Marie-Hélène de Taillac|マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック 今の時代を形にした独創的なクリエイション
Marie-Hélène de Taillac|マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック
今の時代を形にした
独創的なクリエイション
“石の魅力”を最大限に引き出すことで知られるジュエリーデザイナー、マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック。固定観念にとらわれない、自由な発想でクリエイションをつづけてきた彼女にジュエリーについて語っていただいた。
文=野上亜紀Photo by Jamandfix
石から得る製作のインスピレーション
スウィートでカラフルな輝きを見せるサファイアやエメラルド、そしてスピネルにムーンストーン……。ジュエリーデザイナー、マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックは石の魅力を最大限に導き出すことで、広く名前を知られるひとだ。1996年の活動開始以来貴石はもちろん、さまざまな半貴石にブリオレットカットをほどこしたジュエリーなど、何よりも“石を大切にする”ためのクリエイションをおこなってきた。絶妙なカラーを組み合わせて虹のような輝きを見せるネックレス、指からはみ出るほど大胆にサファイアやスピネルをセッティングしたリングなど、石のナチュラルな魅力を引き出した独創的な作品は、国内外問わず多くのファンに愛されつづけている。
「私は手に取ったとき、何かを“感じる”石しか使いません。つねに石から制作のインスピレーションを得ているからです。ジュエリーで忘れてならないのは、石の美しさを活かすことと、そして石に自由を与えること。本来の美しさとそのままの色と輝きを活かすことが、石の価値を語ることよりも大切だと信じています」
「肌の上で描く石たちの夢」
「2009-2010 Autumn/Winter」で彼女が提案してくれたジュエリーは、1980年代に想を得たというクリスタルにゴールドを埋め込んだバングルや、どこまでも愛らしいラインを描くパピヨンなど……。マリーエレーヌが“肌の上で描く石たちの夢”と語るジュエリーは、成熟した女性の優美さばかりではなく、どこか少女時代の優しい夢までをも思わせる。
「私は宝石の町、インドのジャイプールにアトリエを構えているのですが、今回はスモーキークォーツやクリスタルに22カラットのゴールドを埋め込む作業がとても大変でした。職人と連動して、何度も試行錯誤を重ねました。今回は石の中にゴールドを埋めこみましたが、反対にゴールドの中に石がある、という作品にも挑戦してみたいですね」
“身に着ける”ためのジュエリーを求めて
マリーエレーヌはデザインに、大切な意味をもつ“シンボル”のモチーフをほどこすことも多い。たとえば、バングルにあしらわれたハートモチーフも彼女にとっては大切なシンボル。「私の日常にはいつも普通にある、とても大切な愛の象徴なんです」。
「今回パピヨンのモチーフを選んだのは、心が楽しくなるようなものを作りたくて。私はどのクリエイションでも“楽しみ”や“軽さ”をテーマにしていますが、だからこそ今年はこれらのジュエリーを作りました。パピヨンはいまの不安な時代に、何か大切な意味をもつのではないかと感じたのです」
スモーキークォーツをコレクションのひとつに選んだのにも、理由がある。
「じつはスモーキークォーツは、個人的にはあまり好きな石ではないんです。でも今回のコレクションにふさわしい石なのではないかと思い、あえて選びました。私はいつもモードに合わせるジュエリーを作りたいと思っているので、ファッションでブラックが多く見られたことも理由のひとつです。スモーキークオーツは黒とも相性がいいのです」
“今”を肌で感じることの大切さ
マリーエレーヌは、「毎日身に着けるためのジュエリーを作りつづけたい」と、語る。
「ジュエリーが貴重なものとしてボックスにしまわれてしまうようなクリエイションではなく、毎日身に着けることのできるジュエリーを作りたいと思っています。私は顧客の方々など、まわりの“ひと”から制作のインスピレーションを受けることも多い。カラフルなものばかりではなく、今回のコレクションのように、今生きている時代を肌で感じてクリエイションをつづけていくことも、とても大切。そうすることで、よりひとのこころに響くものが生まれるような気がするんです」
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