未来へ遺したい永久保存版『100年ドラえもん』|MEDICOM TOY
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2020年5月27日

未来へ遺したい永久保存版『100年ドラえもん』|MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

親から子へ、世代を超えて受け継がれる物の代表格といえば腕時計とジュエリーだが、幼い頃から愛着ある書籍もまた、未来の子孫に託したい宝物になり得る。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by KAWASE Takuro

国民的漫画として親しまれている、藤子・F・不二雄先生による『ドラえもん』。その連載が始まったのが、1970年1月号の『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』『小学三年生』『小学四年生』という6つの雑誌で、今年で50周年にあたる。このアニバーサリーイヤーに際し、小学館から「てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット『100年ドラえもん』」が、12月1日に発売されることが決定した。(*第一次予約締切:8月31日までとなる)
てんとう虫コミックス(以下てんコミ)は、1974年8月に誕生したマンガの新書判レーベルで、『ドラえもん』はその第1弾としてラインナップされた。単行本化の際には、藤子・F・不二雄先生が自ら収録エピソードを厳選し、収録順も指定したというまさにベスト・セレクション的な全45巻である。
昨年11月27日に発売された『ドラえもん』0巻(各雑誌の対象読者別に描き分けられた6種類の第1話を収録)が、たちまち60万部の大ヒットとなり、それに伴い第1巻の今年3月の月間売り上げも1万部を突破。“てんコミ”の愛称で親しんできたOPENERS世代も、懐かしさのあまり思わず手にした人も少なくないはず。
まさに世代を超えて愛されるこの名作を、100年先の未来まで読み継がれる永久保存版として届けたいというコンセプトのもと、本プロジェクトが始動。『ドラえもん』ファンに馴染みの深いてんコミと同じサイズのまま、装丁・印刷・製本・用紙など徹底的にこだわった仕様となっている。
最新情報は『100年ドラえもん』特設ページにて随時アップされているが、ここでは小学館 ドラえもんルーム主任で『100年ドラえもん』のマーケティング業務全般を担当している今本統人さんに、コレクター心をくすぐるスペックや特典、そして本企画に込めた想いをうかがった。
©Shogakukan Inc. All rights reserved. ©藤子プロ・小学館
「最大の特徴は長期保存に耐え得るよう、布クロス装のハードカバーを採用したことです。表紙に張る布は、目が細かく毛羽立ちにくく、手触りが良いものを選びました。表面には汚れがつきにくい防汚加工を施しています。表紙のイラストは、各巻それぞれに収録されている話の中から象徴的なコマの絵を選んでシルクスクリーンでプリント。巻数、背表紙のタイトル、てんとう虫マークは金の箔押しを施しています」
「さらに注目すべきポイントとしては、本のページ上部(いわゆる“天”と呼ばれる部分)に「天金」を施したことです。よく手帳などでご覧になることがあると思うのですが、この加工によって、見た目がゴージャスになるだけでなく、ページ内部に湿気やほこりが入ることを防ぎ、しみの発生を抑制します。できるだけ長く、最初に作られたときの状態を保つための工夫です」
「製本に関してもこだわりがあります。『ドラえもん』は見開き始まりのお話も多いので、藤子・F・不二雄先生が描かれた原稿をじっくりと鑑賞していただけるように、“かがり綴じ”という製法を採用しました。通常のコミックスは無線綴じといって、糊で本を綴じていますが、かがり綴じは糸を使って綴じるのでページを開いたとき、“のど”と呼ばれる中央の部分が読みやすく、なおかつページが外れにくいんです。『ドラえもん』は小さいお子さんが手にする機会が多い作品ですので、しっかりとした製本にすることによって100年先もできるだけ同じ形状のまま読んでいただけるようにという思いを込めています」
装丁は人気ブックデザイナー・名久井直子さんが担当していることも、本好きには嬉しいニュース。今回も作者の意図を組み、できるだけたくさんの人が手に取る本にしたいと心がけている名久井さんらしい、匠の技が随所に感じられるものとなっている。
「小学館では昨年、小説家・辻村深月さんの『小説「映画ドラえもん のび太の月面探査記」』という本のデザインを名久井さんにお願いしました。この本の面白いところは、表紙を開けるとドラえもんのひみつ道具“どこでもドア”が印刷されているんですけれども、なんとこのドアの部分にミシン目が入っていて開く仕掛けになっているんです」
「実は名久井さんは大のドラえもんファン。作品への愛情に溢れ、遊び心のあるデザインを高いクオリティで実現してくださる方なので、『100年ドラえもん』をぜひ装丁していただきたいと思い、お願いしました。名久井さんは印刷や紙への造詣が深く、紙の本でどれだけ面白いことができるかを常に考えている方なんです。現時点で発表されているのは第1巻、第16巻、第31巻の表紙と背表紙だけですが、特典・収納ケースなどでも魅力的なアイデアをいろいろ準備いただいていますので、楽しみにしてください」
豪華特典として、ここでしか手に入らない別巻3冊が用意されていることも見逃せない。
「まず、別巻が3冊付属します。別巻その①は、厳選カラー“幻”画集『ドラ絵もん』です。ドラえもんだけで一冊まるごとのカラー画集は、今まで一度も発売されたことがなかったので、ファンの方にはきっと喜んでいただけると思います。別巻その②は『ドラえもん』第0巻豪華装丁版。このセットに0巻は入らないのですか?というお問い合わせを多数いただいておりますが、こちらも全45巻と同じく布クロス装・ハードカバーで制作いたします。別巻その③は、完全索引別巻『引くえもん』。てんとう虫コミックス『ドラえもん』全45巻に登場するひみつ道具&キャラクターをすべてリスト化し、50音で引ける索引巻です。例えば「どこでもドア」「ジャイ子」が出てくる話は何巻の何ページに載っているのかを調べることができます」
左:特典として付属する、厳選カラー“幻”画集『ドラ絵もん』。右:布クロス装・ハードカバーによる『ドラえもん』第0巻。
加えて、フィギュア好き、ひみつ道具好きにはたまらないアイテムも付属する。
「別巻以外にも『ドラえもん&のび太』100年後もまんがを読んで爆笑フィギュア!(メディコム・トイ製)、超大型タイムふろしき(110×110cm)を用意しました。メディコム・トイさんには15年以上前から『ドラえもん』をはじめ、藤子・F・不二雄作品のフィギュアを作っていただいており、原作の持つ雰囲気を見事に再現しているためファンからの評価が非常に高いんです」
「今回は“コミックスが時代を超える”というコンセプトの下に、てんコミ第40巻に収録されている『タイム・ルーム 昔のカキの物語』の作中で、『タンキくん』という作品の単行本を読んでいる二人を、てんコミ『ドラえもん』第40巻に変更したうえでメディコム・トイのUDF(ULTRA DETAIL FIGURE)としてフィギュア化しました。他のUDF「ドラえもん」シリーズ同様、ブリスターパック入りなのでパッケージのまま飾っていただくことも可能です」
「そして『超大型タイムふろしき』(110×110cm)は、赤い方をかけると中のものの時間が巻き戻り、逆に青い方だと時間が先に進むという、ひみつ道具の中でも特に人気の高いアイテムを原作のイメージに近いかたちで再現しました。『100年ドラえもん』はコミックス15冊ずつ、3つの専用美麗ボックスに入っていますが、この3つのボックスをタイムふろしきで包んだかたちでお届けするので、開封作業そのものがとても夢のある体験になると思います」
さらに購入者限定で『100年ドラえもん』専用「どこでもドア型本棚」を別途販売することも決定した。
「こちらはメディコム・トイさん、国内家具業界最大手のカリモクさん、小学館での共同開発となり、発表と同時に大きな反響をいただいております。高さは約80cmで、全45巻と別巻3巻がすべて収められます。実はこの『どこでもドア型本棚』は企画の初期段階で、“これをセットで付けられたら面白いよね”という話はしていたものの、実現は難しそうだという話になっていました。しかし、今回の『ドラえもん&のび太』フィギュアを作っていただく打ち合わせの際、実はこんな案がありましてという話をしたところ、メディコム・トイの赤司社長が“それは絶対欲しいですね、カリモクさんならきっといいものを作ってくれますよ”とおっしゃってくださったんです。カリモクさんも早々にサンプルを仕上げてくださり、非常にいいものが出来上がりました。こちらは『100年ドラえもん』に同梱される申込書による受付予定で、価格は決まり次第発表いたします」
これ以上のものは望めないと思われるほど愛情溢れた仕様からは、制作スタッフの並々ならぬ情熱が伝わってくる。単なる豪華版にしただけでなく『ドラえもん』だからこそ100年先まで、それも紙の本のかたちで未来に届けたいという思いについて語ってもらった。
「なによりまず藤子・F・不二雄先生、そして『ドラえもん』という作品への敬意です。これだけ面白い作品を未来の読者につなげたいという気持ちで、全力で取り組んでいます。そのためにこれからの出版業界として何ができるか……。今20代以下の方は、テレビアニメや映画でドラえもんというキャラクターには親しんでいても、原作漫画を読んだことがないという方が非常に多いんですね。それは何故かというと、親御さんが紙の本を買う習慣がないことや、本屋さんが減ってしまったことによって、原作のドラえもんとの距離がどんどん遠くなってしまっているという現状があるからです」
「実は、電子書籍市場が急速に成長している中、紙の本で際立って売り上げ好調なジャンルが児童書なんです。やはり絵本などはデジタルデバイスよりサイズも大きいですし、小さいお子さんにとっては、紙の方が手で触れて親しみやすいこともあるんでしょうね。実際、全国一斉休校が発表された3月上旬から小学生を含めた子ども向けの本の売れ行きがすごく伸びているんです」
「休校で家にずっといる子供たちにとって、紙の本の重要性はかなり高まっているのでしょう。電源や電波がなくても読めますし、物としてある以上、家族や友達間で気軽に貸し借りできる。これを機に『100年ドラえもん』を買ってくださった方の中には、こういう素敵なデザインのものが自宅にあれば、子供も自然と手にして読んでくれるだろうという方もいます。紙の本で届けることで、それが100年先まで続いたらいいなという願いを込めて、藤子・F・不二雄先生、出版社としての想いを未来に繋げたいと思っています」
「紙の本が読まれることによって、先々の未来に生きている人たちの人生に影響を与え、その作品がきっかけとなり、文化に大きく貢献することもあると思うのです。実際に『ドラえもん』を読んで科学者になった方、宇宙飛行士を目指した方もいらっしゃいますから。そういう未来の誰かに対して、藤子・F・不二雄先生が描いて、ご自身でセレクトしたこのてんとう虫コミックス『ドラえもん』全45巻というマスターピースを届けることによって、未来の世の中に良い影響を与えることができるかもしれない。そうした希望をこの仕事に込めて、チームみんなで頑張っています」
藤子・F・不二雄作品には未来を予見したものも非常に多い。『ドラえもん』でタイムパラドックスやワープの概念を知った読者も多いだろう。コロナ禍に伴うソーシャルディスタンス問題も、磁石のN極・S極と同じ働きをするひみつ道具「NSワッペン」さえあれば……なんて想像するだけで頬が緩んでしまう。親子で同じ作品を読み、あれこれ感想を言い合えることは、心の豊かさにつながる格好の体験になるだろう。最後に今本さんに子どもを持つ親世代にオススメのエピソードを教えてもらった。
「有名な話ですけれども、やはり『のび太の結婚前夜』(25巻収録)、『ぼくの生まれた日』(2巻収録)でしょうか。親御さんはこの話を読むといろんなことを想像して、うるっとくると思います」
12月1日の発売に向けて、着々と進む制作工程。ワクワクする仕様も続々決定している。ハードカバーを包む布地は、メディコム・トイがテキスタイルを提供。また、長年愛されてきた「てんとう虫コミックス」の表紙・裏表紙の絵もカラー口絵として収録されることになり、「てんコミ」版にある要素をすべて内包することに。コミックスを15冊ずつ収納する3つの専用ボックスのデザインも、愛読者が手にして楽しいものになるとのことなので、いまから楽しみなところだ。今本さん曰く「孫の孫の代まで」読み継がれるであろう夢の企画。数量限定生産品につき、是非とも全国の書店、ウェブにて予約しておこう。
©Shogakukan Inc. All rights reserved. ©藤子プロ・小学館
                      
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