アートフェア東京2012|東アジアが世界のアートシーンを左右する
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2015年1月7日

アートフェア東京2012|東アジアが世界のアートシーンを左右する

ART FAIR TOKYO 2012

「ディスカバー・アジア」

東アジアが世界のアートシーンを左右する

作品が買える展覧会として過去6回、多くの来場者で賑わったアートフェア東京。今年も3月30日から3日間、有楽町の東京国際フォーラムで開催されるが、東アジアのギャラリーにフォーカスした「ディスカバー・アジア」は今回あらたに設けられた必見のセクションだ。アートフェア東京のエグゼクティブ・ディレクターを務める金島隆弘さんが、「ディスカバー・アジア」について、また世界のアートシーンを左右するほど盛り上がりをみせる東アジアのトレンドについて解説する。

Text by KANESHIMA Takahiro(ART FAIR TOKYO)

韓国を中心に、9軒のギャラリーが出展

国内外を問わず、近代から現代美術までを幅広く扱う、資金力のあるマンモスギャラリーがアートマーケットの大半を握っていたこれまでとはちがい、ここ数年はあたらしい世代のギャラリーが続ぞくと誕生し、アジアで活躍するアーティストがより広い視野で紹介されはじめています。

とくに東アジアでその傾向は顕著で、いまや世界のアートシーンを左右するほどの影響力をもっています。今回アートフェア東京でも、東アジアから9軒のギャラリーに出展いただきます。

アートフェア東京,ディスカバー・アジア,art fear,2

ARARIO GALLERY Han Sungpil 「Metamorphosis」 2011 Chromogenic Print 124x155cm ARARIO GALLERY

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PKM TRINITY GALLERY Lee Bul, Installation view of solo exhibition, 2010. Courtesy PKM TRINITY GALLERY

韓国東北部の天安(チョナン)市に巨大なギャラリースペースを構える「アラリオギャラリー」は、北京にも2005年に進出し、中国現代美術の積極的なコレクションと、多くの実験的な展覧会の開催で中国でも一躍有名になったギャラリーです。最近では、ソウルの三清洞(サムチョンドン)や江南(カンナム)というソウルの二大芸術地区にもスペースをオープンし、韓国や中国の中堅から若手の作家を積極的に紹介、今後は日本の作家も紹介していく計画だといいます。

森美術館で個展を開催中の、イ・ブルの作品も販売

「PKM Gallery」は、アートバーゼルにも複数回参加実績があり、三清洞と江南にギャラリーを構える実力派ギャラリーです。江南ギャラリーは、セレクトショップ「コルソコモ」ソウル店の地下に広大なスペースを構え、5月27日まで森美術館で展覧会を開催中のイ・ブルを始め、韓国を代表する現代美術作家を多く紹介しています。アートフェア東京2012では、イ・ブルの彫刻と平面作品を展示販売予定です。

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ONE AND J. GALLERY Nikki S. Lee 「Part [23]」 2003 digital C-print  76.2x81.9cm ONE AND J. GALLERY

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Gallery Skape Hyungkoo Lee 「Felis Animatus/Leiothrix Lutea Animatus」 ©Hyungkoo Lee, 2009. All right reserved. Gallery Skape

「One AND J. Gallery」は、田中功起などの日本人作家も積極的に紹介し、海外のアートフェアにも意欲的に参加する、ここ数年で注目度が高まっているギャラリーです。昨年もアートフェア東京に参加し、今年はNikki S. Leeの写真作品を展示販売します。また、アートフェア東京の一週間前からは、ソウルのギャラリーにて金氏徹平らが参加する日本の現代美術展「Sculpture by Other Means」の開催が予定されています。

リウム・サムソン美術館のあるソウルの高級住宅街、漢南(ハンナン)に移転した「ギャラリースケイプ」も、アートフェア東京には2度目の参加です。2004年オープンという短いキャリアながらも、韓国の若手作家を積極的に紹介し、着実に力をつけています。今年は展示のテーマを「Reality of Hybrid Existence」とし、ベニスビエンナーレ2007の韓国パビリオンに参加したイ・ヒュンクーから、若手の韓国の作家まで幅広い韓国の現代美術を紹介します。

台湾からは、アジアの近代、現代作家を幅広く扱うティナケンギャラリーの現代美術部門、「TKG+」が出展します。ティナケンギャラリーは、台北中心部の大安区、郊外の内湖区、そして北京にスペースを構える、台湾を代表するギャラリーの1つです。初参加となるアートフェア東京では、昨年のヨコハマトリエンナーレに参加し話題となった台湾人作家のツァイ・ジャーウェイと、森美術館の展覧会「秘すれば花」展に参加したウ・チツォンといった実力派若手作家の作品を展示販売する予定です。

ART FAIR TOKYO 2012

「ディスカバー・アジア」

東アジアが世界のアートシーンを左右する

台湾の「Project Fulfill Art Space」は、Chim↑Pomとコラボ

中国現代美術の発展に大きく貢献してきた香港の画廊、漢雅軒(ハナート)が台北に支店を構えていた際のディレクターが開設した「Chi-wen Gallery」も台湾からの参加です。台湾の現代美術において特に注目される映像メディアの作品を積極的に取り扱っています。アートフェア東京でも昨年に引きつづき、台湾の映像作家の作品を展示する予定です。

江南にあたらしくできたギャラリー・コンプレックス・ビル「ネイチャー・ポエム」内にスペースを構え、韓国の若手作家を積極的に紹介している「Gallery 2」は、新進のギャラリーを紹介する「PROJECT」のセクションに出展するほか、ソン・ドンヒョンのインスタレーションをproject in PROJECTSにて紹介します。

2008年に台北の大安区にオープンしたばかりのギャラリー「Project Fulfill Art Space」は、台湾の若手作家を中心に、東アジアの現代美術をより実験的な形式で意欲的に紹介し続けています。3月には無人島プロダクションと協力しChim↑Pomとの展覧会を企画しており、おなじくproject in PROJECTSにて披露します。

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Chi-Wen Gallery Jawshing Arthur Liou 「Insatiable」 2010 Single-Channel Video / Blu-ray Disc Chi-Wen Gallery

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Gallery 2 Son Donghyun 「Independence day」 2011 ink and color on paper 130x358cm Gallery 2

東アジアの若手作家を幅広く香港で紹介する「Gallery Exit」は、2008年に開設されたばかりの注目ギャラリーです。アートフェア東京では、1970年後半から80年後半生まれの東アジアの若手作家を紹介予定です。北京をベースに活動し、昨年横浜でも滞在制作と展覧会を開催した写真作家の陳維(チェン・ウェイ)をはじめ、香港の映像作家、台湾の平面作品の作家が紹介されます。

現在のアートシーンでは、機動力のある若いアーティストが国境を軽やかに越え、ギャラリーの大小を問わず積極的に作品を展覧する機会が増えています。いままでのアートの国際交流は行政依存型だったのに対し、現在は民間ベースでも積極的に行われ、アーティストの活動を各国のコレクターがより直接的に支援する時代と言えるのかもしれません。

欧米とは別の文脈でそれぞれの国独自に発展してきたアジアのアート市場は、個人的にも興味深くウォッチしています。今回こうしたかたちで、多くの方に東アジアのアートシーンを体感していただける機会を設けられたことを、大変うれしくおもっています。


アートフェア東京 2012|ART FAIR TOKYO 2012
3月30日(金)11:00-21:00
3月31日(土)11:00-20:00
4月1日(日)10:30-17:00
※入場は終了30分前まで

東京国際フォーラム 展示ホール
東京都千代田区丸の内3-5-1

Tel.03-5771-4520(アートフェア東京実行委員会)

           
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