MARGARET HOWELL｜雑誌『HUGE』右近亨が語る、メンズファッションの新潮流とマーガレット・ハウエル

雑誌『HUGE』がマーガレット・ハウエルを支持する理由とは？

右近亨が語る、メンズファッションの新潮流

8月24日に発売された10月号で創刊9周年を迎えた講談社の雑誌『HUGE（ヒュージ）』。今年2月発売号のセンセーショナルなリニューアルが大きな話題をさらったことも記憶にあたらしい。この人気ファッション雑誌のディレクター右近亨氏に、現在のメンズファッションの動向をうかがった。

Text by KAJII Makoto （OPENERS）Photographs by JAMANDFIX

ファッションとはつねにカウンターである

今季の大きなトピックスとしては、ジル・サンダーがラフ・シモンズの後任として創業デザイナーのジル・サンダーを迎えたり、イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターにエディ・スリマンが復帰し、全ラインを統括するなど、あたらしい動きが顕著です。そこに、メンズファッションの変化の兆しがあると『HUGE』では捉えています。

いわゆる“00（ゼロゼロ）年代”は、エディ・スリマンのロックでスリム＆コンパクトなスタイルの影響力が強く、“10年代”はそこから脱却・反動として、シルエットが大きくなる傾向があり、サルエルパンツやツータックパンツなどがヒットしていますが、“10年代”を代表する明確なスタイルは、私たちもバイヤーもまだ感じ取ってはいません。ビッグシルエットがここから加速していくのか、90年代後半のようにミニマム化するのか、それぞれに芽はありますが、まだまだ兆しの段階で、大きな流れになるのかさえまだわかりません。ただ、転換期であることはたしかです。2014年にはエディのイヴ・サンローランでのあたらしいコレクションが出てくるので、彼の提案には期待して見ていきたいですね。

ファッションコンシャスではないけど、おしゃれが好き

その一方で、マーガレット・ハウエルのように時代にとらわれず、どちらかというとトラディショナルなブランドもスタイルが“太く”なってきています。今年はエリザベス女王即位60周年やロンドン・オリンピックなど大きなイベントで盛り上がったのと同時に、イギリスの昔からの地場産業的なアウターやニットブランドなども活性化して、伝統や技術を今にアップデイトして受け入れられる時代になっています。いわゆるトラッドという範疇では、イギリスブランドはここ数年で一番取り上げられる回数も多く、ファンも増えているのではないでしょうか。その背景には、「ファッションコンシャスではないけど、おしゃれが好き」というライトな層が増えていることも関係していると思います。

マーガレット・ハウエルの展示会は毎回拝見していますが、シャツの襟型ひとつをとっても「これはこれでいいんだ」という視点に立っていて、そこから素材や色を選んでいる、作り手の自信を感じます。それが買うひとにきちんと伝わって安心感となっていて、質が良くて、時代に合っているものを求める声にしっかり応えていますね。

「今何がいいのか、何が本物なのか」という嗅覚

今春『HUGE』をリニューアルして、私たちが面白いと思うクリエイターやデザイナーを、ファッションやトレンドなどにかかわらず、編集部のスタンスでストレートに取り上げたことによって、「これは誰？」と読者が面白がって買って、読んでくれているようです。6月に発売した94号では「ビリー・チャイルディッシュ」の特集も反響を得ました。

マーガレット・ハウエルも、他分野で活躍するデザイナーとのコラボレーションシリーズ「MARGARET HOWELL PLUS」で、庭園デザイナーのダン・ピアソン氏（Dan Pearson）と組んだり、コンバースやオールデン、バブアーなど伝統あるブランドとコラボするなど、「こういうひとと、こういうものをつくりたい」という独自のスタンスによるクリエイターとのコラボレーションは、精神として『HUGE』と相通じるものがあります。

ブランドに対するリスペクトや、「今何がいいのか、何が本物なのか」という嗅覚は似ている部分があると感じているので、これからも積極的に取り上げて紹介していきたいと思っています。