第1回:ちょっと未来に生きていたい
第1回:ちょっと未来に生きていたい
■水が足りなくなるだろうという“直感”
鈴木正文 はじめまして。高城さんの最新刊『ヤバいぜっ!デジタル日本』(集英社新書)興味深く読ませていただきました。
高城 剛 光栄です。ありがとうございます。
鈴木 これを読んでいるとほんとに自分は取り残されているな(笑)って感じますね。
高城 そんなことないですよ。
鈴木 高城さんが最近力を入れていることはなんですか。
高城 僕は、ちょっと先に「いきたい」と思っているんですよ。「go」じゃなくて「live」のほうの「生きたい」です。ちょっと未来に生きていたい。それで最近は、水と電気なんです。
鈴木 ちょっと先が、水と電気なんですか。
高城 はい、今、北海道で水の採掘権を得て、湧き水をくみ上げてボトリングして、自分の水として飲んでいます。今、手元にあるペットボトルがそうです。あと電気は、沖縄にSANYOのソーラーパネルを置いて電気をつくって沖縄電力に売電して、それを電力ネットワークで東京電力から買いなおしているんです。
鈴木 どうしてそれをやろうと?
高城 直感ですね。たぶんこの先、水が足りなくなるだろうなと。10年前だったらオーダーメードの服とかクルマのカスタムに突っ込んでいたお金を、今はそういったものに使っている感じですね。でもそれは意図的なものからじゃなくて、「今やったほうがいいな」って直感です。
■食糧貯蔵庫付の家を建てていて……
鈴木 何か本を読んで……というのでもないと。やり始めたのはいつからですか。
高城 この2年ぐらいですね。電気も水もまだ稼動して半年ぐらいかな。
鈴木 さすが鋭いですね。目のつけどころが。アースポリシー(地球政策研究所)研究所所長のレスター・ブラウンは、すでに1995年ぐらいから「21世紀は水を巡る戦争の時代」だと、資源争奪戦を予言していた。そういう知識の元に実感をプラスされていたのかなと思いました。
高城 ほんと実感だけですよ。ただ水だけ押さえればオッケーかなという思いはありましたね。今、北海道に食糧貯蔵庫付の家を建てていて、いい技術の冷凍庫がほしいんです。10年前はモーターショーに行っていたのに、今は家電ショー(笑)。なんか変わったんですよ。理由はないんですけど。この3~4年、すごく自分の中で何かが変化しているんです。
鈴木 そういう変化の「兆(きざ)し」みたいなものは?
高城 特にないんですが、本当に先のことばかり考えている。3日前のこととか覚えてない(笑)。
鈴木 高城さんの言う、半歩一歩先を生きるっていうのは、先手をとるってことでしょ?
高城 そういうことですね、たぶん。それを理屈じゃなくて、直感を信じてやってるんです。
(続く)
高城剛(たかしろつよし)
映像作家/ハイパーメディア・クリエイター
1964年葛飾柴又生まれ。89年、日本大学芸術学部文芸学科を卒業。同時に映像作家としてデビュー。90年代はビデオクリップやCF・連続テレビドラマなど、デジタルを駆使した演出作品で常に話題をさらい、デジタル時代の映像作家として注目される。90年代後半からデジタル映画・映像制作に進出し、デジタル・カルチャーの先導者として受賞も多数。2000年代に入るとプロデュース業も本格化、マルチメディア・クリエイターとして幅広く活躍中。