TRAVEL|伝統と革新の英国ロイヤル文化を巡る旅 Chapter 1
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2015年3月5日

TRAVEL|伝統と革新の英国ロイヤル文化を巡る旅 Chapter 1

特集|伝統と革新の英国ロイヤル文化を巡る旅
Chapter 1:ロンドンから日帰りで愉しむレールトリップ

豪華列車「ブリティッシュ・プルマン」で訪ねる英国田園風景 (1)

世界で最も古い鉄道の歴史を持つイギリスは、19世紀初頭に蒸気機関車が誕生して以来、華やかな大陸鉄道の時代が幕を開けた。かつて、パリとアジアの玄関口であるイスタンブールを結ぶ長距離豪華列車として誕生した「オリエント急行」は、現在も豪華列車として、旅人たちの注目を集めている。英国を疾走するオリエント急行「ブリティッシュ・プルマン」は、ロンドンを起点にケント州のカントリーサイドを巡り、全長274kmを約4時間半で戻ってくる人気列車のひとつだ。

Photographs by MATSUI HiroText by AKIZUKI Shinichiro(OPENERS)

それはまるで動く宮殿かのよう

エリザベス女王の即位60周年にはじまり、夏季ロンドンオリンピックの開催と歴史的にも重要となるイベントを迎えた2012年のイギリスは、昨年のウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウェディングにつづき、かつてないほど注目が集まった1年だった。今年6月におこなわれた即位60周の記念式典「ダイヤモンド・ジュビリー」は、英国王室の伝統と格式を現代に受け継ぐものであり、テムズ川を舞台に約1000艘の船やボートが航行したその様子は、まさにダイナミズムとエレガンスを極めたロイヤル文化を象徴するものといえる。

だが、そんなトラディショナルな部分を大切に重んじながらも、常に先進性を持ち合わせているところこそがイギリスの魅力でもあり、世界の人々に注目され愛され続ける理由だろう。例えば、ロンドン市内をちょっと見回しただけでも、欧州で最も高い建築物「シャード」や、オリンピック開催に合わせて建設されたねじれた形が特徴の展望タワー「アルセロール・ミッタル・オービット」など、かつては想像できなかった近代的建築物が立ち並ぶ。

かつての“まずいイギリス”も少しずつ変化を遂げている。外食産業が洗練されはじめ、ここ数年ではミシュラン・レストランガイドの星を獲得するレストランも増えているのだ。そしてもちろんホテルも時代を超えてモダンな佇まいに。各国王族、政治家などに愛されてきた伝統ある名門も、あらたな挑戦を忘れてはいない。

そんな魅力溢れるイギリスを今回は「伝統と革新の英国ロイヤル文化を巡る旅」と題し、4回の連載に分けてお伝えしたいとおもう。第1回目は、豪華列車「ブリティッシュ・プルマン」に乗り、英国田園風景を満喫する。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

イギリスにおける鉄道の歴史は、19世紀初頭にイギリス人発明家のリチャード・トレビシック氏によって開発された蒸気機関車とともに幕を開けた。パリとアジアの玄関口イスタンブールを結ぶ長距離豪華列車「オリエント急行」が運行を開始したのは1883年のこと。すべてに贅を尽くした列車は“動く宮殿”と呼ばれ、いまもなお多くの旅人を魅了しつづけている。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

オリエント・エクスプレスの英国を疾走する歴史的列車ブリティッシュ・プルマンは、ロンドンを起点に、ケント州のカントリーサイドを巡り、274kmを約4時間半で戻ってくる人気列車のひとつだ。

出発駅となるのは、ロンドンのヴィクトリアステーション。ブリティッシュ・プルマン専用の待合室は、慌ただしく発着する普通列車のホームから離れた1-2番線ホーム横に設けられており、レセプションでレザーケースに入ったチケットが手渡される。待合室には列車の出発を待ちわびる乗客で賑わい、使用される列車と同じ年代のファッションをまとった女性たちが場を華やかに彩る。まるで、かつての貴婦人たちを魅了し異国の地へと旅立たせたオリエント急行の面影をそのままに。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

入線してきた列車は全11両編成でもちろん全席指定。それぞれ20席から26席あり、4人用個室もしくは2人用テーブルがあるオープンサロンに乗車することができる。現在も運行に使用されている客車は、丹念に修復された1920~30年代のオリジナルの客車であり、華やかな当時の雰囲気そのままに、豪華列車の旅が楽しめる。レセプションで渡されたチケットを照らしながら乗車する客車を探し歩くと、出迎えてくれるのは真っ白な制服の出で立ちのスチュワートたちだ。客室へと導かれ、いつしか気分は英国紳士である。汽笛が鳴ると、列車は定刻通り正午前の11時45分にゆっくと走り出し一番線のホームを後にした。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

特集|伝統と革新の英国ロイヤル文化を巡る旅
Chapter 1:ロンドンから日帰りで愉しむレールトリップ

豪華列車「ブリティッシュ・プルマン」で訪ねる英国田園風景 (2)

誰もがプリンセスになれる旅

11の客車には、それぞれに名前とエピソードがある。例えば、Perseus(ペルセウス)号は、王室御用達の列車として指定され、1965年にはイギリス元首相のウィンストン・チャーチルの葬送列車としても使用された。また、Zena(ゼナ)号は、「オリエント急行殺人事件」の著者であるアガサ・クリスティを主人公にした映画「アガサ」の撮影シーンにも登場している。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

今回乗車したGwen(グウェン)号という客車は、かつてロンドンとブライトン間を行き来した食堂車であり、1950年代には、エリザベス女王やエリザベス皇太子も利用していたという。ヴィクトリア様式をふんだんに取り入れた客室は格式高く、英国王室ゆかりの列車であるということが随所から伝わってくる。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

走り出してしばらくすると、スチュワートが各テーブルに挨拶を交わしながらグラスにシャンパンを注ぎはじめる。いつしか列車はロンドン市内を離れ、車窓からの眺めはのどかな田園風景へ。イギリス南東部へとその進路を進めるブリティッシュ・プルマン。純白のテーブルクロス上には、美しい銀食器と輝くクリスタルガラスが優雅にセッティングされ、熟練したシェフが手がけるフルコースの料理に、専属ソムリエによって選ばれた至高のワインのサーブがはじまる。フルコースのメインはポートワインのソースを添えたサーモンのソテーが用意され、ゆったりとした時間の流れとともに、洗練された優雅な美食の空間が広がっていく。

ランチを堪能したあとは、途中下車の駅でマーチングバンドがお出迎え。生牡蠣とシャンパンが振る舞われ、絢爛豪華な客室の演出から一転、大陸鉄道栄光の時代を彷彿とさせるエネルギッシュで賑やかな宴がホームを彩る。エレガンスなだけでなく、時に音楽に合わせて体を揺らし思い切り弾ける──そんな旅を楽しむことができるのもブリティッシュ・プルマンが人気を集める理由のひとつだ。

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

ブリティッシュ・プルマン|British Pullman

宴が終わると列車は再び、出発駅となったロンドンのヴィクトリアステーションへと走り出す。イギリス南東部の田園風景274kmを、約4時間半の時間をかけて周遊したブリティッシュ・プルマンは、到着時刻の16時40分、ゆっくりとした速度で終着駅へと到着。宝石のように光り輝く琥珀とクリーム色の豪華列車の旅は、まるで、1本の名画を見ているかのように、瞬く間に美しくロマンティックに過ぎ去っていった。

ロンドンから日帰りで楽しめるブリティッシュ・プルマンの旅。かのエリザベス女王も愛した豪華列車にドレスアップして乗り込み、美食と絶景に酔いしれてみてはいかがだろう。

英国政府観光庁公式サイト
www.visitbritian.com

英国政府観光庁オンラインショップ
http://www.visitbritainshop.com

ブリティッシュ・プルマン
価格:4万円より(ルート:ザ・ゴールデンエイジ・オブ・トラベルの場合)

日本での問い合わせ先:オリエント・エクスプレス

Tel. 03-3265-1200
http://www.orient-express.co.jp/uktrain

「Chapter 2:隠れ家リゾートで愉しむ英国流ヴァカンス」へつづく

           
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