父・赤塚不二夫とのコラボレーションで新作BE@RBRICKを発表する赤塚りえ子【インタビュー】 | MEDICOM TOY
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2022年9月24日

父・赤塚不二夫とのコラボレーションで新作BE@RBRICKを発表する赤塚りえ子【インタビュー】 | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

BE@RBRICK ニューアカツカ バカボンのパパ 400% / 1000%

現代アーティストであり、株式会社フジオ・プロダクション代表も務める赤塚りえ子氏によるBE@RBRICKが完成! その題材は、父親である漫画家・赤塚不二夫とのコラボレーション。今回の作品が生まれた背景や自身のこれまでの活動についてお話を聞きました。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

赤塚不二夫と一緒に遊ぶ、赤塚不二夫で遊ぶ、自由な感覚で作っているので楽しいです

現代アーティストであり、株式会社フジオ・プロダクション代表を務める赤塚りえ子氏。彼女は『天才バカボン』『おそ松くん』『レッツラゴン』など数々の名作を生んだ漫画家・赤塚不二夫氏の娘として、会社の業務と創作活動に日々取り組んでいる。
2020年より静岡と東京で開催されている『大ネオン展』では、減少の一途をたどる「ネオン管」をアートとして再生し、新たな市場を創造することでネオン管職人の技術を未来に継承するプロジェクトを展開するアオイネオン株式会社の呼びかけで、全高約2000mmの巨大ネオン作品「ニューアカツカ (EDITION 3) 」を出展(製作:アオイネオン)。天才・赤塚不二夫と鬼才・赤塚りえ子による奇跡のコラボレーションとして話題を集めた。
今回は10月に開催されるメディコム・トイ主催の『AKASHIC RECORDS 3 ~ from Illuminati ~』に、ニューアカツカシリーズの新作「BE@RBRICK ニューアカツカ バカボンのパパ 400% / 1000%」が出展されることを記念して、赤塚りえ子氏のこれまでの足跡と父親とのコラボレーションに込めた思いについてうかがった。
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赤塚りえ子
東京生まれ。アーティスト/株式会社フジオ・プロダクション代表。
1994年渡英。2001年ロンドン大学ゴールドスミス校ファインアート科卒業。2002年よりロンドンのギャラリー、Danielle Arnaud所属。東京とロンドンを拠点として、創作活動を続けている。著書に「バカボンのパパよりバカなパパ」(幻冬舎文庫)がある。
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ファインアートを学ぶためロンドンへ

──現代美術家としてアートの分野へ進まれたきっかけについてお聞かせください。
赤塚りえ子(以後、赤塚) 両親が絵に関わる仕事をしていましたし、小学生の頃から美術が得意だったので、自分は美術以外の選択肢は考えたことはありませんでした。小さい時に自分が両親の様に絵が上手く描けず悔しい思いをしたせいか、いつもレゴで遊んでいたからか、自分の表現メディアは平面でなく立体でした。そして、1994年に渡英して大学に行くための準備のひとつとして、A levelsのCeramicsを2年間勉強して、このまま陶芸の道に進むことを先生に強く勧められたのですが、私はやはりどうしてもメディアも表現も自由なファインアートを学びたく、ロンドンの大学でファインアートとコンテンポラリー・アート理論を学びました。そして、卒業の翌年2002年にロンドンのギャラリーDanielle Arnaudに所属し現在に至ります。

感情や思考の向こう側に連れて行ってくれるエレクトロニック・ミュージック

──エレクトロニック・ミュージックやクラブ・カルチャーがお好きだそうですが、ご自身に与えた影響についてお聞かせください。
赤塚 私が幼い頃、両親が自宅の洋間に友人たちを招いて時々立食のホームパーティを開いていました。壁にはピンク色の照明があって、母が『ダンス天国』(ウィルソン・ピケット)などのダンス系の洋楽をかけて、みんなで一緒に楽しく踊りました。ですので、ダンス・ミュージックは自然に身体にしみついた感覚で、70年代に初めてシンセサイザーの音を聴いてビックリして虜になり、10代からエレクトロニック・ミュージック、そして、20代でエレクトロニック・ダンス・ミュージック、クラブ・カルチャーへと入っていきました。
私は音楽を耳で聴くというより、音を身体で捉えているような感覚があるので、歌詞はあまり重要ではありませんし、メロディや歌詞で自分の感情を操作されるのがあまり好きではありません。電子音楽の音色は無限で、決まったフォーマットもなく、mixによってはとても立体的で、想定外の音が予想できない位置からやって来たり、想定外の場所に置いてあったり……。電子音楽は、新たな刺激で驚くことを常に求めている自分の感性を刺激し感覚を拡張してくれます。私はとにかく束縛されることが大嫌いでいつも自由を求めているので、感情や思考の向こう側に連れて行ってくれるエレクトロニック・ミュージックで自由になることが最高に気持ちイイのです。90年代は電子音楽を爆音で浴びながらクラブで踊ることが大好きでした。
電子音楽ではないのですが、モロッコのジャジューカ村に1300年続いている音楽にハマって、2012年から毎年その村に通っています。これは1300歳のダンス・ミュージックなのです!

父とのコラボレーション制作は楽しい時間

──赤塚不二夫作品のオノマトペを使った赤塚りえ子さんの作品「家訓(My Family Tradition)」(2011)、および生誕80年を記念した『赤­塚不二夫のビチュツ展』に出展された仏壇のオブジェ「あかつか(Akatsuka)」(2015)には、どんな思いを込められましたか。
赤塚 2011年に京都国際マンガミュージアムと二条城の“台所”で「赤塚不二夫マンガ大学展」を開催することになり、私は二条城“台所”で新作を展示することになりました。以前より赤塚マンガのオノマトペの面白さを作品にしたいと考えていたので、『レッツラゴン』の笑い声を抜き出し立体にしてランダムに並べ、自由な笑いは赤塚マンガの特徴でもあるので、見る人が立つ位置で自由に笑い声を組めるようにしました。両親が三日違いで他界して、赤塚マンガを通して、「笑う」ことの大切さを父に教えてもらったと感じたので、使用するオノマトペは笑い声に限定し、父が描いたものでもあるので、「家訓」と名付けました。
『あかつか』では、仏壇の内部は仏がいる時間のない空間、仏壇の外は生きている人間がいる時間のある空間と考え、仏壇はまさに父と私のミーティングポイントだと思いました。マンガと私生活に境界線がないような人生を送った父だったので、切り抜いた写真の父と赤塚マンガのキャラが永遠の今が続く空間(仏壇内)で生き生きと楽しく過ごしているようにしました。「赤塚」は私にとって名字であると同時に、赤塚不二夫の姿勢・アティチュードを示す動詞であり形容詞なのです。ですので、“お仏壇のはせがわ”にかけて、タイトルはひらがなで「あかつか」にしました。
父とコラボすることによって、大好きな父と一緒に居る感覚があるし、時には爆笑してしまうほど、とにかく制作している時がとても楽しいのです。
──メディコム・トイとの出会いについてお聞かせください。
赤塚 BE@RBRICKを日本で知ったのか、すでにロンドンで見かけていたのかは忘れましたが、気づいたらイギリスやオランダや……世界のいろんな場所にBE@RBRICKがいました。以前ビームスさんからコラボレーションのお話があり、赤塚キャラや赤塚不二夫のBE@RBRICKを制作して頂きました。そして、ネオン管を使った私の作品『ニューアカツカ』を観てくださった赤司さんから昨年お声がけいただき、親子のコラボレーションバカボンのパパ × ニューアカツカBE@RBRICKが誕生しました。バイタリティー溢れユニークでセンス抜群な赤司さん率いるメディコム・トイさんのイマジネーションとアイデアは無限で、とても刺激を受けます。

ネオン職人さん泣かせの『ニューアカツカ』

──話題を集めた巨大ネオンアート作品『ニュー アカツカ』は『大ネオン展』での展示に続き、メディコム・トイ主催の『AKASHIC RECORDS 2.5』IN アートフェア東京2022にて抽選販売されました。
赤塚 アオイネオンさんからネオン管を使ったアート作品の展覧会「大ネオン展」にお声がけいただいた時はうれしくて、製作のことを考えずにアイデアをフルスイングしてしまい、ネオン職人さん泣かせの『ニューアカツカ』が誕生しました。私の作品にはどこか人を笑顔にする要素があるようで、『ニューアカツカ』を観たみなさんの反応は楽しそうで、みなさん携帯で撮影をしていました。
──ネオンアートを選んだ背景には、どういう思いがあったのでしょうか。
赤塚 小さい時から私の家族はみんな夜行性で夜遊ぶことが大好きでした。父は新宿のネオンに象徴される世界が大好きでしたし、私はカラフルなネオンや照明で妖しくなった空間で落ち着くのと同時にワクワクするその感覚が大好きでした。そんな家庭に育ったので、もちろんクラブ内の雰囲気も好きですし、今住んでる家は夜になるとカラフルな間接照明で部屋や階段や風呂場が妖しい空間に変わります。アンビエント系エレクトロニック・ミュージックを流すと、90年代のクラブにあったチルアウト・ルームのようで、癒されるのと同時にあのワクワクする感覚になれるのです。今でも夜が大好きで、やっぱり「夢は夜ひらく」のだと思っています!! ですので、ネオン管は、自分が好きな感覚や雰囲気も同時に表現できるメディアだと思いました。
──赤塚不二夫先生とのコラボレーションではマンガという表現方法を拡張しようとする意志を感じます。実際は、どんなことを心がけていますか。
赤塚 父は誰もやっていない作品を作りたいとインタビューで話していまして、常識をギャグで壊し続けた父は友人に「オレは破壊のプロだよ」と言ったそうです。自分も作品を作る上で、常識を壊す赤塚不二夫のアティチュードを意識しています。マンガという表現方法を拡張するための方法を特に探求しているわけではないのですが、父とのコラボレーションは、赤塚不二夫と一緒に遊ぶ、赤塚不二夫で遊ぶ自由な感覚で作っていまして、とても楽しいです。

『ニューアカツカ』をいかにBE@RBRICKへ落とし込むか

──今回発売される「BE@RBRICK ニューアカツカ バカボンのパパ 400% / 1000%」について開発時のエピソード、こだわった部分、完成した感想をお聞かせください。
赤塚 『ニューアカツカ』をどのようにBE@RBRICKに落とし込むのかすごーく悩んでいましたが、スケルトンのバカボンのパパのBE@RBRICKのお腹の中に『ニューアカツカ』を入れることで、すべてがスムーズに進みました。立体的な蛍光色の文字がブラックライトで光っているので、ネオン管を使っていなくてもネオンのイメージが表現できたと思っています。
──一番好きな赤塚作品は『レッツラゴン』、キャラクターは同作品に登場する元野生のクマ「ベラマッチャ」だそうですが、どういうところが琴線に触れたのでしょうか。
赤塚 『レッツラゴン』は、父が読者のことを考えずに好きなことを好きなようにやりたい放題やって連載を切られた作品で、ナンセンスを超えてシュールなギャグマンガと言われ、父も私も一番好きな赤塚マンガです。意味を求めずというか全く意味がないので自由で、ひたすらクダラナイ世界を突っ走るスピード感があり、「あー面白かった!」という読後感しか残らない清々しさが気持ちイイです。
「ベラマッチャ」のキャラ造形と屈託のないバカさがとても可愛いのですが、さらに切ないほど透明なバカ「トーフ屋ゲンちゃん」というキャラがいます。ゲンちゃんはうらやましいくらいのバカで、私も見習いたいバカの模範生です。
──今後メディコム・トイとどんなことをしてみたいですか。
赤塚 赤塚マンガには見逃せない造形をした名もないキャラクターがたくさんいるのですが、そんなキャラクターのBE@RBRICKを一気にたくさん並べてみたら面白そう!
あと、今思い付いたのですが、べしを蛍光グリーンのスケルトンのBE@RBRICKにして、内側からブラックライトを入れて光らせて、身体の中にべしのセリフのフキダシをいくつか入れたらどうなるんだろう? 位置的に耳の部分がべしの目になりますよね。ちょっと怖いかな……? 
あと、クマのベラマッチャがBE@RBRICKになるクマ × クマっていうのもなんか可愛いですね。
──最後に、フジオ・プロダクションがこれから予定されていることを教えてください。
赤塚 2022年9月29日より、『フジオプロ旧社屋をこわすのだ!!展 「ねぇ、何しにきたの?」』(http://kowasunoda.com/)を、中落合にあるフジオプロ旧社屋にて開催する予定です。
40年以上経ったフジオプロの建物(父の仕事場兼自宅)の老朽化が進み、ついに取り壊すことを決心しました。仕事に限らず遊びでも、父を中心にいろんな方と楽しいことをして、たくさんの作品が生まれた場所なので、このままただ壊してしまうのはもったいないと感じまして、建物「フジオプロ」とさよならする前に、「バカは真面目に」をモットーにさまざまな分野から多くの方に参加していただき、展覧会やイベントを開催することを思いつきました。
出版だけではなく、展覧会やイベント、父とのコラボレーション作品などなど…いろいろなことを通して、これからも赤塚不二夫の自由なスピリットをみなさまに感じてもらえたらうれしいと思っています。そして、一人でも多くの方が笑顔になり楽しんでいただけたら最高にうれしいです!
BE@RBRICK ニューアカツカ バカボンのパパ 400% / 1000%
天才・赤塚不二夫と鬼才・赤塚りえ子による奇跡のコラボレーション。ネオンアート作品『ニュー アカツカ』より「バカボンのパパ」がBE@RBRICK 400% / 1000%で登場。全高約280mm / 700mm。ボディ内部の「ニューアカツカ」モジュールが妖しく発光。10月22日(土)~10月31日(月)開催の『AKASHIC RECORDS 3 ~ from Illuminati ~ 』にて展示・発売予定。
※こちらは9月25日(日)~10月6日(木)にご来場時間帯ごとの事前抽選を行い、当選者の方のみ購入できる「会場販売商品」となります。詳細は「メディコム・トイ オフィシャルブログ」をご覧ください。
©️Fujio Akatsuka  
©️Rieko Akatsuka
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AKASHIC RECORDS 3 ~ from Illuminati ~
メディコム・トイ代表である赤司竜彦氏自らキュレーションを行い、世界中から厳選したアーティストやブランド、コンテンツの作品を一堂に展示・販売するプロジェクト『AKASHIC RECORDS(アカシック レコーズ)』。3度目のポップアップ開催となる今回は会場を表参道ヒルズ 本館地下3階「スペース オー」へ移してスケールアップ。“from Illuminati(フロム イルミナティ)”という謎めいたサブタイトルのもと、壮大な空間の中で、過去最多となる100点以上のアイテムを出展します。
主催|メディコム・トイ
会期|2022年10月22日(土)~10月31日(月) ※会期中無休
開場時間|11:00~21:00 ※10月23日(日)・30日(日)は20:00まで
会場|スペース オー[表参道ヒルズ 本館地下 3階] 東京都渋谷区神宮前4-12-10
入場料|無料
入場|入場自由
※新型コロナウイルス感染拡大の状況により、営業時間帯等が変更となる場合がございます。 詳細は事前にHP等をご確認ください。
※当日の会場の混雑状況によっては、入場制限を行う場合がございます。予めご了承ください。 ※「会場販売商品」のご購入は、事前抽選のご当選者のみ可能となります。 ※最終入場は、各日閉場30分前となります。
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フジオプロ旧社屋をこわすのだ!!展 「ねぇ、何しにきたの?」
会期|2022年2022年9月29日(木)~10月30日(日)の木、金、土、日曜(祝日含む)
開場時間|11:00~19:00 ※1日2回(11:00~、13:00~、15:00~、17:00~) 2h(最長滞在時間)の予約入れ替え制。
会場|フジオプロ旧社屋:東京都新宿区中落合1-3-15
入場人数|各回20名
休館日|月、火、水曜 ※ただし10月10日(月)の祝日は開催。
入場料|500円(税込)
参加者|EYE、赤塚不二夫、浅野忠信、安齋肇、伊藤桂司、KAZ、川口貴弘、北見けんいち、木村知夫、黒田征太郎、五木田智央、斉藤あきら、しいやみつのり、しりあがり寿、高橋キンタロー、タケヤマノリヤ、田名網敬一、タナカカツキ、てらしまけいじ、中野裕介/パラモデル、野上眞宏、みうらじゅん、吉勝太、Rieko Akatsukaほか(五十音順)
※本展の詳細・問い合わせにつきましては http://kowasunoda.com/ をご覧ください。
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

                      
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