Scottish mode for men|4つのキーワードで知るスコットランドファッションの真髄とは?
Chapter 03|Scottish mode for men
4つのキーワードで知るスコットランドファッションの真髄とは?
カシミア、ハリスツイード、タータンチェック、マッキントッシュ――スコットランドが生みだす製品は、クラフツマンシップの魅力に溢れたロングセラーのものが数多く存在している。主要セレクトショップのバイヤーやプレスが語るその魅力とともに、人気アイテムを紹介!
Direction&Text by ODE TsuyoshiPhoto by JAMANDFIX(Steel)Photo by KIMURA Katsuhiko(Model)Styling by YOSHIDA yohei(JUICE)Make by WASHIZU Yuka(SIGNO)Hair by HIRANO HikaruSpecial thanks CONRAD TOKYO
Cashmere|カシミア
繊維の宝石──世界のメゾンにも愛されるスコティッシュカシミア
保温性に優れ、やわらかで軽く、気品のある光沢や独特のぬめりを備えたカシミア。その原料は、厳しい寒さから身を守るため、わずかに生えるカシミア山羊の柔毛。1枚のニットを作るためには、なんと4頭分の毛が必要とされるという。
そんなところからも“繊維の宝石”、または“繊維の女王”とも呼ばれ、世界でもっとも貴重で優れた素材のひとつである。その名前の由来は、インド、パキスタン、中国の国境付近に広がる山岳地方のカシミール地方の古い呼び名から。なかでもスコティッシュカシミアの独特な手触りは、スコットランドの山に流れる柔らかく澄んだ水で丁寧に洗うことによって作られている。また、仕上げに天然植物のアザミの実を使って布地の表面に優しくブラシをかけて素材を毛羽立たせ、カシミア独特の流れるような起毛とよりしなやかな風合いを出している。
他の地域や国で作られたカシミアとははっきりとちがうこれらの特徴が、まさに世界で愛されている理由なのかもしれない。じつは「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」「エルメス」などの世界のトップブランドのカシミアコレクションはスコットランドの工場で製造されている、というのも意外と知られていない事実。これもスコティッシュカシミアのクオリティの高さを物語るエピソードのひとつだといえるのでは?
バーニーズ ニューヨークに聞く、スコティッシュカシミアの魅力とは?
スコットランドのカシミア製品を扱うバーニーズ ニューヨークのメンズMDである柳楽陽亮氏はその魅力をこう語る。「5年ほど前からBEGG - Scotland(ベグ・スコットランド)のマフラーを買いつけています。個人的にも何枚か持っていますが、やはり名だたるメゾンのファクトリーとしても信頼されている極上の素材感や独特の色出しのよさなど、ほかとはちがう魅力がありますね。やはり使用されている水のクオリティなど、スコットランドという土地だからこそできるのではないでしょうか? しかも物づくりがすべて伝統と歴史にもとづいてなされている、そのクラフツマンシップ精神もたまらないです」。
ベグ・スコットランド
http://www.beggscotland.com/
柳楽陽亮|NAGIRA Yousuke
バーニーズ ニューヨーク メンズMD。メンズファニシング アシスタントバイヤーを経て2010年より現職のメンズファニシングバイヤーとなる。バッグや革小物、アクセサリー類まで国内外から幅広いセレクトでバイイングをおこなう傍ら、オリジナル商品の開発にも携わる。趣味はサーフィンとゴルフというアクティブな一面も。
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4つのキーワードで知るスコットランドファッションの真髄とは?(2)
Harris Tweed|ハリスツイード
ハンドメイドならではの思いが込められた、ツイード界の最高峰
ツイードと一口に言っても、その種類は数多い。なかでももっとも上質で高級なことから、“ツイードの王様”とも称されるのがハリスツイードだ。スコットランドの北西部に位置する、アウター・ヘブリディーズ諸島の島民によって、自宅にある旧式の織り機でいまでも丁寧に1点1点手織りされている。現在は約120名の手織り職人がいて、そのタグのシリアルナンバーを調べれば手がけた職人が誰だかわかるほど徹底された管理がおこなわれているというから驚きだ。
さまざまな色の混じった糸のあたたかみある色合いが特徴で、生地パターンはその土地の風景にインスピレーションを得て作られてきている。そんな昔ながらの製法を頑なに守りつつも、時代のニーズにあわせて従来の約半分という軽さと柔らかさを備えたニュー・ハリスツイードの生地も開発されているので、ぜひ注目したい。また、織られた生地は厳しい審査を受けて合格したものだけに、英国・ハリスツイード協会の登録商標のタグである“オーブ・マーク”がもらえる。そしてなんと今年2010年は、その“オーブ・マーク”の100周年というアニバーサリーイヤー!
いままでチャレンジしたことのないひとも今年こそ1着は手に入れて、そのクラフツマンシップに思いを馳せつつ、一緒に祝福ムードを味わってみてはいかがだろう。
トゥモローランドに聞く、ハリスツイードの魅力とは?
今シーズンも数多くのショップオリジナルのアイテムに、ハリスツイードを使用しているトゥモローランド。販売促進部プレス担当の杉山耕平さんもその魅力にとりつかれている。
「豊かな色合いやハンドメイドならではの風合い、いまの時代感に合ったあたたかみを感じるので、約10年前からオリジナルのウェアに使ってます。着れば着るほど味わいを増し、着用するひとの一部になっていくことで唯一無二のアイテムなるところがたまらないですね。また最近ではどんどん進化して、よりライトウエイトのものや色柄も豊富に揃ってきました。そんな現代の価値観で着用できるハリスツイードが増えているので、いつかその生地自体をオリジナルで別注してみたいですね」
杉山耕平|SUGIYAMA Kohei
メンズ、ウィメンズともに洗練されたエレガントなカジュアルスタイルを提案するセレクトショップ トゥモローランド販売促進部プレスとして、おもにメンズファッションを担当する。
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Tartan Check|タータンチェック
その歴史はスコットランドの家紋、いまや定番パターンのタータンチェック
タータンチェック、と聞いて思い浮かべるものはなんだろう。マフラーの柄? 学生時代の制服? それとも百貨店の紙袋?──じつはその起源はスコットランドのハイランド地方で作られた格子柄のことで、そこに住む氏族がそれぞれ特有のタータン柄を定めて、種族や階級をあらわす紋章や家紋のような役割を果たしていた。それをスコットランドの民族衣装であるキルトスカートやマント、肩掛けに仕立てて着用していたのだ。
そのチェックの種類といえば、数百種にまでのぼるといわれているほど。ファッション界でもいまや定番のパターンとして幅広く愛されている。しかもなんと個人の名前でオリジナルのタータンを登録できることは意外に知られていない。故ダイアナ妃の名を冠した「プリンセス・オブ・ウェールズ・タータン」の存在がとくに有名だ。そしていつかはスコットランドでオリジナルタータンを作る旅、なんて経験ができたら最高かもしれない。
ヴァルカナイズ・ロンドンに聞く、タータンチェックの魅力とは?
グローブ・トロッターのスーツケースをはじめブランドのアーケードショップとして人気の、東京・表参道にある『ヴァルカナイズ・ロンドン』。MDの山本 孝さんがスコットランドが生み出したタータン柄のストールをリコメンドしてくれた。
「タータンチェックは個人的にも好きで、今シーズンはジョンストンズとベグ・スコットランドの2ブランドを取り扱っています。ジョンストンズについてはかつてグローブ・トロッターがストールを別注した経緯もあるほど非常に縁の深いブランドなので、スタッフも愛用者が多いです。ベグ・スコットランドはマフラーだけでなく、グレンフェルのコートのインナーでも取り扱いがありますが、その優れた品質に併せて、微妙な色が織りなすタータンの発色のよさや色の多様性がすばらしい。卓越した技術をもつメーカーが、スコットランドの豊かな自然の恵みを活用して高い品質のものを作り出しているので、本物を長く使いたい男性のワードローブにスコットランド製品は魅力的なものとなるのではないかと思います」
ジョンストンズ
http://johnstons.jp/
山本 孝|YAMAMOTO Takashi
英国ブランドのアーケード・ショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」MD。百貨店での経験を経て、2008年BLBG株式会社に入社。2009年ヴァルカナイズ・ロンドンのオープンを機に、MDに着任する。
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4つのキーワードで知るスコットランドファッションの真髄とは?(4)
Mackintosh Cloth & Heavy Outer|マッキントッシュクロス&ヘビーアウター
ますます進化しつづける冬の定番、マッキントッシュのアウター
スコットランド出身のチャールズ・マッキントッシュにより1823年に誕生したマッキントッシュ・クロス。そのはじまりは彼が建築家やデザイナー、画家と多才な活動をおこなうなかであらたな素材のテキスタイルを発明したことによる。そう、それが「マッキントッシュ・クロス」と呼ばれるゴム引きの防水布──それはイギリスで瞬く間に評判となり、チャールズは本格的に洋服として実用化することになった。まず最初はどしゃぶりの雨でもなかの服が濡れない乗馬用コートとしてスタートし、その実用性の高い生地に着目したイギリス陸軍や警察の制服にまで採用されるように。
通常のレインコートはキャンバス地の上にゴムやワックスを塗った生地が主流だが、「マッキントッシュ・クロス」は特殊技術によって2枚の生地のあいだに天然ゴムを挟み込んだものである。2枚のコットン生地で天然ゴムを挟み込んだ生地は独特のハリがあり、動きやすくて見た目もよい素材を作り上げたのだ。また、レインコートとしての完全防水の機能性の追求にも徹底しており、縫い目には防水テープを張り、ポケットやディテールは特殊な接着剤で接着している。こうした手間もふくめ現在でも職人の手によって一着ずつ手作りで生産されているというから驚きである。マッキントッシュのコートにはすべてに名前がついているが、そのデザインはいずれもシンプルなので、スーツでもカジュアルでもオールマイティに似合うのが魅力。またそのスタイルも日々進化しており、日本限定モデルやショップ別注、ファッションブランドとのコラボレーション布帛のモデルなど、いまやかなりのモデルが存在している。とにかくショップをたくさんまわって、お気に入りの1着を見つけたい。
エストネーションに聞く、マッキントッシュのアウターの魅力
商品部バイヤーの原雄一郎さんは数多くあるマッキントッシュのモデルのなかでも、今シーズンは3型を推薦。
「なかでもジャケット感覚で着ることのできる洗練されたPコートのモデルKeen(キーン)がお薦めです。素材も圧縮ウールの1枚仕立てであったり、いまの軽さやリラックス感を求めるニーズにとてもマッチしていると思います。マッキントッシュは創業1823年と歴史ある背景をもち、その時代時代に合わせて巧みなモダナイズを繰り返しながらも、永久定番と呼ばれる数少ない本物ブランド。こんなブランド、ほかにはなかなかないでしょう? ゴム引きコートはいまなお、スコットランド生産で昔ながらの製法というのも魅力的ですよね」
マッキントッシュ
http://www.mackintosh-uk.com/
原 雄一郎|HARA Yuichiro
エストネーション商品部バイヤー。2003年からエストネーションのバイヤーに就任。モードとクラシック双方をミクスチャーするスペシャリティストアにおいて、クラシック部門のバイイングを一手に担う。