MARGARET HOWELL|『ファッション ニュース』編集長、村上 要インタビュー
FASHION / MEN
2015年4月7日

MARGARET HOWELL|『ファッション ニュース』編集長、村上 要インタビュー

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエル

『ファッション ニュース』編集長 兼『WWDジャパン』シニアエディター

村上 要が語るマーガレット・ハウエルの現在(1)

コレクションマガジン『FASHION NEWS(ファッション ニュース)』。その編集長として、メンズをメインにウィメンズのコレクションもふくめ、ロンドン、パリ、ミラノを3週間ほどサーキットし、“ショー漬け”になるという村上 要さん。ロンドンファッションウィークにロンドンの旗艦店「ウィグモア ストリート店」で開催されたマーガレット・ハウエル メンズのショーの感想を聞くと、「服の雰囲気がよく伝わる、ショップの自然光が入るランウェイで見せるのがマーガレット・ハウエルらしいですね」という。今春夏のマーガレット・ハウエルのカーディガンとTシャツを着て登場してくれた。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by TAKADA Miduho

脱リラックスの力強いフォルムに注目

「ロンドンメンズコレクションは、パリやミラノとちがって、参加ブランドが自分たちの強みをきちんと意識して、そこをアピールしているのが特徴ですね。新進ブランドもサヴィルロゥの老舗も、もちろんマーガレット・ハウエルもふくめて、どれもロンドンメンズにふさわしいブランドで、“自分が好きなスタイル”をメッセージとして発信しています。

マーガレット・ハウエル メンズの今シーズンのショーも見ましたが、デザイナーのマーガレットさんの“好きなところがぶれない強さ”を感じました。ブランドの得意なリラックス感は残しながら、スーツやVゾーン、テーパードの効いたトラウザーズなどのシルエットや、黒ではない“墨色”のトーン・オン・トーンなど、つぎのトレンドである“脱リラックスの力強いフォルム”までしっかり解釈し、盛り込んでいるのにあたらしさを感じました。

村上さんが選んだ、今シーズンのベストルック

とくに墨色の使い方は特筆もので、肉厚で起毛した英国のテーラードファブリックを使いながら、柔らかさは失わずに強さを表現。「ぱっと見の印象は強いけど、よく見ると柔らかい」コーディネイトはあたらしい挑戦だと思います。コレクションのなかで僕が好きなのは、3つボタンジャケットのスタイルで、秋冬はグレーのイメージが強いマーガレット・ハウエルには斬新な色使いでした。今シーズンは、多くのブランドが「フォーマルを自分らしく、男前かつ端正に着る」スタイルを提案していましたが、マーガレット・ハウエルらしいトレンドの解釈だと思います。

そしてもう一つは、ややオーバーサイズのシャツのスタイルで、こういうリラックスシルエットのシャツの提案を必ず忘れないのが、このブランドの魅力だと思います。シャツ一枚から、「心地よいものに包まれる」というブランドのアイデンティティが見える気がします。

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今、ショーを見るときに注目していること

ショーを見るときに重きを置いているのは、デザイナーのパーソナリティが感じられるか――ですね。服を作っているひとのリアルなパーソナリティと、ほかとの差別化の両方が入っていることに注目します。最近のデザイナーはコレクションのテーマを設けるひとが減ってきていて、“自分が普通の生活を送っているから気がつき、心にとまったことを洋服に落とし込んでいく”デザイナー、たとえばセリーヌのフィービー・フィロやサカイの阿部千登勢さんなどは、自分のライフスタイルに根づいたリアルな表現で支持されています。

ですから、デザイナーのインタビューも最近はショウルームではなくアトリエでとお願いすることが多く、彼、彼女らが毎日の生活のなかで感じたことから、そのひとらしさや作る服が伝わってくる。デザイナーが興味あるフィールドを提案するブランドとしては、マーガレット・ハウエルはまさに“走り”のような存在ですね。

『ファッション ニュース』のキーワードは“エモーショナル”

雑誌もウェブもコレクションをレポートするメディアはたくさんあります。コレクションマガジン『ファッション ニュース』で一番大事にしているのは、目の前の洋服のことよりも、それを見た自分の感情=エモーショナルを伝えること。「こう思うから良かった、悪かった」を伝えたい。エモーショナルなレビューが、数多あるコレクションを見る人間の仕事だと思っています。

コレクションの速報性ではウェブには対抗できなので、『ファッション ニュース』で考えているのは、言い切る勇気。とくにメンズ号と東京号では、スタイリストの村瀬昌広さんがコレクションを評する“もの申してもらうページ”を掲載していて、ブランドに偏差値をつけたり、本当に良かった、おもしろかったコレクションを挙げるなど、エモーショナルな企画もおこなっていますので、ぜひご注目ください。

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエル

『ファッション ニュース』編集長 兼『WWDジャパン』シニアエディター

村上 要が語るマーガレット・ハウエルの現在(2)

村上流、コレクションの見方、初公開!

ショーを見るときは取材ノートをつけていますが、僕は、1ブランド1ページに、上からテーマ、素材、色、形、アクセサリーの順でメモをとります。それぞれのブランドの特徴も大事ですが、見たショーから、「つぎのシーズンのファッションの方向性を見いだす」ことも使命の一つなので、取材ノートを横軸で見ていくと、シーズンの傾向がわかり、シーズン全部を見渡すことができます。このノートは半年間は大切にとっておきますね。

さて、今年の秋冬のメンズの大きなトレンドはふたつ。まず一つは、決まり切ったルールではなく、自分が着たいように着る“スーツ”。これまでスーツは、男のフォーマル、清潔さ、力強さなど訴えるスタイルでしたが、今シーズンのランウェイでは、上から下まで全身一色、スカーフやブローチ、タイピンなどを飾るデコラなスーツ、寝起き風、グランジ風など、まったく新しい感覚での着こなしが出てきています。

もう一つは、男女で“シェア”できるスタイルやアイテムの登場。これまでなら、フェミ男とか、女性ならマスキュリンと表現されていましたが、今シーズンはもっとフラットに、「かっこいいから取り入れてみたら」という感じ。僕たちはクロスジェンダーと表現しますが、メンズの素材やアイテムでも、格好良ければウィメンズでも取り入れればいいというトレンドで、マーガレット・ハウエルのウィメンズのエポーレット(肩章)付きシャツはとても格好良かったです。

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コレクションブランドとしての風格

今シーズン気づいたのは、MHL.が“こなし上手のカジュアル”をうまく表現していること。マーガレット・ハウエルにコレクションブランドとしての風格が出てきたこと。ロンドンのショップでのショーときにスタッフに取材したんですが、「きちんと世界観を提示できるコレクションウィークに参加し、ロンドンのショップで発表することで、自分たちの立ち位置が確認できた」と語ってくれました。

マーガレット・ハウエルは、「気持ちいい洋服がほしい」という選択肢の上位に入るブランド。服以外にライフスタイルもしっかり提示しています。「こういうものに囲まれて暮らしたい」と思うひとが多いブランドは、今とても強い支持を得ています。

村上 要|MURAKAMI Kaname
1977年静岡県生まれ。東北大学教育学部を卒業後、静岡新聞社編集局社会部で記者生活をスタート。当時の担当はガチの事件&事故。退社後、NYのファッション工科大学に留学。現地での「プラダを着た悪魔」生活を経て、INFASパブリケーションズへ。現在『ファッション ニュース』編集長 兼『WWDジャパン』シニアエディター。
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