BOOK|『マタニティ古武術』カリスマ鍼灸師による安産指南
BOOK|『マタニティ古武術』
カリスマ鍼灸師による安産指南
古武術を取り入れたあたらしい安産法提案する、カリスマ鍼灸師、若林理砂。その方法やコツをまとめた著作『マタニティ古武術』に込めた思いを、若林氏本人が綴った。
文=若林理砂
妊婦にとって古武術が有効なわけ
この本を書きはじめるきっかけとなったのが、武術稽古仲間の言葉でした。ちょうど彼の奥さまがあと3カ月で出産というとき。夫妻そろって出産前後のアドバイスなど聞きにわが家へ訪れたときのことです。私がさまざまな身体的テクニックを編み出していたのを見て、彼は笑いながら「せっかくだから本にしちゃえば。甲野先生に言ってみなよ!」と。それはいい考えだと思った私は、さっそく先生に許可をいただいて執筆をはじめたのです。甲野先生とは──武術家 甲野善紀先生のことです。私は、ご縁あって15年ほど甲野先生に古武術を学ばせていただいています。
私はおなかが日々大きくなっていく妊婦のからだつきと、古武術の身体操作法が非常に相性が良いのに気づき、妊娠中をつうじて「ここはこう動いたらどうだろう? こうしたらもっと動けるんじゃないか?」と試行錯誤を繰り返していました。古武術を稽古していると、無意識のうちにカラダの操作法をいろいろと探ってしまう癖がつくのです。
全力疾走できる妊婦!?
その結果、妊娠34週までしっかり臨床をこなし、ひどい腰痛は一切なく、産休中も毎日1~2時間の散歩もできて、出産後に退院したその日から家事をこなせるほど、気力も体力も維持できたのでした。また、妊娠中によく言われる「足の爪が切れない、靴下がはけない。さまざまな家事ができなくなる」などの問題も古武術の身体操作法を使うと意外なくらい楽にできることも発見しました。そして、妊婦でも、妊娠中期から後期の頭までなら全力疾走できる方法も編み出したのでした。決してお薦めはしませんが! (このあたりの古武術的な身体操作法をわかりやすく解説したDVD『古武術式らくらくマタニティ 妊娠・安産トレーニング』も発売しています。)
そして……。私が妊娠出産をつうじて、鍼灸師という職業からさまざま考えたこともあわせて書き連ねています。鍼灸師という職業柄、「あら、先生、病院で産むの?」と不思議がられたりもしました。鍼灸師って、東洋医学だけではなく西洋医学もしっかり学んでいるのです。医学の視点から調べていくと、自然なお産や子育てと呼ばれるものにはときとして危険なものもふくまれていることがよくわかります。安易に「自然」へ回帰すると、母子ともに危険な目に遭うことがあるのです。
お産と子育て、どんとこい!
分娩台で産もうが、それ以外のところで産もうが、会陰切開を受けようが、帝王切開を受けようが、陣痛促進剤を使わざるをえなくなろうが、子どもが保育器に入らざるをえない状態であろうが……母乳で育っても、ミルクで育っても、紙おむつでも、布おむつでも、保育園に通っても、幼稚園に通っても、私たちみんな大人になるまでちゃんと育っているでしょう? 残念なことに、「自然なお産、子育て」を銘打った書籍では「それでは母性が損なわれる」と、はっきり書かれていることがあります。そんなことで母子の絆が失われることなんてありえません。どんなに医療介助を受けても、母子の絆は固く結ばれます。
そういったひとを傷つける言葉を吐く「自然派」には「ばかにすんな!」と笑いながら言ってやりたい。そんな気持ちで書いた部分がたくさんあります。この本が、「どこで産もうがどう産もうが関係ない。私のカラダで産むんだ。わたしが育てるんだ。どんとこい!」と妊婦さんや新米お母さんたちが思える手助けになることを願っています。
『マタニティ古武術』
亜紀書房
1680円
WAKABAYASHI RISA|若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業時に鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。その後、早稲田大学に学び、アシル治療室を開設。2年以上初診者の予約待ちがつづくカリスマ鍼灸師と呼ばれる。武術家・甲野善紀氏に師事し、古武術はもちろん、東洋医学につうじ、独自の食事指導もおこなう。『マタニティ古武術』のほか、以下の著作も好評発売中。
はりめし
しょういん
1050円
23時帰宅でつくる健康ごはん
サンマーク出版
1365円
古武術式らくらくマタニティ
妊娠・安産トレーニング〈DVD〉
アドメディア
3990円