デッド、ハトラといった人気ファッションブランドやG-SHOCKとのコラボレーションなど圧巻のラインナップとなっている。
 
フルラインアップで150種類もの商品が用意され、会期中に随時投入されている。中には百万円を超えるアート作品も!
 
かつてない物量で展開するミュージアムショップに加えて、会期中にはさまざまなジャンルのアーティストやクリエイターによるトークセッションや音楽イベントが用意されていることも付記しておこう。作品の舞台となった2029年の東京が2026年にどれほど現実となっているのか? その目でしかと見届けよう。
 
攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
会場|TOKYO NODE GALLERY A/B/C
東京都港区虎ノ門 2-6-2(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F)
2026年4月5日(日)まで開催中
©︎士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会
攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL
©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE
 
問い合わせ先

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell

 
 
Photo Gallery