LACOSTE|ラコステ プロに愛されつづける理由~ビームス クリエイティブディレクター 中村達也氏
FASHION / FEATURES
2015年7月24日

LACOSTE|ラコステ プロに愛されつづける理由~ビームス クリエイティブディレクター 中村達也氏

LACOSTE|ラコステ

Episode 4: I love Lacoste

プロに愛されつづける理由  ビームス クリエイティブディレクター 中村達也氏

日本のカジュアルファッションの礎を築き、いまなおシーンをリードしつづけているショップといえば、ビームスをおいてほかにあるまい。創業時より定番「L1212」を取り扱ってきたビームスは、ラコステの魅力を最も深く理解しているショップのひとつといえるだろう。定番のセレクト以外に、毎シーズン別注モデルをディレクションしているという、クリエイティブディレクターの中村達也氏。ラコステとの個人的な出会いとともに、商品としての魅力を語る。

Text by KASE Tomoshige(OPENERS)Interview photographs by OZAKI MakotoStill photographs by LACOSTE

ラコステをはじめて買ったのはビームスなんです

――まずはラコステとの個人的なかかわりを教えていただけますか。

高校生の時――新潟の田舎の高校生だったんですが(笑)、当時は日本のライセンスのラコステしか手に入らなかったんですね。いろんな雑誌を読んで“フランス製ラコステ”の存在は知っていたのですが、新潟には売っていないわけです。

――“フランス製ラコステ”と出会ったのは……。

大学生になって上京した時に、ビームスやシップスといったショップで、ようやくフランス製のラコステに出会ったんです。当時9800円くらいだったと思います。まあ、学生にとっては9800円のポロシャツっていうのは高いわけですよ(笑)。でも「これが本物なんだなあ」という感じでしたね。“ポロシャツの本物”というか、“王道中の本物”みたいなところがあって(笑)。そしてお金握りしめて、たしかビームスだったと思うんですけど、白のフレンチラコステを手に入れたんですよね。

――ビームスで初めて購入して、いまラコステについて語っているという……不思議な縁を感じるエピソードですね。

それからはもう何枚買ったかなあ……ネイビー買って、ほかの色を買って。白なんかは黄ばみますから同じものを3枚くらい買いましたね。

――いつ頃の話になりますか?

1980年代の半ばです。当時ラコステはアメカジ的なブランドとして捉えられていたように思いますが、僕は“フレンチアイビー”という意識で着ていました。“フレンチアイビー”というのはその名のとおり、アメリカ的なアイビーをフランスっぽく甘めにアレンジしたスタイルだったのですが――そういった意味でもフランス製ってことで、まさにドンピシャのアイテムでしたね。

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ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也氏

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25年ほど前に購入したという中村氏の私物の「L1212」

――どのような着こなしだったのでしょうか。

当時はやっぱりデニムと合わせていましたね。ちょうど大学生の頃、フランス製のデニムが出はじめたんです。リベルトとか出てきた時代で……当時リベルトも高かったなあ。頑張って1本買いましたね。それで(アディダスの)スタンスミスとかカントリーを履いていました。スニーカーもフランス製、というわけです。学校に行くと同じような格好をしている学生がいるんですけど、「お前たちとはちょっと違うよ」みたいに思っていました(笑)。いい時代でした。

みすぼらしくない味のある古さ

――私物の「L1212」を見せていただけますか。たしかに色が褪せてはいますが……。

洗い込んでいって古くなるのは仕方がないんですけど、みすぼらしい感じの古さにはならず、味のある古さになるんです。デニムのインディゴが色落ちしてもみすぼらしくない、というのと似ています。素材の良さによるところだと思いますね。襟もいい具合にヨレるんですよ。

――どのくらい前に購入されたものでしょうか。

22、3歳の時に買ったものですから、25年くらい前のものですね。この当時買ったものはまだ10枚くらい持っています。封を開けていない白の「L1212」もありますよ。僕は全然コレクターではないので、とっておくっていう意識はなかったんですけど(笑)。「黄ばむから」という理由で買い溜めていた分が、衣装ケースの底のほうから出てきました。

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水色が「L1212」、ネイビーがスリムフィットの“グレーワニ

――すごいお話ですね……こちら(ストレッチタイプ)の色は黒ですか?

これはネイビーですね。最近のグレーのワニのやつです。以前は「L1212」を、ある意味洗い込んでいってフィットさせるみたいなところがあったんですが、よりフィットするものを探していたら、このグレーワニに出会いました。

――昔もいまも「L1212」はあまり変わらないですか?

カタチはほぼ変わっていないんです。僕は検証したことがあって、昔の「L1212」といまの「L1212」、洗っていない製品同士を比べたら、スペックはほとんど同じだったんです。

――なにせ中村さんの衣装ケースに残っていますからね(笑)。

Episode 4I love Lacoste

プロに愛されつづける理由 ビームス クリエイティブディレクター 中村達也氏

日本製をやりたい、と直接話しました

――つづいてはビームスで取り扱う「商品」としてのラコステについて伺いたいのですが。

ラコステに関しては、フランス製ではなくなっても、以前は「フランスから入ってくるものが本物」みたいな認識がありました。しかしいわゆる並行輸入と日本製を比べても、大きな違いはなかったんです。そんなわけで、ファブリカさんに直接「日本製をやりたい」とお話をして、(ビームスでの取り扱いを)再開したというストーリーがあるんです。ウチはラコステの取り扱いがなかった時期がある、ということです。

――なるほど。

その時に自分の中の疑問をいろいろぶつけたんですね。「昔のものは細いのに、なんでいまの製品は身幅が広いんですか?」みたいな、いろいろなことを聞きました。それぞれの疑問について(ファブリカに)説明していただいて。

――取り扱いを再開するにあたって、社内で意見はありましたか?

当時のお客さまやスタッフのあいだには、「フランス製でなければ」という感覚がたしかにありました。でももうその考え方は古いのではないか?っていう。いまや世界共通のスペックで生産している会社の製品を、生産国で優劣をつけるというのはナンセンスというか……そこから「L1212」の扱いを再開して、グレーワニをやったり、別注ものをやったり。ブログのトップ画像で着ているものは当時のビームス別注です。以来、さまざまな別注に毎シーズン取り組んでいます。

――再開後、反応はいかがですか。

いまのマーケットのなかでも定番中の定番ですからね。お客様は購入されますよ。ラコステはラフな着こなしにも、ジャケットの下に着ることもできますし。

――どこか上品さがあるように感じるんですよね。

フランスのエスプリが効いているというか……ちなみにイタリア人も、ラコステのポロシャツが大好きなんですよ。向こうのリゾート地にもラコステショップがありますし。イタリア人って定番ものが好きじゃないですか。イタリアでもラコステは定番アイテムとして扱われているんです。

LACOSTE|ラコステ 05

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今は「襟を立てたい」というお客様も多いんです

――では今シーズンビームスで扱っているラコステを教えてください。

こちら(PH039P)は襟を立てて着たい人のために、少し小さめの襟にしてあります。立てた時に収まりがいいようなバランスを考えました。

――たしかに襟が小さくてしっかりしていますね。

昔のビームスで襟を立てて着ていたら、おそらく先輩に注意されたとおもいますが(笑)、今はそういう時代ではありませんしね。立てたいというお客様もたくさんいらっしゃいますし、それを否定することはありません。ジャケットの下に着て襟を立てたいという方もいらっしゃいますから。襟を立てたい人向けの商品ですね。もちろん立てなくても、コンパクトでキレイにまとまります。

LACOSTE|ラコステ 07

――こちら(PH414E)はどういった商品でしょうか。

いわゆるヴィンテージな感じの、後染めのタイプです。だからワニ(のロゴ)がボディと同じ色に染まっているんです。ちゃんとスリムフィットで、トレンドでもあるガーメントダイ(製品染め)のポロを作りたいと。ただ胸のロゴをよく見ないと、ラコステだとわからない(笑)。

――いいですね。この手があったか、という感じですね。

生地も厚い感じがしますよね。縮率を計算して元のボディを作りますから。生地も縮んでしっかりしているし、洗い込んでいくと色も落ちてきて、いい味わいになるんです。

――やはりセレクトショップにおいて、ラコステのポロシャツというアイテムは必要不可欠ですか。

リーバイスの501、コンバースのオールスターのように、なくてはならないものでしょうね。定番中の定番じゃないですか。これだけ古くさくならずに残っているものってなかなかないですからね。

――生き残る定番、ということなんですよね。若い人たちにもどんどんポロシャツを着てほしいとおもうのですが。

(若い人たちには)Tシャツ文化がありますからね……。僕らの世代の感覚では、Tシャツは街に着ていくものではなく、家で、あるいは休みの日に着るものという認識なんですね。で、街着のなかでいちばんカジュアルなものということでポロシャツ――つまり襟がついてないとダメというか(笑)。

――たしかに中村さんが襟なしの服を着ているのはあまり見たことがないです(笑)。

家の中か、ほんとうの近所に買い物行く時くらいしか着ないですね(笑)。

――なるほど。いろいろと楽しいお話をありがとうございました。

中村達也|NAKAMURA Tatsuya
1963年、新潟市生まれ。ビームスのクロージング全般を統括するクリエイティブディレクター。その審美眼と明快なトレンド分析力で、各方面から厚い信頼を得ている。またファッションムックの監修もおこなうなど、活動は多岐にわたる。メンズクロージングの最新トレンドがしたためられたブログ「ELEMENTS of STYLE」(http://ameblo.jp/beams-class/)は、ファッション業界関係者たちのあいだでつねに話題となっている。

クリエイティブ・ディレクター、バティスタ氏が語るラコステの未来

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フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ氏

去る5月29日(火)、日本初のフラッグシップショップとなるラコステ渋谷店にてオープニング・レセプションが開催された。昨年クリエイティブ・ディレクターに就任した、フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ氏も来日。ミニインタビューに応じてくれた。

ポルトガル出身のバティスタ氏はロンドンのキングストン大学でファッションを専攻、卒業後はマックスマーラ、クリストフ ルメールなどを経て、2005年に自身のブランドをスタートする。モードの最先端にいるバティスタ氏は、ラコステというブランドをどう認識しているのか。「やはりラコステの基本的なスタイルは、タイムレスなものだと思います。つまりカジュアルはもちろん、ドレスアップしてもいい。ジャケットを合わせてもいいし、デニムを合わせてもいいのです」

そんな“大定番”のラコステに、どうやってあたらしいテイストを加味していくのだろうか。「僕の父親、あるいはおじいちゃん世代に長く愛されてきたブランドですが、若い人たちに訴える服を作ることも大事です。ポロシャツ以外にもパーカやジャケット、ニットやジャージーなどのアイテムも増やすことも必要だと思います。ただし、やっぱりラコステの原点はポロシャツ。このアイデンティティをおろそかにしては、いいもの作りはできません。僕の好きな服は、シンプルで機能的なもの。ラコステのポロシャツもおなじ。時代に合わせて微妙にフィット感を変えたモデルをリリースしたりしていますが、基本はベーシックなんです。その点を忘れずに、クリエイティブを発揮していきたいですね」

LACOSTE|ラコステ 09

去る5月29日(火)に開催された、ラコステ渋谷店でのパーティ

ファブリカ
Tel.03-6894-0318
http://www.lacoste.co.jp

           
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