2020の邂逅は必然か偶然か? あの伝説的コラボが再び!|MEDICOM TOY
DESIGN / FEATURES
2020年1月17日

2020の邂逅は必然か偶然か? あの伝説的コラボが再び!|MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

mastermind JAPAN 本間正章 インタビュー

Photo by FUMIHITO ishii | Text by SHINNO Kunihiko | Edit By KAWASE Takuro

1997年にブランドをスタート。MADE IN JAPANにこだわり続け、日本の素材、伝統技術、最新技術をリアルクローズに落とし込み世界に発信してきた「mastermind JAPAN(マスターマインド ジャパン)」。
設立15周年の節目にあたる2013SSにコレクション活動を休止。 そして2017AWコレクションから再始動。 2017年、mastermind JAPANの復活と同時にグローバル市場向けのラインとして「MASTERMIND WORLD(マスターマインド ワールド)」が立ち上げられた。
今回はMEDICOM TOYとのコラボレーションによるBE@RBRICKの発売を記念して、デザイナー本間正章氏にブランドの休止と復活を経た現在の心境についてうかがった。

表層的なストリートラグジュアリーへの反発

本間 僕としては「こんないい服作っているブランドが出てきたんだ」とか「こんなすごく面倒くさいことにこだわるデザイナーがいるんだ」とか。そうした新しい才能が出てくることを楽しみにしていたんです。負けず嫌いなので、自分がやってきたことに代わるブランドが出てきて、「負けたくないから、うちもやろうか」みたいなタイミングを待っていたんですけど、なかなかそういうブランドも出て来なくて……。
ラグジュアリーストリートを謳った商品を、店頭で見て触って、「これでこの値段?」みたいな。うちは値段のことはとやかく言えないんですけど(笑)。だったら、自分がやるしかない。ただ、その時点で休止した時とはメディアへの露出から発売の仕方から、すべてが変わってしまっていたので、自分もトライをするのであればゼロからはじめるつもりでやるしかない。昔のやり方はたぶん通用しないだろうなという思いで、もう一度パリで展示会をやるようになったんです。
──mastermind JAPANと言えば本間さんのデザインしたスカルが象徴的ですが、先ほどおっしゃっていた、スカルをほぼ使わないコレクションをやりたいと思った理由を聞かせてください。
本間 実は休止前、ちょっと追い詰められていたんです。mastermind JAPAN10周年くらいの頃から、コラボレーションや別注の打ち合わせをしても、“結局はお金”みたいな話になることに疲れ果ててしまって。ブランドを始めて10年もつとは思っていなかった中で10周年を迎えられて、ここからはお客様と取引先に恩返しができるという時期ではあったんですけれども、この精神状態でできるとしたらこの辺が限度かなと思ったので、15年という区切りで休止させてもらいました。

復活するまでは、スカルを見るのも嫌だった

本間 でも、休止中にいろんなブランドがうちと似たようなことをしているのを目にするたびに、「やっぱりうちのスカル、かっこいいじゃん」と少しずつ思えるようになってきて。もう一回、ゼロからスカルと向き合って世界に発信しなきゃいけない。とはいえ、mastermind JAPANの15年という歴史は消せないし、復活するならお客様もさらに期待をするだろうから、納得してもらえるものを生み出していかなきゃいけない。そういう部分でも、もう一度自分はこのスカルが一番好きだと思えないとデザインしちゃいけないと思っていたので、時間はかかりましたね。
──本間さんがmastermindのスカルに並々ならぬ思いを込めているからこその判断だったわけですね。
本間 もともと、自分の中で誰よりもかっこいいと思えるスカルを作り出せなければ使っちゃいけないマークだと思っていたし、ただ単にスカルを使った服を作ることは許されないと思っていたので。
mastermindのスカルを商標登録申請するとき、「こんなありきたりなマークで取れるわけない」とも言われたんです。なので、その時点では日本国内で登録されている90数種類のスカルを全部並べて、「もし、ちょっとでも似ているものがあれば教えてください。これがmastermindのオリジナルのスカルですと胸を張って言えるので」と弁理士の先生に伝え、見ていただいたうえで申請してもらったんです。mastermindのスカルについては、いろいろ勝手な噂を流されたこともありましたけれど、それくらいのことは覚悟していました。
──復活と同時にMASTERMIND WORLDを別に立ち上げた理由はなんだったんですか?
本間 もともと休止する前からMASTERMIND WORLD表記のデザインも多かったんです。政治的な外交問題が起こった頃、海外のお客様から「mastermindは好きなんだけど、このタイミングでJAPANとグラフィックに入っていると着づらいんだよね」みたいな声が聞こえていて。
じゃあどうしたらファンの人たちに着てもらえるのかということで、グラフィックはほぼ「MASTERMIND WORLD」に変えていたんです。なので、復活するにあたって、そういうストレスをとってあげたい。だったらインターナショナルに卸しをする商品はMASTERMIND WORLDにして。国内で流通するラインと分けてやろうかっていうことになったんです。
──ラグジュアリーストリートのお話も出ましたが、昨今のアートとファッションがすごく近くなって、ストリートに欠かせない要素になっている現状をどう思われますか?
本間 アートがファッションに寄っているのか、ファッションがアートに寄っていったのか、僕にはわからないんですけれども、それで良いものができるのであればやればいいと思うし、そうでなく「こういう風潮だから何かやろうか」というのであれば、それはどうなのかなと思うし。ウチとやりたいアーティストが現れて、感性が合って面白いことができそうだなと思えば、それはコラボレーションの醍醐味だと思うので受けると思うんですけれど、無理してやる必要は感じていません。特にアートに興味がないというか、何に対してもあまり執着がないのです。
──確かにmastermindの場合、ロックのフィーリングはあっても、特別なカルチャーが根底にあるということはないでよすね。あるのは本間さんのイメージと、黒と、スカル。
本間 特定のものはないですね。うちのスタッフが「この人が(mastermindを)着てくれていますよ」と教えてくれて、そのアーティストの作品を見たり、楽曲を聴くことはありますけれども、自らあんまり興味がわかないんです。
──グランジは好きなんだろうとは思っていたんですけれども。
本間 僕ら世代のデザイナーさん達はみんな同じところを通っているし、切っても切れないというか。だからといって、そこを強く出しすぎるのも違うし、他がやったことをもう一回うちがやるのもどうかと思うし。最適なタイミングがあればやるといった感じですね。

好きなものは、それほど変わらない

──mastermindのアイテムは、ベーシックなアイテムを本間さん流にリミックスして、クラフトマンシップで別次元のものにしてきましたが、復活後にデザインの方向性で変化はありましたか?
本間 ファーストコレクションの写真を見返すと、やっていることは全然変わってないんです。自分自身、作る服の好みは本当に変わってなくて、変わったのは自分の体型くらい(笑)。ただ、当時できなかったことだったり、自分がやりながら覚えていった知識だったり、失敗の経験を踏まえて、少しずつレベルアップしてきたつもりです。
ウチのお客様が本当にありがたいなと思うのが、「ここをこうして欲しかった」という部分があったとして、次のシーズンにリベンジした進化版を出すと、また買ってくださるんです。普通だったら既に持っている、似た商品は買わないと思うし、そこに甘えちゃいけないんですけれど、本当に優しいお客様がいらっしゃるので、毎回恩返しのつもりでさらによいものを作ろうと頑張れるんです。
──あくまでもmastermindらしさはそのままに。
本間 もちろん、休止する前と復活してからのコレクションのサイズ感は全然違う。見る人が見れば分かる変化は出しているつもりです。けれども、シルエットやパッと見てmastermindっぽいと感じてもらえる部分は変わってないと思います。でも、どんな人でも、結局好きなものってそれほど変わらないものですよね?
──2018年3月、東京ミッドタウン日比谷にオープンした日本初の旗艦店「MASTERMIND TOKYO」についても教えてください。
本間 正確にいうと、ここは旗艦店ではないんです。ご縁があってTSIホールディングスさんから何か一緒にやりましょうという話を休止前くらいからいただいていて。ブランドが復活するにあたって、mastermind JAPANとMASTERMIND WORLDの商品のみを取り扱うお店をやらせてほしいということになったんです。こういう形態がマカオと香港にもあって、3店それぞれ違うオーナーさんなんですけれども、お客様から見たら直営店に見えるのかもしれないですね。
──そうだったんですね。
本間 なので、どのお店も内装について基本的に僕は口を出していません。いちおう確認だけはしますが、見ておかしくなければその会社が思うイメージでやってもらえればいいですよって。さすがに店内一面ピンクだったら、意見したかもしれないですけれど(笑)。「MASTERMIND TOKYO」に関しては、店内中央の場所にゲーム機を置こうとしていたのですが、それよりもビリヤード台の方が服も置けるし、いいんじゃないですかと言ったくらいです。
──今回、久しぶりにMEDICOM TOYとのコラボレーションでBE@RBRICKがリリースされますね。
本間 2004年からですから、もう15年ですね。
──数々のモデルがありますが、これまでで本間さんが一番思い出深いモデルはどれですか?
本間 やっぱり最初のコラボですね。「BE@RBRICKを作れる」って、すごく憧れじゃないですか。ようやく認めてもらえた、みたいな。多分、いまのデザイナーさんたちはみんな「頑張って、いつかMEDICOM TOYさんとBE@RBRICKを作る」というのは目標設定の中に入っていると思います。僕もその中の一人だったので。
2004年12月発売
BE@RBRICK [SERIES 9](クローズタイプ) 入手不可

BE@RBRICK TM & (C) 2001-2020
MEDICOM TOY CORPORATION.
All rights reserved.
──メディコム・トイとの取り組みは、どういう経緯だったのですか?
本間 うちの展示会に赤司さん(赤司竜彦MEDICOM TOY代表取締役社長)がいらしていただいたことでした。やっぱり、名だたる会社と一緒に仕事ができるのは、すごくモチベーションにもなるし。ただ、その時はがむしゃらだったのでわからなかったんですけど、冷静に考えると、コケたら相手に迷惑をかけてしまうじゃないですか。だから、今の方がコラボレーションに関しては怖いです。「これ売れなかったらどうしよう?」みたいな(笑)。
──昨年12月の発売されたMASTERMIND WORLD×BE@RBRICKの第一弾「BE@RBRICK MASTERMIND WORLD 100% & 400%」の背中には「繁栄」という言葉が漢字で書かれています。
本間 僕が好きな言葉なんです。自分が繁栄したいということではなく、この商品を選んでいただいたお客様がますます繁栄されますようにというポジティブな願いとして。特にファッションは平和の上でしか成り立たないものなので、いい言葉だなと思って使っています。
全高約70mm/280mm。2019年12月発売・1万8000円(税別)MEDICOM TOY PLUS及びMASTERMIND TOKYO、mastermind pv storeにて販売。
※数量限定商品のため、在庫が無くなり次第、販売は終了となります。
BE@RBRICK TM & (C) 2001-2020
MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
──そして今年2月発売予定のmastermind JAPAN×BE@RBRICKの新作はブランド復活後初、約6年ぶりのリリースです。今回のWHITE CHROME Ver. は初のカラーになりますね。
本間 僕は既に誰かがやったことがあるものを敬遠する癖があるので、MEDICOM TOYのスタッフの方にはいつもすごく気を遣ってもらっています(笑)。今までのmastermind JAPAN×BE@RBRICKは、結構マットな感じが多かったので「もっと華やかな艶がほしいですね」とリクエストして、特殊なコーティングをしてもらっています。復活して初めてのBE@RBRICKなので、ちょっといいパワーをもらいたい、みたいな(笑)。
各全高約70mm/280mm。2Gにて2020年2月発売予定・1万8000円(税別)
※数量限定発売につき、品切の際は何卒ご容赦ください。
※製品の特性上、細かい傷や擦れ痕が本体に残っている場合がございます。予めご了承ください。
問合せ先/2G
TEL.03-6452-5003
BE@RBRICK TM & (C) 2001-2020
MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.

SNS時代に問われる世界基準のクリエイション

──MEDICOM TOYとのコラボレーションは、本間さんの中でも特別な想いがあるのでしょうか。
本間 思い返すと節目節目でお話しがあって、お仕事をさせてもらえている唯一のコラボレーションのお相手なんです。「本当にウチでいいんですか?」と聞きたくなるくらい(笑)。なので、またこうしてご一緒できて嬉しいです。これまでのコラボレーションは、日本で発売したものが意外にも、海外のアーティストの部屋に飾ってあることも多かったんです。MASTERMIND WORLDは海外での販売もあるので、今後の展開が本当に楽しみです。
──コレクションの写真をSNSにアップしている海外ファンもたくさん目にしますね。
本間 休止前と復活後で最も大きく変わったのは、SNSの普及に代表される情報伝達のスピードですよね。例えば5年前だったら「なんか復活したらしいね」で、じわじわ広がっていったのが、いまは一瞬で世界同時に伝わってしまう。
通常だったら、ファッションの世界で5年近くコレクションを休むって、致命傷だと思います。新興のセレクトショップもいっぱい出てきていたし、海外ではどういう反応だろうなと思っていたんですけど、こちらが予想していた以上に皆さん喜んでくれたんです。休止前の海外の取り扱い店舗は25件ほどだったのが、復活後最初の展示会でいきなり60件くらいのアカウントになりました。もちろん100件、200件やっているブランドさんはありますけれども、価格帯が全然違うので。
休止前の倍以上のお店が復活のニュースとともに、取り扱いたいと言ってくれたのは、本当に良いタイミングでの復活だったのかなと。逆に言うと、売れなければすぐ淘汰されてしまう時代でもあるので、そこは紙一重ですよね。昔みたいに、一度名前が売れたからもうブランドとしてやっていけるだろう、みたいな時代ではないですから。
毎シーズン本気でやらないと、世界基準で判断されてしまいますし、そのスピードがどんどん速くなっている。コラボして復活するところもあれば、「○○とやってもそんな感じ?」という烙印を押されてブランドまで終わってしまうケースもあるので、本当にすごく怖い時代に入ってしまったなっていう気がします。
ただ逆に、最近そこはあまり気にしなくなりましたね。最初から「これ売れそうだね、大丈夫だよ」なんて言葉では言っても、100%の確信なんてないですし。自信がなくても、いい結果が出れば喜べるわけですから。
──いろいろと聞いてみたかったことにお答えいただき、ありがとうございました。最後に2020年を迎えて、本間さんが考えていることを教えてください。
本間 やっぱり日本が2020年という区切りの良い数字で東京オリンピックを得たことは、逆に言うと日本にとってのラストチャンスを世界が与えてくれたと思うのです。だからこそ、本当にここで踏ん張らなければ、衰退していくんだろうなという思いがあります。
裏を返せば、これまで以上に世界からシビアな目で見られる1年になるだろうと。なのでmastermind JAPAN、MASTERMIND WORLDとしても、その期待に応えられるものを作るモチベーションを持ち続けられるよう全力で頑張っていこうと思っています。
                      
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