NIKE|世界の女性トップアスリートによる「THE LOOK OF SPORT:ジョディー・ウィリアムズ」
FASHION / WOMEN
2015年7月24日

NIKE|世界の女性トップアスリートによる「THE LOOK OF SPORT:ジョディー・ウィリアムズ」

NIKE|ナイキ

2012 サマーシーズン ナイキウィメン

THE LOOK OF SPORT:ジョディー・ウィリアムズ(イギリス人短距離選手)

イギリス人短距離選手としてすべての期待を越え、陸上トラックで数かずの勝利を収める。17歳、まだはじまったばかりだ。“金のなる脚”という異名をもつ17歳の少女は、まだウォームアップをしているに過ぎない。イギリス陸上界の奇才ジョディーは100メートルと200メートルで国内とヨーロッパの選手権を制覇し、世界の舞台においても100メートルで2度、200メートルでは1度、計3度の優勝を果たしている。昨年にはシニア大会で強烈なデビューも果たした。

Text by OPENERSPhotographs by NIKE

ジョディーは、最大のライバルは自分自身だということを知っている

センセーショナルな勝利で、メディアの注目を集めるようになったジョディーだが、それに伴ってプレッシャーも増した。ジョディーの母は、「短距離走者が大勢いるアメリカとはちがうんです。イギリスではこれまであまりいなかったし、女性スプリンターともなるともう何年も、何十年も不在でした。だからこそジョディーはすばらしい才能の持ち主だと見られていて、もちろん私もそうなるとおもっていますが、いまはまだ、そんなにプレッシャーがかかってほしくないんです」。なるべく注目もストレスも受けないようにするため、ジョディーは去年までジュニアのレーストーナメントにしかほとんど出場していなかった。両親とコーチの意向でもあったが、ジョディー自身が決めたことでもあった。

ジョディーはランニングを職業と考えていて、ほかの若いスター選手のように燃え尽きてしまうことのないように気をつけている。とくに肉体的、感情的負荷が非常に高い短距離の分野では、優勝経験のある若い選手はしばしば自己消耗してしまう。たぐいまれな手つかずの才能をもった、恐れ知らずで勢いのあるジョディーは、最大のライバルは自分自身だということを知っている。ジュニア大会に留まりそれを制してきたことで、持続性のある生活バランスを取ることができ、6年以上も競技生活をつづけているにもかかわらず、友人とコーヒーを飲んだり、ショッピングを楽しんだりする時間的余裕ももてている。「競技をはじめたのは11歳のときで、地元のクラブに行っていろんなことを適当にやっていました。真剣になってきたのはたぶん13か14のときで、はじめて(国内選手権で)優勝してからです。あの瞬間、もうちょっと真剣になり、職業としてやっていきたいとおもったんです」。

現在ジョディーは週に2回(季節によるが1回につき2~3時間)、1年で48週トレーニングをしている。世界最速の女になる、という大きな抱負を胸に抱きながら。娘の道のりをおもい起こしながらジョディーの母は言う。「7歳くらいのときに対校試合があったときのことを覚えています。あのあと、(世界トップの)ランナーになるにはどうしたらいいかと聞かれて、心のなかでは笑ってしまったんだけど、「そりゃもうやらなきゃいけないことはたくさんあるわよ」と言ったんです」。それから11年近く経ったいまもその目標はジョディーの心の最前線にある。

ナイキ|ジョディー・ウィリアムズ 02

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ジョディーが短距離を好む理由とは

何年もトレーニングをやってきて、今もなおその目標に向かって努力を続けられるのはなぜかと聞くと、「勝ったときの気分が忘れられなくて、それがもっとがんばろうという原動力になるんです」とジョディーは言う。「2009年に大きな選手権ではじめて優勝したんですが、台の上に立ち、国歌の演奏を聞き、皆からの歓声を浴び、本当にすばらしい気分でした。ああいう気分は何度でも経験したい。もう嫌だとおもっても、あの感情が背中を押してくれるんです」。

「16歳のときにはじめてレースで負けたとき、最後の10メートルを走っているときに、前を走る選手に追いつけないことがわかり、ジョディーは泣いていました。ゴールに着いたとたんに倒れ込んだんです。ストレスなどいろんなものが出てきたんだと思います。選手権への出場や、“一度もレースに敗れたことがない”といったメディアの喧伝など、相当のプレッシャーを感じていたと思います。もう耐えきれないほどだったんでしょう。でもあれで負けても構わないということがわかったのだから、良かったんです。おかげでプレッシャーも減りました」と母は言う。

プレッシャーを避けるタイプではなく、むしろジョディーはそれを糧にする。2011年にはじめて移ったシニアでは、いままでのものとは比にならないプレッシャーだったのにもかかわらず、彼女はすべての期待を上回り、60メートルで自己最高の7.24秒を記録した。「プレッシャーがあった方が良い成績が出せるんです」と彼女も言う。「大きな選手権というのはプレッシャーも一番大きいし、最高のパフォーマンスを見せなきゃいけないときです。プレッシャーに弱いようでは競技選手にはなれません。私はプレッシャーがあるときの方がずっと速く走れるみたいで、むしろプレッシャーがないと走れないみたいです」。ジョディーが短距離を好む理由もこれで説明がつく。「速く走っているとアドレナリンがどっと出るんです。100メートルの短距離ではとくに絶対に完璧にやらなくてはいけません。一歩でもまちがえるとレース全体がだめになってしまいます。私自身1000分の1秒の差で勝ったことがあるくらいで、本当にとてもわずかな差なんです」。

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“すべての国が待っていたアスリート”と形容されるジョディーの夢

今シーズンの準備では、そういったわずかな差や厳密な足の踏み出しがトレーニングの焦点になる。「コーチはとても好きで、すごく仲がいいんです。彼は本当にいい刺激をあたえてくれ、彼自身短距離選手だったので、なんでも経験済みでいろいろとわかってくれるんです。それからボーイフレンドも短距離選手で、彼もなんでもわかってくれるし、いつも見ていてくれます――それから当然だけど家族、両親がいます」。両親はふたりともかつて郡レベルで活躍していた短距離選手だった。ジョディーは3人兄弟の一番上で、妹にとってはスターだ。母は笑って言う。「ジョディーのヘアスタイルがあまり大きくならないことを願いながらも、妹はジョディーのことをすごいと慕っているんです。とても誇りにしていて、ジョディーのやっていることならなんでもやりたがります」。

今年について言えば、それはシニアでイギリスの代表チームのメンバーになったことを指す。プレッシャーの少ない長期的アプローチを取りつづける両親とコーチは、今年は今後の大会に向けた準備のためだけに使うことをジョディーに薦める。一方ジョディーは自分のおもいは胸に秘めておきつつ意味深げに言う。「すごく楽しみです。イギリスもすごく興奮しているし、ものすごく盛り上がっています。待ち遠しいです。すごいことになると思うし、これまでの努力もすべて報われるはずです」。現在、ジョディーの100メートルの自己最高は2011年7月に記録した11.18秒で、これは2011年のシニアの最高タイムに0.42秒足りず、1988年の世界記録とは0.69秒の差がある。

いずれにせよ、今年はジョディーにとって大きな年になるだろう。彼女は18歳になり、Aレベル(高等教育に進む前段階)を終える。すでにいろんな点で大人っぽいジョディーだが、正真正銘、大人になるのだ。夏が終わったらギャップイヤーを取る予定で、ロサンゼルスあたりでトレーニングをつづけながら旅行をしたいと考えている。そして、いずれはロンドンに戻って心理学を勉強するつもりだ。

ジョディーの夢――100メートルに集中したい、ひょっとするとリレーも。「100メートルはずっと好きな種目でした。かっこいいとおもいます。誰もが100メートルの(シニア)スプリンターになりたがっている。来年はそれが現実になればいいなと思います」。“すべての国が待っていたアスリート”と形容され、一国の期待をその幼い肩に優雅に背負う。

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