ART|「福島とその影響 イケムラレイコの呼びかけに集まったアーティストと建築家たち」展
ART|原子力発電所事故から問う自然とひとのかかわり
「福島とその影響 イケムラレイコの呼びかけに集まった
アーティストと建築家たち」展
東日本大震災と、それに伴う福島第一原発事故で甚大なる被害を被った福島をはじめとする東日本地域。アーティストのイケムラレイコはこのような事態を受け、アートがなにをなせるかを問いかけるイベントを主催。カーティス・アンダーソン氏やオノ・ヨーコ氏、金子 潤氏など、国内外で活躍する多くのアーティストがイケムラの呼びかけに応え、ベルリンに集結した。
Text by OPENERS
災害からの復興について、トークセッションも開催
2011年3月11日、未曾有の大地震と津波が東日本地域を襲った。そして、その大災害により今なお収束を見ない福島第一原発の事故は、日本だけでなく世界各国にも多くの問題を投げかけている。そのような状況のなか、ドイツのベルリン、ケルンで活躍する日本人アーティスト イケムラレイコ氏が立ち上がった。
友人であるヴィム・ヴェンダース氏やボリス・ミハイロフ氏などのアーティストや建築家に呼びかけ、ベルリンのアートスペース KW Institute for Contemporary Art in Berlinにて、福島と東日本の現状を考える作品を紹介する展覧会を企画。地球に対する、そして創造と破壊のサイクルに対する我われの態度への疑問を投げかける。
イケムラ氏の声に応えたのは前述のふたりのほか、カーティス・アンダーソン氏、オノ・ヨーコ氏、金子 潤氏、カタリナ・グロッス氏、高梨 豊氏、森山大道氏、東松照明氏、ローズマリー・トロッケル氏など、世界的に活躍するアーティスト、建築家たち。彼らの作品は今後我われが未来に向け、どんな態度、行動をとるべきなのかについて考えることを促し、また指針を示す展示となっている。
このイベントにつづき、復興、緊急時の住居、省エネ、そして原子力発電について建築家を交えた討論会もおこなわれる。さらには被災した人びとを支援するためのチャリティオークションも、今秋の実施を目指し、計画している。
そんなイケムラ氏は8月、東京国立近代美術館にて日本では初となる本格的な回顧展「イケムラレイコ うつりゆくもの」を予定している。
私的で詩的なアプローチから、相反する質を優しく包みこみ、静けさのなかに情動的な強さを感じさせるイケムラ氏の作品は、これからの「うつりゆき」を真剣に考えなければならない今だからこそ、観る者に疑問を投げかけ、そして、そっと道筋を指し示すものとなるにちがいない。
「福島とその影響 イケムラレイコの呼びかけに集まった
アーティストと建築家たち」展
Fukushima and the conse quences:LEIKO IKEMURA invites artists and architects
会期|2011年6月9日(木)~7月17日(日)
会場|KW Institute for Contemporary Art in Berlin
「イケムラレイコ うつりゆくもの」展
会期|2011年8月23日(火)~10月23日(日)
会場|東京国立近代美術館
Tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.momat.go.jp
イケムラレイコ|IKEMURA Reiko
三重県生まれ。日本でスペイン語を修得したのち、スペイン・セビーリャで美術を学ぶ。その後スイス、ドイツとヨーロッパに移り住み、現在はベルリンとケルンの2ヵ所を拠点に活躍、国立ベルリン芸術大学で教授も務める。その活動は絵画、彫刻、ドローイングと多岐にわたる。また、絵画では西洋絵画を象徴する油彩を使いながら、キャンバス地を活かした非常に薄塗りの作品を描くなど、彼女の作品からは東洋的感覚と西洋的感覚に橋をかけようとする意思が感じられる。その評価は高く、2008年にはアウグスト・マッケ賞を受賞した。