簡単にぺしゃんこにならない、頑丈で大きなハムちゃんを作りたい|MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
創作あーちすと、のんさんに聞く(1)
女優、モデル、ミュージシャン、絵描き、と多くの顔を持つ、創作あーちすと、のん。今春より東京・渋谷、大阪・梅田で『“のん”ひとり展 -女の子は牙をむく-』を開催。描き下ろしの絵画、立体物、自作の衣装など、コンセプトに合わせてセレクトされた様々な形態のアート作品の中でもひと際、目を引いたのが会場内に突如現れた巨大なハムスターだ。全身をファーで包み、圧倒的な存在感を示していた「ハムスター☆」が、この度、メディコム・トイより全高約60mmのソフビフィギュア「VAGハムスター☆」となって発売決定。10月5日(金)より広島で開催される『“のん”ひとり展 -女の子は牙をむく-』に合わせて、全国の取り扱い店舗にて順次リリースされる。本稿では「VAG ハムスター☆」にまつわる話をうかがった。
Photographs by OHTAKI KakuText by SHINNO Kunihiko
「ジョン・ライドンに似てるから、のん・ライドンはどうですか?」
――のんさんとメディコム・トイが最初にコラボレーションしたのは昨年12月発売のBE@RBRICK SERIES 35のひとつ、「ワルイちゃん」のBE@RBRICKでした。それ以前からBE@RBRICKの存在はご存じでした?
のん はい。お店で並んでるのを見てオシャレだなぁって思ってました。なので、まさかワルイちゃんがBE@RBRICKになるなんて想像もしてなかったですね。
――ワルイちゃんはLINEスタンプでも大人気です。
のん 昔からいたずら好きなキャラクターが好きだったので、LINEスタンプを作ることになったとき、悪いことだけをする女の子がいたら楽しそうだなって。
――それはどれくらいのレベルの悪いことですか?
のん LINEスタンプでいうと、ブラジャーを振り回したり(笑)。そういうくだらないことで、ずっと楽しんでいるイメージ。子どもの頭の中でしか思い付かない悪さって感じです。
――もともと絵を描くのはお好きだったそうですね。ワルイちゃんのLINEスタンプもたくさん種類がありますが、世界観を考えるのは楽しいですか?
のん 楽しいです。キャラクターをいっぱい描いて、関係性を考えるのが自分の中で新しい感覚だったので、どんどん発想が湧いてきました。
――ワルイちゃんのBE@RBRICKも、とてもかわいいです。
のん 最初にメディコム・トイのデザイナーさんからBE@RBRICKにするとこういう風になりますって見せていただいたデザイン画の時点で既にかわいかったんです。しかも「このBE@RBRICKたちの中に、のんさんもいたらいいですね」という話になって。ワルイちゃんの格好をしたのんのBE@RBRICKも作っていただいたんです!
――BE@RBRICK SERIES 35のシークレットとしていっさい告知なく発売されたので、手に入れられた人はラッキーでした。
のん のん自身のキャラクターがこういう立体物として発売されるのは初めてだったので興奮しました。ちょっとつり目に作ってくださったのが嬉しかったですね。ワルイちゃんだからあんまり優しくなさそうな感じがいいなぁと思って(笑)。すごくお気に入りです。
――メディコム・トイの赤司社長とも、いろいろお話されたそうですね。
のん ちょうど音楽活動を始めようと思っていた時期だったので音楽の話になって、私のことを「ジョン・ライドンに似てますね」って言ってくださったんです。前にも一回だけ言われたことがあったんですけど、赤司社長にもそう思っていただいて、すごい嬉しかったです。それで「のん・ライドンってどうですか?」「いいですね。おちゃらけてて」って話になって(笑)。去年「オヒロメ・パック」というカセットを作ったとき、その中に特典のひとつで、のん・ライドンの格好で撮った写真を入れました。
あと「TEHON」(※メディコム・トイが不定期にリリースしている、手のひらにのるコンパクトサイズの絵本)の話もしました。
ワルイちゃんがいたずらするだけの話をTEHONでやれたらいいですねって。それはいつかやりたいなと思っています。
Page02. ようやくハムスターのトラウマを克服できました
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創作あーちすと、のんさんに聞く(2)
ようやくハムスターのトラウマを克服できました
――そして今回、新たに「VAGハムスター☆」が発売されることになりました。これは現在全国巡回中の『“のん”ひとり展‐女の子は牙をむく‐』にて展示された同作品を、てのひらサイズのソフビフィギュアにしたものです。
のん 個展の準備をしているとき、何かちっちゃいものをでっかくすると面白いんじゃないかという案が出て、何を大きくしたいかなっていろいろ考えたんですね。最初はケージの中にハムスターが何匹かいて、ひまわりの種子を食べたり水を飲んだりしているジオラマ風のものだったんですけど、それだけだとちょっと作品っぽくなくて。だったら会場の中に道路を作って、そこにめちゃめちゃ大きなハムスターが通せんぼしていたら面白いんじゃないかなと思ったんです。
――もともとハムスターはお好きだったんですか?
のん 好きでした。小学生の時にグレーのジャンガリアンを飼ってました。当時「とっとこハム太郎」が流行っていて、友達が飼っているのを見てずっと憧れてたんです。ただ最近までハムスターにはトラウマがあって……。
友達とハムスターを持ち寄って、公園の砂場で山を作ってトンネルをハムちゃんに掘ってもらう遊びをやってたんです。当時はトンネル遊びの最後はみんなで足で踏んで潰すのが一連の行程だと思っていて。ジャンプしてドーンと小山を潰したら、私のハムちゃんだけ取り出してないことに気づいたんです。
――え――っ!
のん すぐ取り出したらピンピンしてたんですけど、ちょっとペシャってなっちゃってて。それにめちゃめちゃショックを受けてしまって。
申し訳ないことをした、自分はもう生きものを飼えないなって、ずっとトラウマでした。
――どうやって克服できたんですか?
のん インスタグラムを始めたら、いろんな動物の動画が流れてきて。その中にハムスターの動画もあったので見始めたら、かわいいなってまた思えるようになって。その中に、白いハムちゃんが優しく撫でられて、ぺったんこになっている動画を見たんです。
――それ、見たことあります!
のん あれすごいですよね! “内臓どこに行っているんだろう?”みたいな(笑)。その動画を見て、ああハムスターは本来ここまでぺったんこになるものなんだと分かってトラウマから逃れる第一歩になりました。ハムちゃんのことがずっと好きだったので、展覧会ではハムちゃんを大きくしたい、
しかも作るんだったら簡単にぺしゃんこにならない頑丈なものにしたいと思って大きなハムちゃんを作りました。
――あの巨大さだとなかなかぺしゃんこにはならないですね(笑)。しかもすごくカラフル。デザインには相当こだわられたそうですね。
のん こだわりましたね。フォルムが最初は四角かったので、ちょっと丸みをつけてもらったり、顔もかわいくなるように目を大きくしてもらいました。色合いも体表の柄が目立つように何度も調整を重ねて。あと、「女の子は牙をむく」という展覧会のタイトルを思いついてから、牙を生やしました。
――そのタイトルも素晴らしいです。
のん 自分の中にあるエネルギーをバッと放出するみたいなイメージにしたくて。社会的なことじゃなく自分の中でくすぶっている牙を表に出す感じですね。
Page03. VAGハムちゃんの絵本とか作ってみたいです
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創作あーちすと、のんさんに聞く(3)
VAGハムちゃんの絵本とか作ってみたいです
――今回、てのひらサイズの「VAGハムスター☆」として発売されることになり、カラーバリエーションが全5種類になりました。いかがでしょうか。
のん かわいいですよね! すごく気にいってます。VAGハムちゃん。並んだときのインパクトがありますよね。黒とグリーンの子はめっちゃかっこいいですし。
――この子だけ鼻が黒いんですね。マスタッシュ(口ひげ)っぽい。
のん ホントですね。おしゃれ! あと、茶色の子が衝撃的でした。ピンクとか黄色の子は仲間だなって感じがしますけど、茶色の子は“どうした!?”って(笑)。秋の紅葉っぽくて面白いなあ、色を変えるだけでこんなに印象が変わるんだなと思いました。
――キャラクターやストーリーのアイデアも湧いてきたり?
のん この5匹が冒険するお話とかできそうですね。小さい頃『まっくろネリノ』(作:ヘルガ=ガルラー 訳:矢川 澄子 偕成社刊)っていう絵本が大好きだったんです。ふくろうの兄弟のお話で、お兄ちゃんたちはカラフルで見た目が綺麗なのに、ネリノだけ真っ黒で仲間外れにされていて。そしたら、ある夜、お兄ちゃんたちが人間にさらわれちゃうんです。それをネリノが暗闇にまぎれて助け出すんです!
……そういう感じで、VAGハムちゃんが自然の中にまぎれたりする話もできそうですね。絵本とかショートアニメとか。ストップモーションとかで、テケテケテケって。
――『“のん”ひとり展‐女の子は牙をむく‐』も、東京、大阪に続いて10月5日(金)〜16日(火)の期間、広島で開催されます。のんさんとは縁の深い場所ですね。
のん 映画『この世界の片隅に』で関わらせていただいて何度もうかがいましたし、舞台になった呉市では写真集を撮影しました。出会った人たちとお話ししたり、ご飯を食べながら、いい街だなぁって。すごく思い入れが強かったので、今回こうして展覧会で呼んでいただいて本当に嬉しいです。私の子供みたいな作品たちなので、すずさんみたいに可愛がってもらえたらいいなって思います。
――すずさんも温厚で心優しいだけでなく、ちゃんと牙をむく女の子でしたね。
のん ちょっとつながっているかもしれない(笑)。広島は海がきれいな場所なので、瀬戸内海に巨大なハムちゃんが浮かんでいる写真とかコラージュしてみたいです。
――12月には新規場面を追加した『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開されますので、そちらも楽しみにしています。
LINE NEWSのオリジナルドラマ『ミライさん』も、すごく面白いです。未来を舞台に発明家の兄が開発した様々なツールをミライさんが勝手に悪用して起こる大騒動の数々。さっきの「小さいものを大きくしたい」という話にもつながりますね。
のん 今までやったことのない役に挑戦させていただきました。私が演じるミライは自分が革命家だと信じているニートっていうとんでもない設定ですけど、ミライに家族全員が振り回されてるというよりは、こんなに個性的なお父さん、お母さん、お兄ちゃんの中で育ったからミライはああいう風になったんだなと妙に納得できて。
――今野家のキャスティングも素晴らしかったです。
のん 堀内敬子さん演じるお母さん(今野イマコ)は、優しくて女神のような存在。マキタスポーツさん演じるお父さん(今野フルキチ)は頑固だけどチャーミング。マキタさん、のんと目元とか眉毛が似てて、二人でブチ切れてやり合っていると似た者同士だなって感じに見えるんです。本郷奏多さん演じるお兄ちゃん(今野トモロウ)が妹を甘やかしているところもすごくリアル。楽しいホームドラマなので、ぜひほっこりしてください。
――まだまだミライさんの活躍を見たいので、セカンド・シーズンに続くことを期待しています。ところで、のんさんはおもちゃにまつわる思い出って何かありますか?
のん 小さい頃、友達の家に身の回りのお世話をする知育人形があって、その子で遊ぶのが好きでした。私も欲しくてクリスマスにサンタさんにお願いしたんですけど、なぜかロボットの犬が来ちゃって。次の年もお願いしたのに、また違うのが来て、結局手に入れられなかったんです。あとでお母さんに聞いたら「リアルすぎて今にも動き出しそうで怖かったから別のにした」って言われて(笑)。
――いいお話です(笑)。のんさんは映画秘宝の連載(「ヒーローになりたい!」)や、アルバム『スーパーヒーローズ』でもタイトルにしているほど
ヒーロー好きとして知られていますが、メディコム・トイ はスーパーヒーローのフィギュアもたくさん発売しているんです。
のん スーパーヒーロー役、めちゃめちゃやりたいので、実現したときはぜひよろしくお願いします! 映画秘宝とのコラボとかも楽しそうですね。
――これまでの活動を通して、創作に対する意識も変わりましたか?
のん 変わりました。新しい挑戦をたくさんしたことで好奇心が旺盛になって、立体物とかインスタレーションも楽しいなと思えるようになりました。もっともっと表現を深めていきたいという欲が湧いてきたので、個展も第二弾、第三弾と続けて、かわいいものをたくさん追求していきたいです。
次はぜひワルイちゃんやハムちゃんのTEHONを実現させたいですね。あと、今回は創作あーちすと・のんとのコラボでしたけど、音楽活動とも絡めてメディコム・トイさんと何か面白いことができたらいいなって思います。