萩原輝美 連載 vol.130|ディオール、フェンディによる華麗なオートクチュール
「ディオール」「フェンディ」の最新コレクション
メゾンのDNAを秘めたオートクチュール
絶妙のバランスダウンで新しさを出したディオール。はじめてのクチュールファーに挑んだフェンディの“オートフリュール”。2015-16年秋冬オートクチュール、今シーズンも話題満載でした。
Text by Terumi Hagiwara
アイコンのバージャケットを蘇らせたディオール
2015-16年秋冬パリ・オートクチュールコレクションです。ディオールは極彩色のガラスで組み立てた「快楽の園」を作りました。床には紫の芝生カーペットを敷き詰めています。
はじめに登場した白いシフォンドレスは、抜けるような透明感でイノセントなイメージを出しています。そのシフォンドレスに片方だけ量感あるファー袖をつけたマントを重ねます。巨大フラップ、大きくAラインを描くマントでバランスダウンさせています。大きな衿、アシンメトリーなヘム、ミンクやチンチラにカシミアを合わせてボリュームを出します。ケープの裏はドレスに使われる、クレープデシンにプリーツをほどこしたリバーシブル仕立てです。スーツ、コート専門のアトリエ・タイユールとドレスのアトリエ・フルーがひとつになって、新しいシルエットを作り出しました。ラフ・シモンズによってはじまった試みです。意表つく点描画プリントのクラシックなAラインドレス、アイコン、バージャケットも袖口を大きく広げてモダンに変身しました。快楽の園と名づけたこのコレクション、妖しさと品、クラシックとモダンを交差させて新ディオールに挑みました。
フェンディの初クチュールが披露
フェンディは、“オートフリュール”と名付けたクチュールファーだけのコレクションを初めてパリで披露しました。リンクスにセーブルなど高級ファーに刺繍、パッチワークなどクチュール技が加わります。いつもはすべてイタリアメイドですが今シーズンはパリの老舗刺しゅうメゾン、ルサージュによる蝶モチーフの3D刺しゅうもほどこされました。パリに引き続き日本上陸50周年を記念して行われた東京国立博物館でのショーには、アジアの顧客が集まりました。平均5000万円というクチュール価格でアジア系の顧客にもスポットを当てています。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/