連載|『オトナの自由研究』第2回「越境する学びと、演じるプロフェッショナリズム」
LOUNGE / FEATURES
2026年6月18日

連載|『オトナの自由研究』第2回「越境する学びと、演じるプロフェッショナリズム」

連載|オトナの自由研究

 
2026年4月、南青山に誕生したSoho House Tokyo。世界50拠点目となるこのクリエイティブ・コミュニティは、私にとって休息の場ではなく、越境を体験するためのフィールドだ。
 

Text by AKIYOSHI Kenta

「Soho House Tokyo」で出会う、新しい自分

 
海外の相手と仕事をする機会が増えるほど、英語を「道具」として使いこなすことの難しさを、私は日々思い知らされている。

ビジネスの現場で問われるのは、単なる語学力ではない。文脈(コンテクスト)を相手と分かち合う力だ。そしてこの力は、机に向かうだけでは決して磨かれない。教科書をいくら読み込んでも、自分のなかに新しい回路は生まれてこないのである。

だから私は、実践の場をひとつ選んでいる。2026年4月6日、東京・南青山に開業した「Soho House Tokyo」だ。

ここを訪れることは、私にとって休息ではない。フィールドワークである。

東京の日常から一歩足を踏み入れると、そこにはもう異国の空気が流れている。飛び交う英語、異なる背景を持つ人々、磨き上げられた空間。世界で50番目の拠点となるこの施設は、南青山の表参道グリッドタワー内にあり、42室の客室、ルーフトッププール、ウェルネススタジオを備えたクリエイティブ・コミュニティの拠点だ。

日本にいながら海外のカルチャーへ直に触れ、学んだことをその場で試し、相手の反応を確かめる。この「越境」に限りなく近い体験こそが、日々の仕事ですり減った感覚を満たしてくれる、何よりのエネルギーチャージなのだ。
 
 
そして、この空間で時間を重ねるうちに、私はもうひとつの大きな学びに行き当たった。スタッフたちの圧倒的な「プロフェッショナリズム」である。

彼らは、単なるサービスの提供者ではない。Soho Houseが掲げるコンセプトを深く理解し、それを立ち居振る舞い、ゲストとの距離の取り方、何気ない言葉選びへと翻訳している。まるで、その空間に流れる物語を生きる表現者のように。

京都・牧野漆工芸による漆塗りのカウンター、KAMISMの手漉き和紙、日本の伝統を再解釈したタイル——職人技と西洋の感性が溶け合うこの場所の物語を、彼らは振る舞いそのもので語ってみせる。

コンセプトをいかに浸透させるか。それは、私が普段の仕事で向き合い続けている難題でもある。だがここにあるのは、マニュアルによる強制ではない。一人ひとりがブランドのDNAを血肉化し、自分の言葉と態度で表現している。その姿に究極の「ブランド体現」を見た気がして、ハッとさせられる瞬間がある。

説明するのではなく、立ち居振る舞いそのもので証明する——。これは業種を問わず、メディアや店舗を預かる私たちにとって、ヒントになるはずだ。
 
 
Photo Gallery