「うわ、こんなめんどくさいことまでやってんだ」みたいな(笑)|MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
ループウィラー代表 鈴木 諭さんに聞く(1)
ループウィラーとメディコム・トイのコラボレーションによるBE@RBRICKの新作が、いよいよ今月に登場する。なかでも400%と1000%は、ループウィラーの特徴である吊り編み機で編まれた生地を使用した贅沢なモデル。もちろんファンの間で注目の的となっている。そのループウィラー代表 鈴木 諭(さとし)さんに、制作の経緯をうかがった。
Photograph by OHTAKI KakuText by SHINNO Kunihiko
最新BE@RBRICKはマルチカラー
――まずはメディコム・トイとの出合いからお聞かせください。
鈴木 2005年くらいでしょうか。南青山にあったOriginal Fake(アーティストのKAWSとメディコム・トイが共同運営を行ない、2006年から2013年まで営業)がオープンする前、ショップデザインを片山正道さんが手掛けるということで、KAWSが事前にどんなお店にしたいかイメージを膨らませるために近隣エリアの片山さん物件をリサーチして回ったときに、うちも片山さんのデザインなので寄っていただいて。その時に旧知のメディコム・トイのスタッフさんに久しぶりに再会しまして。
僕はもともと「スター・ウォーズ」が好きで昔のフィギュアも結構集めていたので、細かいエディションの違いだったり、何を聞いてもすべて答えてくれる彼のことを尊敬していたんです。
2009年にループウィラーが10周年を迎えて、BE@RBRICKを作りませんかというお話をいただいた時は、最初から1000%をスウェットでくるみたいというアイデアありきでした。
――それ以前からBE@RBRICKのことはご存知でしたか?
鈴木 もちろん知ってましたし、普通に買ってました。
事務所には1000%が何体かあるんですけれども、古いものだとOriginal Fakeが始まる前にリリースされたグレーとブルーのKAWSのBE@RBRICK 1000%が2体。当時定価で購入したものです。今ではかなり高騰しているみたいですね。
――2009年に発売された最初のループウィラーのBE@RBRICK 1000%は、全身をグレーのスウェットでくるんでいました。10周年ということでエンブレムも特別なものでしたね。
鈴木 あの時は一緒に人間バージョンも作りたいと最初から思っていたので、胸に同じワッペンがついて両袖にプリントが入った同じデザインのジップパーカーを同時発売しました。
――そこから約10年近くを経て、待望の第2弾が登場することになりました。
鈴木 メディコム・トイのスタッフさんとはちょいちょい連絡を取り合っていたので、そのなかで「そろそろまたやりませんか?」と、自然発生的に出てきたと思うんです。「そうだね、やろうか」っていう話をした瞬間に、次のアイデアは出てきていて。やるんだったら次はマルチカラーのバージョンにしようと。
今回も同じ生地を使った人間バージョンを、ほぼ同じ配色で作ります。
――背中のボーダーも含めて、ループウィラーの代表的なカラーリングが各部に使われていますね。生地は2009年のものと違うんですか?
鈴木 まったく違います。基本的に編み方は一緒なんですけど、使っている糸はかなり特殊。グレーとネイビーでそれぞれ糸の種類が変わるという、かなりマニアックな感じですね。
裏毛は3本の糸で編み立てるんですけど、表糸、中糸、裏糸というのがありまして。通常ネイビーは生成の糸で編んでネイビーに染めるやり方、霜降りのグレーは表糸と中糸にグレーの糸を使って裏糸は生成というやり方なんですけど、今回の生地は表糸、中糸、裏糸の色や種類を変えました。
パっと見だと分からないんですけれども、染め方ひとつにしても、TOP染め、糸染めで全然違うんですね。そういうマニアックな作り方をしていて。
――長年のループウィラーファンが喜ぶアイテムになりましたね。
鈴木 前回のものを持ってくださっている方は、その横にこれを並べていただくと、すごく親和性が高いので満足感があると思います。進化の度合いもよく分かるので。ループウィラーは来年で20周年を迎えるんですけど、約10年近いブランドの成長や進化を見てもらえるのではないでしょうか。
マニアの方が見ても「うわ、こんなクソめんどくさいことまでやってんだ」みたいなところまで伝われば嬉しいですね。分かる人には分かる、みたいな。
――しかも前回の400%はフロッキー加工でしたが、今回は生地を着せているところにも注目です。
鈴木 メディコム・トイさんの方でも、この9年の間に400%でも着ぐるみができるようになって。今回の400%、すごく可愛いですよね。逆にサイズが小さい分、400%の方が難しいと思うので。もちろんタグにはカタカナネームが入ります。
――すでにInstagramなどでも反響が届いているのではないでしょうか?
鈴木 はい。届いてます。9年前よりもBE@RBRICKの人気は海外、特にアジアでものすごく高まっていますし、最近は400%をコレクトしている方が増えているそうですので。今回のモデルを見て、僕たちのブランドをご存じなかった方々にもコレクションしたいと思ってもらえたら嬉しいですね。
Page02. 「スター・ウォーズ」が、僕の教科書
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ループウィラー代表 鈴木 諭さんに聞く(2)
「スター・ウォーズ」が、僕の教科書
――鈴木さんは「スター・ウォーズ」のフィギュアをコレクションされているということでしたが、それはスウェットと同じくアメリカ文化への憧れからでしょうか?
鈴木 僕が昔のスウェットを集めているのは時代考証のためなんですが、「スター・ウォーズ」はちょっと違って。
僕らリアルタイムなんです。最初のエピソード4がアメリカで公開されたのが1977年。劇場はもちろん、VHSから始まって、DVD、ブルーレイ……解像度を上げて手直ししたバージョンも含め、ボックスセットを何個買ったか分からないぐらい、「スター・ウォーズ」は死ぬほど観ていて。
僕にとっての「スター・ウォーズ」は、教科書。悩んだときは「スター・ウォーズ」を観るんです。そうするとそこに回答に近いことがある。行動とか、人としてどうあるべきかとか、ものの考え方とか。要するに哲学ですよね。
そして情熱。
登場人物やストーリーの面白さはもちろん、それらが「スター・ウォーズ」に入っているからこそ、ここまであの映画が長生きしていると思うんです。特にエピソード4、5、6の3作には人生哲学が濃縮してあるので。
――ループウィラーが立ち上がった1999年は、実に16年ぶりの新作となったエピソード1の公開年でもあります。
鈴木 ループウィラーは当初イギリスで販売をはじめました。日本のファッション業界ではほとんど興味を示してくれなかったので、イギリスに行ってみようと。ただ、僕らのデザインとかクリエイティブな部分はさておき、縫製してくれるチームや編んでくれるチームは、間違いなく当時の日本代表レベル。なので、そのメンバーで作ったトップレンジのプロダクトを認めてもらいたい、という思いでした。
――「スター・ウォーズ」シリーズもイギリスで撮影されたことを思うと、まるで何かに導かれたかのようですね。
鈴木 そうですね。ご縁があると思います。
――最後に、来年の20周年に向けてひと言、お願いします。
鈴木 いま、いろいろと準備を進めているところですので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。