ART│蔦谷書店代官山とImpossible Project Spaceの2カ所同時開催
ART│蔦谷書店代官山とImpossible Project Spaceの2カ所同時開催
アラーキー初の20×24インチ・インスタントフィルムを使った写真展
写真家・荒木経惟による初の20×24インチ・インスタントフィルムを使った写真展が8月14日(火)から9月14日(金)まで、代官山の蔦谷書店と、中目黒のImpossible Project Spaceで同時開催される。アラーキーの渾身のエネルギーと、現像する環境により変幻する大型インスタントフィルムが織り成す世界観は必見だ。
Text by YANAKA Tomomi
環境により変幻するインスタントフィルムとアラーキーによるコラボレーション
「写真は私である」とつねづね語っている荒木経惟。いつもカメラを持ち、東京の路地を歩きながら、タクシーのウィンドウから、自宅のバルコニーで……。あらゆる場所で渾身のエネルギーを注いでシャッターを押す彼は、コンパクトカメラや35ミリ一眼レフなどさまざまなカメラを愛用している。そのなかのひとつが、ポラロイドカメラだ。
2008年にポラロイド社がインスタントフィルム事業から撤退。そんななか、機械と職人を引き取り、アナログインスタントフィルムに挑んだ「Impossible Project」が生み出した20×24インチのインスタントフィルム。そのフィルムとアラーキーとのコラボレーションが今回、実現した。
これまでポラロイド社が生産してた20×24インチフィルムといえば、緻密な再現性とスピーディな現像能力で、医療や建築の現場で活躍していた、いわば実用メインのフィルム。いっぽう、「Impossible Project」によってあらたに生み出されたフィルムは現像液が乾くまでときに数カ月かかることもあるうえ、気温や湿度などの環境によっても変幻し、変化しつづけるフィルムなのだ。
2011年暮れ、重量200キロにも及ぶ20×24インチサイズの世界最大のポラロイド社ヴィンテージインスタントカメラが日本に上陸。撮影現場にはフォーカスを結ぶため、フィルム上を流れる現像液の適正量を耳で計測するために複数の職人が立ち会った。荒木経惟は彼の往年のミューズKaoRiを前に、最終形を見越して緊張感あふれる撮影を敢行。その作品群が今回、初公開される。
また、今回の展覧会に合わせて20×24インチフィルムと同寸サイズで彼のサインもはいった75冊の限定版の作品集を刊行。Impossible Project Spaceでは昨年6月に台北で開催され、大成功を収めた「遺影BLACK FRAME」からも主要な作品を見られるという。
これまでとまったく異なる特性を持って生まれたインスタントフィルムとアラーキーとの出会い。小さな偶然と必然がからみ合い、時の経過が織り込まれて生成された奇跡とも呼べる作品たちである。
日程│8月14日(火)~9月14日(金)
会場(2カ所同時開催)│蔦谷書店代官山
東京都渋谷区猿楽町17-5
Tel.03-3770-2525
Impossible Project Space
東京都目黒区青葉台1-20-5
Tel.03-5459-5093