Madame Grès|モードに革命をもたらした、伝説のクチュリエール
Madame Grès|マダム・グレ
モードに革命をもたらした、伝説のクチュリエール
シャネル、ランバン、スキャパレリ……数多くの女性クチュリエールを生み出した1920~30年代、この最後にあらわれたのがマダム グレである。今なお語り継がれ、多くのデザイナーたちに影響を与えつづける女性、マダム グレとは。
ストイックに美を追求し、エレガンスとは何かを表現しつづけた
直線的なラインがもてはやされ、Garconne(男の子のような女の子)スタイルが主流となった1920年代のファッション。その反動か、1930年代には、女性らしい曲線を多用したロマンティックなスタイルが復活。この年代を代表する才能に、Madame Grès(マダム グレ)と呼ばれるデザイナーが存在した。
パリのブルジョアの家庭に生まれながら、彫刻家を目指して家を飛び出した彼女は、生活費を得るためにコートのトワルを制作。ただ、アーティストを志す彼女の作品には、これまでの洋服にはない、豊かな芸術性が宿っていた。アメリカの大手百貨店Macy’sの社長にその才能を見出され、本格的にモードの世界に足を踏み入れたGrèsを一躍有名にしたのは、1935年に発表した、古代ギリシア彫刻を彷彿させるドレスだった。
幅広の薄いシルクジャージーを用いたこのドレスの特徴は、流れ落ちるように美しい、幾重ものドレープ。デッサンに頼ることなく、からだに直接布地を掛けて裁断するという独自の手法をとり、時には300もの緻密なタックプリーツをほどこして創作された見事なドレープを描くドレスに、いつしかひとは彼女を「布の彫刻家」と呼ぶようになった。
2度のレジオン・ド・ヌール勲章はじめ、数々のモード賞やタイトルを手にしたマダム グレは、オートクチュール協会の会長を長年にわたり務めるなど、晩年までパリモード界を牽引しつづけた。妥協を許さぬ強い内面を秘めながらも、美しく優雅に振る舞うことを決して忘れなかった彼女は、1993年にこの世を去って今なお、「世界でもっともエレガントな女性」として、世界中の女性から尊敬を集めている。
参考文献:
20世紀モード史(ブリュノ・デュ・ロゼル著/西村愛子訳/平凡社)
身体の夢(京都服飾文化研究財団)
www.parfumsgres.com/biography.html
www.fashionmuseum.or.jp/museum/special.html
マダム グレを愛した人びと
マダム グレを敬愛してやまない著名人には、イヴ・サンローラン、ジャン・コクトー、ジバンシー、バルマン……モードを作ってきたと言われる人物たちでさえ名を連ねる。ともに撮影した写真ややり取りした手紙など、その交流の一片をご紹介。
マダム グレの仕事風景
マダム グレのアトリエでの仕事のようすや、ブティックにたったマヌカンたち。彼女を取り囲んだであろう人びとの写真にも、そこにあるモードへの深い思いとクチュールに対する真摯な情熱と丁寧な仕事ぶりが、まるで伝わってくるかのようだ。
ファッション フォトグラフィーとマダム グレ
1920~30年代、モードが花開いた時代より、マダム グレの生み出すファッションはマン・レイなどのフォトグラファーにも愛され、被写体となってきた。ここでは年代ごとに変遷するマダム グレのドレスを、一挙に拝見。
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