各モデルのキャラクター分けがより明確に

フルモデルチェンジや新エンジン追加など、「MINI」が活発だ。多様なライフスタイルに合わせて7モデル展開するMINIの、もっともベーシックともいえるハッチバック。乗り較べて、キャラクターを検証しよう。

2014年になって、MINIのベーシックモデルというべきか、車型でいうとハッチバックがフルモデルチェンジを受けた。対象になったのは「MINI ONE」「MINIクーパー」「MINIクーパーS」だ。

最大の特徴は、エンジンラインナップを見直して、燃費効率を軸にしながら、各モデルのキャラクター分けがより明確になったこと。MINI ONEには従来の1.6リッター4気筒（98ps）に代わり、1.2リッター3気筒（102ps）が搭載された。

MINIクーパーも燃費効率を考慮して、従来の1.6リッター4気筒（122ps）から、今回は1.5リッター3気筒（136ps）に変更された。そしてMINIクーパーSだけは、1.6リッター（175ps）から2リッター（192ps）へと排気量が拡大し、性能も大幅にアップしている。

もうひとつの特徴は、ボディサイズだ。全長こそ3,835mm（MINIクーパーSは3,860mm）と依然コンパクトだが、全幅が1,725mmに拡大して、いわゆる3ナンバーサイズへと大型化している。ホイールベースも30mm伸び、そのぶん室内寸法の拡大に充てられているそうだ。

はたして3台は、たしかにキャラクターわけがはっきりしている。乗り較べてみると、ドライバーとしての自分が求めているものが、はっきり見えてくるのだ。価格では、MINI ONEとMINIクーパーとのあいだが40万円、後者とMINIクーパーSとが52万円と、けっこう開きがあるから、MINIシリーズに興味を持つひとにとって、比較検討は重要だろう。

MINI ONE｜ミニ ワン
MINI Cooper｜ミニ クーパー
MINI Cooper S｜ミニ クーパー S

個性ゆたかなMINIのバイヤーズガイド

新型MINI 3モデルを乗りくらべ （2）

スポーティだが、全体としてはおとなしい「ONE」

MINI ONEは、もっともベーシックなグレード。日本には、クーパーおよびクーパーSより少し遅れて導入された。シリーズ全体に共通する特徴として、オリジナルミニをイメージした、とブランドが言う六角形グリルがあげられる。別の側面からみると、フロントマスクと、リアのハッチゲートの切り欠きに注目しなければ、スタイリングコンセプトに劇的な変化はない。

操縦すると、1,198cc3気筒エンジンは、1,800rpmで180Nmという最大トルクを発生する設定だけあって、市街地で扱いやすい。試乗したのは6段AT搭載車だったので、パンチのある加速が欲しいときは、マニュアルでギアを落とすといい。2,500rpmあたりから実質的なトルクがわき上がって、それなりに力強く走る。

MINI ONE

MINI ONE

足まわりは意外に硬めだ。試乗車にはオプションのダイナミック ダンパー コントロールが備わり、ダンパーの設定を、ノーマルとスポーツから選べるようになっていた。「ゴーカートフィーリング」を謳うだけあって、ノーマルでも車体のロールは少なく、スポーティなキャラクターへの志向が強く感じられる。

それでも全体としてはおとなしい。ATでもリッター20km（JC08モード）になんなんとする燃費がMINI ONEの大きなセリングポイントであるだけに、スポーティなエンジンが欲しいひとは、クーパーかクーパーSを選んだほうがいいかももしれない。MINIという雰囲気が好きなひと向けだろう。

オプションが数かず用意されていて選ぶ楽しみがあるのもいいが、アルミホイール（22万円）、ETC車載器システム内蔵ルームミラー（6.9万円）、キーレスアクセス可能のコンフォートアクセス（4.5万円）、アクティブクルーズ コントロールや衝突回避・被害軽減ブレーキ機能を含めたドライビングアシスト（11.4万円）、さらにナビゲーションパッケージ（17.8万円）と、どうしても必要と思われるものだけ加算しても、けっこうな価格になってしまう。

MINI ONE｜ミニ ワン
MINI Cooper｜ミニ クーパー
MINI Cooper S｜ミニ クーパー S

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新型MINI 3モデルを乗りくらべ （3）

あらゆる要件を上手に満たす「クーパー」

MINIクーパーは、MINI ONEと大きくキャラクターがことなる。こちらもターボチャージャーを組み合わせた3気筒エンジンだが、1,498ccと排気量が拡大しており、数値をみても、MINI ONEより太い220Nmの最大トルクを、より低い1,250rpmで発生する。

その差は数値だけでない。よりスムーズな加速となって体感できる。もたつくかんじはなく、気持ちよくスピードにのっていく。6段AT搭載モデルをドライブしたが、Dレンジにいれたままでも、加速は力強く、都内でも高速でも、MINIのもつスポーツ性をじゅうぶんに感じることができた。

MINI Cooper

MINI Cooper

MINIクーパーは1リッター19km台（JC08モード）と効率も悪くないのだが、実際の走りもスポーティ。オールマイティ性が、MINIクーパーのセリングポイントだと感じる。走りも乗り心地も燃費も、すべてが適度。ドライブの楽しさと経済効率のバランスをとるという現在のクルマが求められている要件を、上手に満たしている。

そこで、内外装ともにいろいろ用意されているドレスアップキットを選ぶ作業も楽しくなる。MINI ONEでも触れたとおり、いまやベーシックといえる安全装備や快適装備もオプションとなるものが多いので、280万円（AT）はあくまでベース価格と考えたほうがいいが、MINI COOPERは趣味性の高さがウリの、お楽しみ商品だから、こういう売り方でも市場は受け入れるだろう。

MINI ONE｜ミニ ワン
MINI Cooper｜ミニ クーパー
MINI Cooper S｜ミニ クーパー S

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新型MINI 3モデルを乗りくらべ （4）

ゴーカートフィーリングを如実に具現化する「クーパーS」

MINIクーパーSは、ほかの2モデルが、燃費経済性に傾いていくいっぽうで、よりトンガったキャラクターが打ち出された。従来型より排気量が増え、約20psもパワーが上がった新開発1,998cc4気筒ターボエンジンは、192ps/5,000rpm、280Nm/1,250rpmという数値から期待される以上に、スポーティだ。ドライブの快感が脳天を突き抜けるようなフィールをもつ。

ターボチャージャーを持つにもかかわらず、エンジンは自然吸気タイプのように、レッドゾーンちかくまでちからをしぼりきる。サスペンションとステアリングは、それを支えて、ダイレクトな操縦感覚を提供してくれる。このモデルこそが「ゴーカートフィーリング」を如実に具現化しているのだ。

MINI ONEが効率重視、MINIクーパーが適度なスポーツ性を特徴とするいっぽう、MINIクーパーSは、ドライブを積極的に楽しみたいひとのためのモデルに仕上がっている。

MINI Cooper S

姿勢変化が少なく、太いトルクバンドの恩恵で力が途切れることのないパワー感と、繊細な設定のステアリング、さらにチューニングされた排気音が操縦の楽しさを強調してくれる。

ATもいいだろうが、6段マニュアル変速機搭載モデル（318万円）を試乗した結論としては、自分でギアを選び、エンジンの特性を存分に楽しまないと、もったいないと思えるほどだ。

MINIは3代目になっても、フォルクスワーゲン「ゴルフ」とちがい、実用性よりもエモーショナルな楽しさを重視したキャラクターが継承されている。室内空間はミニマムで、荷室容量も限られる。日本では4ドアのMINIクロスオーバーがシリーズ全体の6割を占めるセールスというのが、意地悪な見方をすると、MINIの存在意義への疑義となっているともいえる。

いっぽうで、MINIを2プラス2のクーペととらえれば、適度な価格で楽しめる個性的なモデルとして大いに評価できる。この立ち位置がライバルに脅かされていないのは、競争の激しい自動車市場にあって興味ぶかい。強固なキャラクターの勝利だろう。

MINI ONE｜ミニ ワン
ボディサイズ｜全長 3,835 × 全幅 1,725 × 全高 1,430 mm
ホイールベース｜2,495 mm
トレッド 前/後｜1,500 / 1,500 mm
重量｜（MT）1,170 kg　　（AT）1,200 kg
エンジン｜1,198cc 直列3気筒 DOHC MINI ツインパワーターボ
ボア×ストローク｜78.0 × 83.6 mm
最高出力｜75 kW（102 ps）/ 4,000 rpm
最大トルク｜180 Nm/ 1,400-3,900 rpm
トランスミッション｜6段MT / 6段AT
駆動方式｜FF
タイヤ｜175/65 R15
0-100km/h加速｜（MT）9.9 秒　　　（AT）10.2 秒
トランク容量｜211 リットル
燃費（JC08モード）｜（MT）20.2 km/ℓ　　　（AT）19.2 km/ℓ
価格｜（MT）226 万円　　　（AT）240 万円

MINI Cooper｜ミニ クーパー
ボディサイズ｜全長 3,835 × 全幅 1,725 × 全高 1,430 mm
ホイールベース｜2,495 mm
トレッド 前/後｜1,500 / 1,500 mm
重量｜（MT）1,170 kg　　（AT）1,200 kg
エンジン｜1,498cc 直列3気筒 DOHC MINI ツインパワーターボ
ボア×ストローク｜78.0 × 83.6 mm
最高出力｜100 kW（136 ps）/ 4,400 rpm
最大トルク｜200 Nm/ 1,250-4,300 rpm
トランスミッション｜6段MT / 6段AT
駆動方式｜FF
タイヤ｜175/65 R15
0-100km/h加速｜（MT）7.9 秒　　　（AT）7.8 秒
トランク容量｜211 リットル
燃費（JC08モード）｜（MT）19.2 km/ℓ　　　（AT）17.9 km/ℓ
価格｜（MT）266 万円　　　（AT）280 万円

MINI Cooper S｜ミニ クーパー S
ボディサイズ｜全長 3,835 × 全幅 1,725 × 全高 1,430 mm
ホイールベース｜2,495 mm
トレッド 前/後｜1,485 / 1,485 mm
重量｜（MT）1,240 kg　　（AT）1,270 kg
エンジン｜1,998cc 直列4気筒 DOHC MINI ツインパワーターボ
ボア×ストローク｜78.0 × 83.6 mm
最高出力｜141 kW（192 ps）/ 5,000 rpm
最大トルク｜280 Nm/ 1,250-4,600 rpm
トランスミッション｜6段MT / 6段AT
駆動方式｜FF
タイヤ｜195/55 R16
0-100km/h加速｜（6MT）6.8 秒　　（6AT）6.7 秒
トランク容量｜211 リットル
燃費（JC08モード）｜（MT）15.8 km/ℓ　　　（AT）17.6 km/ℓ
価格｜（MT）318 万円　　　（AT）332 万円

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