「Kaon」デザイナー・米山薫インタビュー（後編）

2009-10秋冬注目のファッションデザイナー特集

「Kaon」デザイナー・米山薫インタビュー（後編）

ブランドの垣根も超えて、ミックスコーディネイトできる服

カットソーの背中についた3つのリボン。「Kaon」の象徴ともいえるディテールに対して、米山さんはどう考えているのか？ 2009年秋冬コレクションとともに、その思いを語ってもらった。

取材・文＝津島千佳写真＝原恵美子

世界観を広げるために、新しいものにもチャレンジしていく

──2009年秋冬コレクションについて、お聞きしていきます。今季のテーマはなんでしょうか？

言葉としてのテーマはとくにないですが、ミックス感のあるコレクションにしたくって。
私の好きな生地ばかりじゃなく、あえていろんな生地を使って異素材ミックスのアイテムを提案しています。あと「Kaon」だけじゃなくて、ほかのブランドさんのアイテムとミックスしてコーディネイトしてほしいという気持ちもありますね。

──今季の代表的なモチーフはなんでしょうか？

打ち出しているつもりはないんですけど、カットソーの背中にリボンがついているイメージが強いみたいで、それになっちゃうのかな？いま、リボンは流行ってるし、個人的にも好きだけど、とくにそれに固執してるわけではないんです。ただバイヤーさんからの支持も高いアイテムだし、リボン付きカットソーは毎シーズン色ちがいでつづけてます。でもいつまで人気があるのか不安なので、毎回バイヤーさんに聞くんですよ、「まだイケますか？」って（笑）。買い付けてもらえるうちは、定番的な扱いでつづけると思います（笑）。
あと今季ならではだと、スパンコールやツイード、ニットのオーダーも多かったですね。

──ニットにも、スパンコールがあしらってあるんですね。

そうですね。ニットにはファーも付いているんですけど、これも挑戦だったんですよ。
ダウンやデニムのパンツとか、「Kaon」が手を出さないジャンルがあって。ファーやレザーもそのなかに入ってたんですが、今季はあえてチャレンジしてみました。
ファーづかいの上手なブランドはたくさんあるし、もしかしたらみんなの「Kaon」に対するイメージとは違うかもしれないけど、どんどん新たな素材にチャレンジしたい気持ちがいまは強いんです。

──私も「Kaon」はワンピースやブラウスなどの、フェミニンなアイテムのイメージがあります

そうそう。もちろん個人的にも好きだし、オーダーも多いけど、新しい「Kaon」を表現していきたいというか。
さっきも話したリボン付きのカットソーにかんしても、お店から別注を依頼されるときに「リボンカットソーで」ってオーダーされることが多いんです。たしかに代表的なモチーフとして認められてるのは幸せなことなんですけど、やっぱり新しいものを出していかないとブランドとしてもおもしろくないじゃないですか。いまは殻が固くなる前に脱皮しようとしている状態かもしれませんね。

10年後よりも、次のシーズンが大事

──現在、商品の取り扱いがある店舗を教えてください。

おかげさまで、ユナイテッドアローズ、アクアガール、伊勢丹リ・スタイル、ビームス、エストネーション、バーニーズ　ニューヨークで扱っていただいています。

──じつは、「Pippi」の佐藤葉子さんにも同様の質問をしたら、ほぼおなじ順番で答えられました（笑）

すごいですね（笑）。ブランド立ち上げ当初、佐藤さんとはおなじ部屋で展示会をしていて、ふたり一緒に取引先を開拓してたんですよ。いま言った順番は取引をはじめた順で、「Pippi」も同じだから、それもあるのかも（笑）。佐藤さんとは今でも仲良しで、身内みたいな関係です。

米山薫さん

──ファッションデザイナー米山薫としての目標はありますか？

とくにないんですよ（笑）。2003年にブランドを立ち上げて以来、毎シーズン一生懸命やっているだけで。それをお客さまによろこんでもらえて、それが繋がって現在があるかんじなんですね。だから5年、10年後のビジョンがあるわけじゃなくって、目の前のことを懸命にクリアしていくことの連続です。
今も、「早く春夏の展示会がはじまらないかな、次もみんなに気に入ってもらえればいいなぁ」ってことばっかり思ってて。しばらくはそれがつづいていくんじゃないかな。

──最後に、米山さんにとって洋服とは？

たかが洋服、されど洋服。個性を映すアイテムなので、重要ですよね。それを着てハッピーになれるか、なれるような服をつくりつづけていきたいですね。

──ありがとうございました。