「Laula」デザイナー・中島世都子 インタビュー(前編)
Fashion
2015年4月8日

「Laula」デザイナー・中島世都子 インタビュー(前編)

2009-10秋冬 注目のファッションデザイナー特集

「Laula」デザイナー・中島世都子 インタビュー(前編)

ほどよくエッジィに、女性らしさを大切にした服

架空の女性の名前である「Laula(ラウラ)」には、毎シーズン変化していく彼女のクローゼットを表現する、というテーマが内包されている。気分や世間のムードに影響されることはあっても、自分のスタイルがある女性。「Laula」の作品群が表現しつづけるのも、まさにそんな女性像だ。しなやかなのに、ピンと筋が通った作品を生み出しつづける中島世都子さんは、どのようにしてデザイナーになったのか。

取材・文=津島千佳写真=原恵美子

幸せな偶然がいくつも重なって、「Laula」は誕生できた

──中島さんが洋服好きになったきっかけから教えてください。

母が洋裁好きだったんですね。幼少のころ、姉とお揃いのワンピースをつくってくれたりして。ピアノの発表会のような晴れの日だけじゃなくて、普段着のスカートとかもつくってくれました。
あと伯母が服を定期的に送ってくれていて、それがとてもセンスがよくて可愛かったんですよ。ワンピースにポシェットがついていたり、立体的なアップリケがついていたり、当時の子ども服では珍しいディテールだったり。小学校の低学年のころだったかな、上級生に「かわいい」ってよく褒められて。そのあたりからファッションに気をつかうようになったというか、意識が向きはじめたんでしょうね。

──成長するにつれ、服への思いも大きくなっていったんでしょうか。

ええ。そうやっておなじ環境で育った姉もファッション好きだったので、彼女が買ってきたファッション誌を読ませてもらったりとか、とにかく服は大好きでした。だからファッションデザインの専門学校に3年通って、デザインの勉強もしました。
そこを卒業してからは、いくつかのセレクトショップで販売員として働いていたんですね。そうしたらあるとき、ユナイテッドアローズのかたから「うちで働かないか?」って声をかけてもらって。

──ヘッドハンティングされたわけですね。

たまたま共通の知り合いがいたから、というのもあるんですけど。それでユナイテッドアローズに移って、「Pippi」デザイナーの佐藤葉子さんや「Kaon」デザイナーの米山薫さんと出会ったんです。

明治通りに渋谷店があって、最初の勤務がそこで、米山さんと一緒に働いて。その後、私が原宿店に異動になって、そのタイミングで佐藤さんが入社されたんですよ。

おふたりはユナイテッドアローズのおなじ店舗で働いていたわけじゃないんですけど、昔からお友だちだったみたいで、そこで再会されたようです。すごい偶然ですよね。

──普通、販売員としてファッションに携わっても、デザイナーの道に進むことは難しいように思います。中島さんは、どのようにして販売員からデザイナーの道へ踏み出したのでしょうか?

中島世都子さん

デザイナーに限らず、心のどこかではなにかをやってみたいという野望(笑)がつねにありました。そうは言いながら、なかなかきっかけがなかったんですね。

たまたまセレクトショップを経営している友人がいて、レディスのショップをオープンさせる際に、そこで働くことになったのが転機でしたね。店舗管理とか海外仕入れのほかに、オリジナル商品のデザインも少しずつさせてもらって、3年ほどアパレルの仕組みを勉強させてもらったんです。

あるとき、「お客さんを紹介するから、中島さんも商品並べてみたら?」って展示会に誘ってくれて、貯金の範囲内で10型くらい制作したものを並べさせてもらったんですよ。そうしたら予想外にオーダーがついて。

──いい偶然が重なったんですね。

本当にそうです。あの展示会に商品を並べてもらうチャンスを与えてもらえなかったら、「Laula」ははじまってもなかったんですよ。本当にラッキーで、いま思い返してもありがたいですね。

好きなものという軸があるから、クリエイションにぶれはない

──2009年秋冬コレクションのテーマを教えてください。

今シーズンは、エレガントとフェミニティのミックスをベースに、エッジィなニュアンスやロックっぽいテイストをくわえたものにしたくって。「Laula」のブランドコンセプトである“凛とした女性像”はぶれないよう、女性らしさとハード感のバランスを調整しながらデザインしました。

ループ編みボレロ 3万3600円

パーツひとつで雰囲気が変わってくるので、スタッズにしてもギラギラ輝かせるのではなく、燻(いぶ)して落ち着いた風合いにして、ディテールにまでこだわりました。

──メインで用いた素材はなんでしょうか?

キャメルなどのウールやスパンコールのほかに、ツイードにオーガンジが重ねてあるものや、絨毯のようなジャカードなど珍しいテキスタイルも使用しました。
基本的には季節をあまり意識せず、素敵な素材であればシーズンレスでも使ってしまいますね。

──今季に限らず、「Laula」のクリエイションソースは、主にどこから引っ張ってきますか?

そのときの気分やムードを大切にしながら自分が着たいものを取り込むのが、私のデザインの基本。雑誌を見ながら、「このひとに着せるならどんな服がいいかな?」と考えることはありますけど、テーマを設定してデザインすることはないです。素材が先に決まることも多いので、そこからイメージを膨らませていくこともあります。
好きなものが柱にあるので、シーズンによってがらっとイメージが変わることはありませんが、いい意味で進化していきたいなと思います。

──作品ができあがった瞬間と、オーダーが多くついた瞬間どちらがうれしいですか?

うーん、難しいですね。作品ができたときもオーダーがついたときも、どちらも単純にうれしいですよ。

ラフ画からはじまり、テキスタイルを選び、細かいディテールなど頭を悩ませて生まれた子どもたちが高評価をいただけたときには、とても幸せな気持ちになりますし、次なるコレクションへの糧になります。

オーダーが多いってことは、街で見かける確率も高くなるわけで。自分のデザインした服を着ているひとを見つけることほど、デザイナー冥利に尽きることはありませんから。

ラメジャガード スカート 3万450円

──やっぱり「Laula」らしいアイテムのほうが、受注がつきやすいんですか?

それはお客さまによるかな。製品のクオリティとプライスのバランスが取れているものじゃないとだめだし。価格も受注を左右する大きなファクターですね。

「Laula」デザイナー・中島世都子 インタビュー(後編)につづく

取り扱い店舗

ユナイテッドアローズ本店ウィメンズ館
Tel. 03-3479-8176
伊勢丹新宿店4F リ・スタイル
Tel. 03-3225-2558
アクアガール新宿
Tel. 03-5908-4718
エストネーション商品コールセンター
Tel. 03-5220-0205

           
Photo Gallery