ルックブックに込められたメッセージを

今回、「FOX BROTHERS（フォックスブラザーズ）」の生地をメインとしたスタイリングを考えているとき、二村 毅氏が何度も2014年秋冬のルックブックを真剣に見ているのがとても印象に残った。

「スーツのスタイリングで気をつけているのは、ブランドの“持ち味”を損なわずに出すことです。マーガレット・ハウエルなら程よいボックス感とか、ドロップをかけていないシルエットなどをしっかり出したい。

セットアップでも、シャツにネクタイだけではなく、セットアップにクルーネックセーターを合わせてスポーティで若々しい印象をくわえるなど、今回はセーターのレイヤリングをしてみました。またジャケットでも襟もとが堅くならないようラウンドカラーのシャツを合わせたり、“ルックブック＝今季のマーガレット・ハウエルさんのメッセージ”をしっかり見て感じて、襟もとのちょっとした変化など、スーチングのルールを知っていて崩していくのを見せるのが、おもしろいですね」

“手数少なく”おしゃれに見せるコツ

今シーズンの「マーガレット・ハウエル×フォックスブラザーズ」の印象は、「英国調の厚みのある素材感をマーガレット・ハウエル流にモダンに仕上げた感じ」と語る。

「グレンチェックの色のコンビネーションなどを見ると、伝統的なフォックスブラザーズと密にコミュニケーションを取りながら別注したんだな、というマーガレット・ハウエルさんの手応えが伝わってくるようです。

ブランドにとって“らしさ”はとても大事で、フォックスブラザーズの生地を使ったセットアップには、男らしさ、柔らかさ、動きやすさなどがあって、英国の生地が現代的なシルエットに落とし込まれている。そのバランスが今っぽいし、素材とあいまってすばらしい。

セットアップを着るときは、手数が少ないほうがきれいに決まります。とくにマーガレット・ハウエルのセットアップは、ネクタイのディンプルを決めたりせず、身頃のトーンと違うネクタイを合わせるとクラシックに転ぶので、色や素材のトーンを生かしながら、手数少なく着た方が、ハウエルなりのモダンさ＝英国ミニマリズムをより楽しめるでしょう。

また今回は、ジャケットにジーンズ、モッズコートにスラックス、バブアーにチノパンなど、王道な着こなしの一つだけど、ジャケットでも堅くならず、モッズコートを着ても柔らかすぎず、トーンを合わせたコーディネイトもポイントです」

久しぶりのパリで感じたこと

二村さんのファッション歴を聞くと、大学時代は渋カジ・アメカジにはじまって、裏原ではバギージーンズにナイロンアウターのスケーターのような格好を、それからA.P.C.やコスチューム ナチュラル、ヘルムート ラングなどデザイナーズに移り、コーデュロイスーツのセットアップや真っ黒な格好をしていたと笑う。

「それから、ブーツカットジーンズにウエスタンブーツ、ブルックスブラザーズのウィメンズのシャツにエルメスのスカーフを合わせるオールドアメカジから、フレアジーンズにエミリオ・プッチやミッソーニのウィメンズシャツを着るというサイケな格好を経て、現在のようなシンプルなカジュアルに落ち着きました。

最近は仕事でニューヨークに定期的に行っていて、パリは久しぶりでしたが、黒や紺のスラックスに白のスタンスミスを合わせている人が多くて、とくに女性のファッションに影響を受けました。

サブカルチャーから派生したファッションはNYが断然おもしろくて、NYの街を歩いているひとは、自分を表現してペイメントを得たいという個性を主張しているところに目が行きます。いっぽうでフランスはそういう主張がない分、王道なものをスポーティにはずすとか、洗練感があって、良い意味で甘い。とてもおもしろくて参考になりました」

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