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2024年12月24日
[天野喜孝インタビュー] Gallery by Amplifierより初の本格立体「NEPTROS」登場 | MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
Gallery by Amplifier NEPTROS
日本を代表するアーティスト・天野喜孝のキャラクター「NEPTROS」がソフビで立体化され、Gallery by Amplifierからリリースされることが決定した。発売を記念して、同キャラクターの生まれた背景、これまでの長いキャリアにおける創作の原点など、貴重なお話を伺った。
Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo
天野喜孝 × RINNOSUKEⓇ × PIED PIPERによる奇跡の立体プロジェクトが始動!
──今回発売されるソフビ「NEPTROS(ネプトロス)」は、2012年に発売された天野喜孝先生の『DEVALOKA(デバロッカ)』という作品集からの立体化です。まずは『DEVALOKA』自体のコンセプトからうかがわせてください。
天野 “DEVALOKA”はラテン語で「神の住む場所」という意味です。最初は2008年にベルリンのギャラリーで個展をやる際、そういう世界を描いてみたいと思って『DEVALOKA』と名付けたんですけど、それからいまだにDEVALOKAというテーマで作品を描いています。「ビッグバン」と「クリエーション」をテーマに、アニメ、ゲーム含め、これまで自分の描いてきたものがそのまま全部含まれている感じです。
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天野喜孝 YOSHITAKA AMANO
画家、キャラクターデザイナー、装幀家。1952年静岡市生まれ。1967年アニメーション制作会社タツノコプロダクションに入社。天野嘉孝名義で『タイムボカン』等のアニメのキャラクターデザインを手掛ける。独立後は装丁画をはじめ多岐にわたる制作活動を開始。ゲームソフト『ファイナルファンタジー』キャラクターデザイン、ビジュアルコンセプトデザイン、イメージイラストを担当。2000年頃からファインアート制作にも力を入れ、現在まで国内外で個展を多数開催するなど世界的に活躍を続けている。2000年ヒューゴー賞にノミネート。同年、アイズナー賞を受賞。
画家、キャラクターデザイナー、装幀家。1952年静岡市生まれ。1967年アニメーション制作会社タツノコプロダクションに入社。天野嘉孝名義で『タイムボカン』等のアニメのキャラクターデザインを手掛ける。独立後は装丁画をはじめ多岐にわたる制作活動を開始。ゲームソフト『ファイナルファンタジー』キャラクターデザイン、ビジュアルコンセプトデザイン、イメージイラストを担当。2000年頃からファインアート制作にも力を入れ、現在まで国内外で個展を多数開催するなど世界的に活躍を続けている。2000年ヒューゴー賞にノミネート。同年、アイズナー賞を受賞。
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──キャリアのスタートは1967年、天野先生が15歳の時に入社したアニメーション制作会社竜の子プロダクション(現タツノコプロ)ですね。
天野 当時はアニメというジャンル自体が新しいものだったんです。魅力的な世界だから面白そうだなと思って。今は当たり前のように世界中の人が見ているものですけれども、当時はテレビシリーズではなかなかなかったんですね。
タツノコのスタッフは創業者の吉田竜夫さんを筆頭にアメコミに影響を受けていましたし、とにかくリアルな世界を追求していたんです。それを僕も継承していたんだと思います。カメラワークも実験的でしたし、コンピューターグラフィックが登場するといちはやくタイトルに使ったり、映像が好きな人たちが作ったアニメという感じでしたね。シナリオの人も演出家もみんな若いから、当時の時代の空気感がビジュアル的にもストーリー的にも反映される。子供たちからすると分からない部分もあったかもしれませんが、それまでにない世界観を初めて表現したプロダクションだと思うんです。
イタリアにイベントで行った時に面白かったのが、イタリアには1978年ぐらいに日本のアニメーションがどっと入ってきたそうで、タツノコの『ハクション大魔王』や『新造人間キャシャーン』『科学忍者隊ガッチャマン』も放送されていたらしいんです。だから、みんなタツノコのアニメを知っていると聞いてびっくりしました。実際に現地の映像を見ると、ハクション大魔王がイタリア語でしゃべってる(笑)。どうやらアニメーションがインターナショナルなものになる、先駆けだったらしいんです。それが今でもみんなの記憶にあるってことは、たぶん時代と共にずっとありつづけてきたんだと思うんです。ありがたいことですよね。
── 独立後はイラストレーションの世界に進まれて、星雲賞(1970年に創設された日本のSF及び周辺ジャンルにおいて最も長い歴史を誇るアワード)など数々の賞を受賞されています。
天野 30歳ぐらいのときに自分の作品を直接見てもらいたいと思いたって、ゼロから持ち込みしてイラストをやり始めたんです。その結果、タツノコ時代とはまた全く違うジャンルで物語を絵にする仕事が生業になっていきました。本の表紙の仕事の中には『吸血鬼ハンターD』や、『エルリック・サーガ』など海外のファンタジー作品もありました。
── 映像作品でも1985年に発売されたOVA『天使のたまご』(原案・監督・脚本:押井守、キャラクターデザイン:天野喜孝)は先鋭的な作品として話題を集めました。
天野 当時は異端過ぎてヒットしなかったんですけど、押井守くんがオリジナルで本当にやりたいことをやったので、すごく意味があることでした。いろんな人の協力がないと発表できなかったものだと思います。海外でかなり評価されていまして、公開から40周年を迎える2025年には4Kリマスター版(押井守監督本人による監修の元、35mmのフィルム原版からスキャニングし、最新技術を用いて4Kリマスター化)が出る予定です。
──1980年代、日本ではまだまだファンタジーが今ほど根付いていない中、天野先生の作品を通して広がっていった印象があります。
天野 海外ではファンタジーというジャンルはSFの中のひとつだったんです。架空の世界、というんですかね。そういったものを描くのは自分にとって楽しい作業でした。その流れで1987年に『ファイナルファンタジー』というゲームのキャラクターデザインを担当することになったんです。ファンタジーというくくりの中でいろんな進化を経て、違うジャンルに行ったということかと思いますね。
自分としては絵の世界でまず描きたいと思ったのがファンタジーだったんです。例えば、ドラゴンって実際は誰も見たことないじゃないですか? だったら自分なりのドラゴンは何なのかなとか、想像して作り出す面白さって絵ならではだと思うんですね。架空の世界だから自由に発想できる。中でも僕にとって最大のモチーフとなったのが「神話」でした。世界には、いろんな神話がありますよね。ケルト神話とか、ギリシャ神話とかね。それらは遺跡として残っているものもあるけれども、実際は誰も見たことないわけです。だから僕も神話を絵にしたいなと。
天野 架空の世界だけでなく、例えば日本のお正月とかお神輿も、海外の人から見たら神話だと思うんです。我々からすると日常の中に当たり前のようにあるものですけど。クリスマスしかり、いろんな行事って実は神話なのかもしれないですね。面白い言葉があって「一人で見るのは夢だけど、集団で見るものは神話になる」。確かにお祭りだって、たくさん参加する人がいるから成立するわけじゃないですか。そういう意味では神話と現実って意外と混在しているんです。実は我々は神話の中にいるのかなって感じがしますよね。
しかも他の地域から見ると不思議なものに映る。これもファンタジーです。日本人からすると西洋のいろんなギリシャ神話とか北欧神話をファンタジーとしてとらえているけど、海外の人から見ると侍がファンタジーになる。だからファンタジーって自分の文化圏にないもの、分からないことを指すのかもしれないですね。
──なるほど。その視点は持っていなかったです。
天野 先日、シチリアを訪れたんですけど、あそこはもともとイタリアではなくギリシャ領だったそうなんです。だからギリシャ神話に出てくるゼウスの神殿跡があったり、ギリシャ神話に登場する怪物メデューサがシチリアのシンボル「トリナクリア」の顔の部分なんです。
トリナクリアはギリシア語で「三本足」という意味で、シチリアの形が三角なので土地の守り神になっているんです。至る所にお土産として売ってました。その地域の人からすると当たり前のものだけど、知らない我々からすると“メデューサが?”って思うわけです。メデューサといえば、髪の毛が蛇で、見た者を石に変えてしまう恐ろしい存在ですからね。だけどギリシャ神話を調べると、もとは絶世の美女だったのにそういう姿にさせられてしまったというドラマがある。場所によって全然捉え方が違うのがファンタジーなんです。
──天野先生はこれまで想像上の生物や神話に出てくるようなオリジナルのキャラクターをたくさん描かれています。
天野 例えば、小説やゲームのモンスターですよね。僕の仕事は他にないキャラクターを作ることなんです。それはアニメの時もそうだったんですけど、やっぱり何かを参考にして自分なりに取り入れたものを出す。それがキャラクターデザインの仕事かなと思うんですよね。ドラゴンにしてもいろんな人が描いていますけど、じゃあ、自分なりのドラゴンは何か──それが面白いんです。かっこいいもの、美しいものを描きたい。じゃあ、どうやったら描けるのか。それがまずあって、後から理由を付ける。意外と最初のうちは自分の描きたい世界観って分からないものなんです。もちろんきっかけが何かないと始まらないんですけども、描いていくうちにだんだん広がって、違う方向にどんどん行っちゃったものが結果的には面白かったりするんです。
ソフビ“DEVALOKA”シリーズは第5弾まで企画進行中
──今回ソフビ化されたキャラクターMP「NEPTROS」という名前について教えてください。
天野 『DEVALOKA』でイラストレーションを描いた時点では、特に名前はつけていなかったんです。なので、今回の企画を提案してくれたGallery by Amplifier代表のヒラカワレンタロウくんに命名してもらいました。「責任重大ですね」ってずいぶん悩んだみたいですけど、ROCKなネーミングで、とてもいいですね。そういうバンドありそうだねって聞いたら「被らないよう入念に調べたから大丈夫です!」って(笑)。名前をつけてもらったことで、独り立ちした感がありますね。
── イメージとしては、上半身がローマ神話に登場する海の神「ネプチューン」、下半身がギリシャ神話に登場する半人半獣の「ケンタウロス」ですね。
天野 世界中の神話だったり、僕自身がゲームとか小説のために描いたものがギュッと詰まったものが『DEVALOKA』だから、いろんな要素が入ってると思うんですよね。西洋の甲冑だったり、ちょっと和の感じも入っていたり。
──先生の作品はこれまでも立体化されていらっしゃいますが、本格的なソフビはこれまでなかったんじゃないでしょうか。
天野 そうですね。ソフビっていうカテゴリーの特徴のひとつにバランスがあると思うんです。頭、手足がリアルだけど、デフォルメされて大きくなっている。そこが一番重要だし、難しいところですよね。
こうして出来上がったものを見ると、とても面白いバランスですね。具体的に言うと、尻尾とたて髪の毛のなびき方が同じ感じで、風が来るようになっている。意外と気がつかないんですけども、それがちょっとバランスがおかしいと、「あれ?」っと思うんです。それが気にならないのはすごく自然だし、「極めてるな」と思いました。僕もそうした部分にはすごくこだわって、デッサンで何枚も描きましたが、立体にするとボリューム感とか非常に難しいと思うんです。
あとは筋肉のリアルさです。筋肉と甲冑とのいい塩梅の感じが、ちゃんと組み込まれています。甲冑を上から羽織ってるというより一体化している表現もソフビならではだなって感じました。素材感も色のつけ方によって違いを出して、ソフビ自体の特徴にうまく当てはめてますよね。
── 原型を製作されたRINNOSUKEⓇさんは天野先生の作品の大ファンだそうです。
天野 それは非常に感じます。他の素材のフィギュアとはまた違う制約がある中で、できることの最大限をギュッとやったっていうのが面白いし、同時にそれがこのソフビの個性なんですよね。そのデフォルメ具合やバランスって、本当に難しいと思うんです。センスがないと絶対できない。よく分かってる人がデザインされないと、この中に凝縮されないと思うんですね。
結局、キャラクターってシルエットだと思うんです。ミッキーマウスって遠くで見てもミッキーマウスだとわかるじゃないですか? 要は細部じゃなく全体のバランスがそのキャラクターの特徴だと思うんです。だからソフビもこのバランスが命。その中でどう個性を出すか、なんです。
──PIED PIPERさんの彩色設計も絶妙な色使いですね。
天野 胸の赤いところがいいですね。ROCKしてますよ(笑)。ソフビの場合、色を細かく分けすぎると普通になってしまいますから、絶妙なサジ加減だと思います。目が少し光っているような感じの色使いもいい。素材感が違って見えますよね。
──これが『DEVALOKA』からのソフビ第1弾ということは、これからどんどんシリーズ化されていくわけですね。
天野 既に第5弾まで企画進行中です。どんどん増えてくると、ここにまたソフビの“DEVALOKA”ができるんじゃないかなと思うんですよね。
アートって面白いなと思ったのは、ニューヨークの美術館で見た、小さいキャンディーが山のように積まれてあって、訪れた人はそのキャンディーを手に取って食べていいという作品です(Felix Gonzalez-Torres 『Untitled (Portrait of Ross in L.A.) 』 1991年)。あれは同じものがたくさんあることによってアートになるわけです。
今回のソフビも、何百個、何千個と並べれば、その空間はひょっとして違う世界になるかもしれない。アンディ・ウォーホルだって、市販のキャンベルスープ缶の絵をシルクスクリーンで量産することでポップアートになったわけじゃないですか? それと同じで、たくさん存在することによって、また新たな意味が出てくるかもしれない。そう考えるとワクワクしますよね。
──今後の展開を楽しみにしております。最後に天野先生の2025年の予定をお聞かせください。
天野 今、『ZAN』という劇場版アニメーションを製作しています(「DEVA ZAN」として2010年に発表されたオリジナルアート作品集をもとに、江戸時代末期、サムライが終焉を迎えつつある日本で侍として戦いに明け暮れていた主人公ZANが、時空を飛び越えて様々な敵と戦う壮大なアクションファンタジー。映画公開は2026年以降を予定)。どんどん形になっていますので楽しみにしていてほしいです。
僕個人としては、依頼される仕事とは別に、新しい“DEVALOKA”を描き続けています。それらの作品が2025年からいろんなかたちでどんどん発表されていくと思うので、ぜひチェックしてください。
Gallery by Amplifier NEPTROS
原型製作|RINNOSUKEⓇ
彩色設計|PIED PIPER
サイズ|全高約270mm
購入方法 2024年12月24日(火)0:00~2025年1月10日(金)23:59の期間、MCT TOKYOにて抽選販売
発売日|2025年1月発送予定
価格|13万2000円(税込)/天野喜孝直筆サイン入りギャランティカード同梱
※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。
原型製作|RINNOSUKEⓇ
彩色設計|PIED PIPER
サイズ|全高約270mm
購入方法 2024年12月24日(火)0:00~2025年1月10日(金)23:59の期間、MCT TOKYOにて抽選販売
発売日|2025年1月発送予定
価格|13万2000円(税込)/天野喜孝直筆サイン入りギャランティカード同梱
※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。
問い合わせ先
メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555