萩原輝美 連載 vol.169|2017-18秋冬パリコレクション
モードをストリートで見せるコーシェと注目デザイナーグレーン・マーティンがデザインするY/プロジェクト
萩原輝美 連載 vol.169|2017-18秋冬パリコレクション
パリでは、老舗ブランドに対してストリート感覚でモード服を見せる若手デザイナーが続々登場しています。大量生産ではなくクチュール技を大切に、ブランドにあったビジネス展開をしている若手ブランドにラグジュアリーブランド。その双方がパリコレクションを勢い付けています。
Text by HAGIWARA Terumi
ひねりの効いたモダンな若手デザイナーの台頭
ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリコレクションとそれぞれに個性があるけれど今、パリがおもしろい。オートクチュールをベースにヘリテージを大切に進化するラグジュアリーブランドに対してストリート感覚の若手ブランドが相次ぎデビューしています。90年代、マルジェラ、ドリスなどアントワープデザイナーが登場した時期に似ています。ストリート感覚と言っても、テーラードベースに手技を加え、デザインを壊すというひとひねりのモダン服です。
そのリーダーシップ的存在がクリステル・コーヘルのデザインするKOCHE(コーシェ)です。クチュールテイストの服をセレブだけではなく、みんなに見てもらいたいと発信しています。今回は9区の下町にあるアールデコ様式の劇場で発表しました。ターコイズブルーのインビテーションを抱えてはじめて入った劇場は、ゴールドの柱にターコイズブルーの壁、ピンクのキャンドルとキッチュな内装です。中央の階段からモデルが登場します。オーバーサイズのラガーシャツにサテンのフリルスカート、ピンクのタイツにラインスートンの靴を合わせています。斜めに切り替えられたボーダードレス、シャーリングで切り替えているトップスにパンタロンなど、ありそうでなかったデザインです。ベロア素材のコートスーツやパーカーが新鮮。崩しているのにエレガントです。
Y/PROJECT(Y/プロジェクト)は2016LVMHヤングデザイナー・プライズのファイナリストとしてノミネートされています。デザイナーはグレーン・マーティンです。量感たっぷりのローブの深いスロットからデニムがのぞきます。ドレープを寄せてパイピングを施したドレスはうねりのようなラインを描きます。これからが楽しみな注目デザイナーです。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/